2010年07月04日
夏目漱石『坊っちゃん』 (新潮文庫ほか)

明治39年、夏目漱石が39歳の時に発表した「坊っちゃん」。この小説は、漱石が四国の松山で先生をしていた頃の体験がもとになっていると言われています。そのため登場人物やエピソードにリアリティがあり、実際にこんな出来事があったのでは、と思ってしまうほど。さらに歯切れのいい文章も魅力です。主人公の坊ちゃんが「嫌いなものは嫌い」とはっきり言う江戸っ子であるため、セリフも物語の展開もスピーディです。ここであらためて小説「こころ」も読み直してみたいもの。恋愛と友情の板挟みになりながら、結局、恋愛を選んだため苦しむ人の心を描いた作品。同じ文学遺産でありながら、「坊っちゃん」とはまるで違う魅力を持った小説です。

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