2014年08月03日
村田喜代子
『鍋の中』
 (文春文庫)

「鍋の中」は小川洋子さんにとっても大切な作品。1987年に「鍋の中」が芥川賞を受賞した時、「日常の中にこそ書くべきものがある」と感じたとか。そしてその3年後に小川さんも「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞しています。文春文庫の「八つの小鍋」という村田喜代子さんの傑作短篇集にはこの他にも様々な短編小説が掲載されています。どれも少し奇妙で少し恐い。人間とはなんて不思議な生き物であるのかが描かれています。しかしその根底に流れているのは、人間を愛おしむ気持ち。だからこそ読み終わったあと、静かに心に残るのです。女性の芥川賞作家の方たちの中でも、村田喜代子ファンは多いとか。作家が心惹かれる作家でもあるのです。

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