2009年07月19日
谷崎潤一郎
『細 雪』<第一週>
(新潮文庫ほか)

「細雪」の主人公は、芦屋に住む「蒔岡」という一家。もともとは大阪船場に古い暖簾を誇る旧家で、その家の4人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様が、昭和10年代の関西を舞台に描かれています。新潮文庫で上・中・下と3冊にわたる長編小説。谷崎潤一郎がこれを書き始めたのは昭和17年。つまり太平洋戦争が勃発した翌年のことでした。しかし連載がはじまると、「時局にそわぬ」という軍部からの命令で掲載が中止に。それでも彼は「細雪」を書き続け、友人に配るなどしていたそうです。華やかな4人姉妹の物語は、実は戦争中の言論統制に反発しながら書き続けた大作。書き終えたのはなんと戦争が終わって3年たった昭和23年のことでした。

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