2014年08月10日
山田太一
『異人たちとの夏』
 (新潮文庫)

小説「異人たちとの夏」でもうひとり大切な登場人物はケイという女性。主人公と同じマンションに暮らし、やがて二人の関係は深くなっていきます。ところが両親に会いにいくうち日に日にやつれていく主人公。ケイは「もう浅草には行かないで」と頼みます。しかしこのケイという人物もその後大きな展開を見せていきます。「異人たちとの夏」は脚本家・山田太一さんだからこそ書けたのではと思う部分も沢山ある小説。登場人物のリアリティや心に残るセリフ、場面のテンポ感などひきこまれてしまう作品です。死者とか生きている者とかは関係なく、現代で失われている無償の愛が描かれている「異人たちとの夏」。真夏のこの時期にぜひ読みたい1冊です。

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