心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
田舎から上京し、東京の大学に入学した主人公の‘僕’。しかし1960年代後半から70年代にかけての大学は学園闘争の真っ只中。いつの間にか僕もその中に巻き込まれ、やがて年上の女子学生レイ子と一緒に暮らすようになっていきます。三田誠広さんの「僕って何」は32年前に芥川賞を受賞した小説ですが、時代を越えて伝わってくるのはどんな部分でしょうか。やはりタイトルにもなっている「僕って何」という問いかけ。昔も今も、こんなふうに自問自答した経験のある人は多いはず。「ここにいる僕とは何だろう」。主人公のつぶやきは、読者のつぶやきでもあり、それは32年たった今でも変わることはありません。
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