2015年03月22日
坂口安吾
『桜の森の満開の下』
 (岩波文庫)

坂口安吾というと3年前「堕落論」を取り上げたことがあります。これは1946年に発表された随筆。戦後に価値観を変えられてしまった日本人について書かれたものでした。今回の「桜の森の満開の下」は「堕落論」の1年後に発表された小説。二つの作品はまるで違うタイプですがどちらも過激。坂口安吾は丁度いいところに着地できない作家。特に「桜の森の満開の下」は狂気の果てまでいっています。「しかしそこには美を伴っている」と小川洋子さん。その美が幻であっても、まるで今、手にとっているかのような生々しさがあるのです。「過激からはじまって無に至るその幅の広さ」。それが坂口安吾という作家の魅力なのかもしれません。

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