2016年4月17日
室生犀星
『蜜のあわれ』
 (講談社文芸文庫)

室生犀星というと、以前「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という言葉で知られる有名な詩「小景異情」を取り上げたことがあります。あの作品は29歳の時に発表したもの。どこかかたくなな詩人の心が表現されていました。それから41年たって70歳になった室生犀星が書いた「蜜のあわれ」。この小説を読むと若い頃とは違う自由な心を感じます。年を重ねるほど表現する世界が自由に広がっていった犀星。彼の精神を救ったのは、文学だったのではないでしょうか?「蜜のあわれ」発表から3年後の昭和37年3月、72歳で亡くなった室生犀星。絶筆となった詩「老いたるえびのうた」もあわせて味わってみたいものです。

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