2015年02月22日
浅田次郎
『鉄道員』
 (偕成社)

浅田次郎さんはエッセイの中で「鉄道員」について「命名にもストーリーにもまったく迷いがなかった」と書かれています。その言葉通り、短編小説の素晴らしさがすべて詰まったような作品です。「鉄道員」と書いて「ぽっぽや」と読む題名も絶妙。登場人物のセリフもいきいきしていて、短い物語の中にひとりの男の人生が凝縮されています。浅田次郎さんは「冬の北海道も知らず、鉄道に興味があった訳でもなかった。守備範囲にない球を偶然に捕まえてしまった」ともエッセイに書かれています。それなのにこれほどまでに完成された作品が書けたのは何故なのか?作家として選ばれた人だけが味わえる素晴らしい偶然があるのかもしれません。

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