2011年09月11日
伊藤左千夫
『野菊の墓』
 (新潮文庫)

伊藤左千夫の処女作「野菊の墓」。文芸誌「ホトトギス」に掲載されると、まず絶賛したのが夏目漱石でした。「自然で、淡泊で、可哀想で、美しくて、野趣があって結構です。あんな小説なら、何百篇よんでもよろしい」。漱石は手紙にこう書いて伊藤左千夫に送っています。今回「野菊の墓」を読んで改めて感じたのは明治時代の文学の魅力。今までにも、田山花袋の「蒲団」、泉鏡花の「高野聖」、森鴎外の「舞姫」、樋口一葉の「たけくらべ」など取り上げてきましたが、バラエティに富んだ名作揃い。「人間を抑圧するものが多かったからこそ、今の時代にはない文学が生まれたのでは」と小川洋子さん。小説を通して明治という時代を感じてみるのも文学の楽しさのひとつです。

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