2016年6月26日

獅子文六
『悦ちゃん』
 (ちくま文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

数々の作品が復刊して、あらためて人気となっている獅子文六。昭和のはじめから戦後まで活躍した作家で、また演劇の分野では多くの役者を育て、信頼される演出家でもありました。劇団「文学座」を立ち上げた創立者のひとりとしても知られています。獅子文六の復刊された作品の中から今回選んだのは「悦ちゃん」。昭和11年、獅子文六にとって初めての新聞小説で、連載中から人気となり映画化もされました。登場人物は碌さんという33歳の父親と10歳の娘である悦ちゃん。碌さんは妻に先立たれ、娘を連れて月命日にお墓参りにやってきました。しかし二人は決してメソメソしていません。しっかり者の悦ちゃんとのんきな碌さん。このあと物語はどうなっていくでしょう。

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