Vol.60 「雲州そろばん」 島根県
今回のタカラモノは、「そろばん」。
玉が串ざしになっている計算器具ですね。
カチカチと玉をはじく音が懐かしく感じられる人もいるのではないでしょうか。
全国的に知られる「そろばん」の産地が島根県奥出雲町にあります。
ここで作られるものは「雲州そろばん」といって、国の伝統的工芸品に指定されています。
奥出雲町で、そろばん職人としては全国で初めて「現代の名工」となった、
内田文雄(うちだ・ふみお)さんのお話です。
「そろばん作りには187の工程があるんですね。
それを一貫して、1から187まで全て出来るのは、もう、私ひとりしかいません。
180の工程があるということは、300以上の道具が必要ですね。
それを全部、自分で作らなければならないんですね。」
「雲州そろばん」は、加工から最後の仕上げまで、機械をほとんど使わず手作業で作られるため、
最大の魅力はその質の良さにあるといいます。
早い指の動きにも玉が安定して、よく動く上にピッタリと止まる。
つまり、“計算ミスの少ないそろばん”というわけです。
そんな「雲州そろばん」、日本はもちろん、海外でも高い評価を受けています。
「東南アジアはもとより、アメリカ、イギリス、ヨーロッパでもそろばんは使われて
授業をしています。
やっぱり、もともとは日本から発信したようなものですから、
もういっぺん、日本でも復活したら嬉しいなと思っているわけですけどね。」
そろばんを作って55年。そろばん作りに関わる187の工程をすべて一人で担っている
内田さんは、現在70歳。
日本で唯一の技術を次の世代へ残そうと、工房には、その技術を学ぶ後継者も現れてきている
そうです。
雲州そろばんは、「使ってもらってナンボ」、と笑いながら語る内田さん。
世界中のいろんな場所から、玉をはじくキレの良い音が100年後にも聞こえますように。