2012年04月29日
林望
『イギリスはおいしい』
 (文春文庫)

「イギリスはおいしい」と言いながら、ページを開いた最初には、まずやっぱり「イギリスはまずい」というエピソードが登場します。リンボウ先生曰く「途方に暮れるくらいまずかった」そして「一口以上飲み込むことが出来なかった」という「クルジェットのトマト煮」。そのまずさは「グニャッ」という口触りによるものというリンボウ先生の解説に納得し、不思議と怖いもの味わいたさに、一度は食べてみたくなるのです。そんな中、小川洋子さんがこの本の中でおいしそうだと感じたのは「コックス」という林檎。品種を改良せず自然に近いもので、さすが伝統を守る国イギリスならではの果物です。「イギリスはおいしい」の中で、自分が食べてみたい味を探してみるのも、この本の楽しさのひとつです。

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