2014年02月09日
宮尾登美子
『きのね』(上)
 (新潮文庫)

宮尾登美子さんが「きのね」を書きたいと思ったきっかけは60年ほど前の事。ある雑誌のグラビアで、当時、花形役者だった九代目市川海老蔵さん(のち昭和37年に十一代目市川團十郎を襲名)の家族写真を見たことでした。そこに写っていた奥様の姿は、とても梨園のスーパースターの妻とは思えなかったとか。粗末な絣の着物に前掛けをして、息子さん(昨年、亡くなられた十二代目市川團十郎さんの子供時代)の帽子を直す仕草が印象に残ったそうです。「このひとは一体、どんな女性なのだろう?」そう感じたことがきっかけで取材を重ね、新聞の連載がスタートしたのは30年以上あとのこと。宮尾登美子さんの強い想いが込められた作品です。

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