2009年08月09日
湯本香樹実『夏の庭』 (新潮文庫)

夏の庭の大きなテーマは「人の死と子供たち」。同じ視点で描かれた作品を、今までにも番組では取り上げてきました。キャサリン・マンスフィールドの「園遊会」。主人公の少女ローラが近所の家に住むある男の死に対面するという短編小説です。漫画家・西原理恵子さんの「いけちゃんとぼく」でも、主人公のぼくは、お父さんの死を体験することで、誰よりも早く大人になっていきます。「子供時代がどのように大人へと移行するのか。その時に重要なのが‘死’の経験である。」と小川洋子さん。そして誰の心にも、生まれてはじめて死を経験した記憶が残っているものです。そんなことを思い出させてくれるのが「夏の庭」。子供も大人も心の中の何かに出会う小説です。

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