2012年07月01日
岩井志麻子
『ぼっけえ、きょうてえ』
 (角川ホラー文庫)

今回取り上げたのは、「吉備路文学館」にちなんで、吉備路出身の作家の中から岩井志麻子さんの代表作「ぼっけえ、きょうてえ」。1999年に日本ホラー小説大賞、そして山本周五郎賞も受賞している短編小説です。「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山の言葉で「とても怖い」という意味。明治時代、岡山の遊郭で働く女性が、寝つかれないお客にぽつりぽつりと身の上話をはじめるという内容で、その語りもすべて岡山弁です。題名どおり怖さを感じる部分もありますが、それだけではありません。自分の運命を切り開くことができない人達の悲しみが描かれていて、岩井志麻子さんの人間をみつめる優しさを感じる作品です。

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