2015年05月10日
岡本かの子
ちくま日本文学037
 (筑摩書房)

「ジャングルの奥深くに生息する誰も発見できなかった新種の生き物のような文学」と小川洋子さんが感じるほど、他のどんな作家とも違う独自の世界を持つ岡本かの子の文学。小説「金魚撩乱」は、金魚造りに人生をかける復一と、崖の上に暮らすお嬢様・真佐子の物語ですが、その中の金魚の描写が特に素晴らしく、小川さんも絶句するほど。また「鮨」も独自の言語感覚で表現された小説です。この作品は、岡本かの子が亡くなるひと月前に発表されたもので、東京の下町と山の手の境にある「福ずし」を舞台に描かれています。読んでいくと母の深い愛情を感じる小説。「母の日」に読むのにもぴったりだと思います。

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