2015年07月12日
林芙美子
『清貧の書』
 (ちくま日本文学)

「林芙美子記念館」からお送りした2週目の放送は、短編小説の中から代表作のひとつ「清貧の書」を取り上げました。昭和6年、27歳の時に発表した作品。主人公は4年の間に三人の男の妻となった女性です。三人目の夫との貧しいけれど、どこか愛おしい世界が描かれています。林芙美子というと「花のいのちはみじかくて」という詩が有名ですが、一般的には「苦しきことのみ多かりき」という結びが知られています。しかし同じ時代を生きた村岡花子さんのお宅には林芙美子の直筆のこんな詩が残っていました。「苦しきことのみ多かれど 風も吹くなり 雲も光るなり」。強いエネルギーで常に明るい未来を求めた林芙美子の心を感じます。

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