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みんなでリスクを回避しよう!外食・中食での食物アレルギー

みんなでリスクを回避しよう!外食・中食での食物アレルギー

食物アレルギーは好き嫌いではなく、命に関わることも。
食物アレルギー患者さんご本人やご家族など周りのかたはもちろん、外食・中食で働くかたも含めて、みんなで気を付けたいことがあります。
今回は、「みんなでリスクを回避しよう!外食・中食での食物アレルギー」というテーマで学びました。
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(杉浦)
「外食」は飲食店で提供される料理のことで、「中食」は真ん中の中と書くんだけど、今日のお話の中では、あらかじめ容器に入れずに販売されていて、店員さんに中身を確認してから購入することができる食品のことで、例えばショーケース内のケーキや、計り売りのお惣菜などのことを言いますね。今日はこの、外食・中食での食物アレルギーについて学んでいきたいと思います。卵や牛乳、小麦など、特定の食べ物を食べたり、触ったりするとアレルギー症状が出ることを「食物アレルギー」って言うけれど、佳菜子ちゃんの身近に食物アレルギーの患者さんはいる?

(村上)
います。乳製品アレルギーのかたがいて、だから、ピザとかも食べられないし、ケーキとかも食べられない。すごい大変だろうなって。食べられる身からしたら、「こんなに美味しいものを!」って思うけど、それを食べてしまったら身の危険があるから… すごい複雑な思いもありますけども、やっぱり卵や牛乳、小麦などは、ほんとにいろんな食べ物に使われているから、食物アレルギーがあると食べられるものが制限されて大変ですよね。

(杉浦)
うちの子もあったんだよ。フルーツのバラ科、さくらんぼとか。耳の中とか喉がかゆくなっちゃって。成長とともに治まったんだけどね。原因となる食べ物は人によって違って、複数の食べ物で症状が出る人もいるし、症状が出る量にも個人差があって、ほんのちょっとの量でも発症する人、少量であれば食べられる人など、いろいろ個人差あるよね。

(村上)
症状の出方もいろいろみたいですよね。

(杉浦)
そうなんだよね。アレルギーの原因となる食べ物を食べたり、触れたりすることで、咳が出たり、呼吸困難になったり、唇や瞼の腫れ、腹痛、嘔吐、かゆみ、赤み、じんましん、さらには、「アナフィラキシーショック」ね。

(村上)
「アナフィラキシーショック」って、突然、倒れちゃったりするやつですよね。

(杉浦)
そう。「意識がなくなる」、「血圧が低下する」といった重篤な症状が出ることを「アナフィラキシーショック」と言いまして、一刻も早く医療機関で治療しないと命に関わることもあるわけ。実際、過去には亡くなってしまったかたもいるんだよね。

(村上)
食物アレルギーの患者さんにとってアレルギーの原因になる食べ物を食べることは「毒」を食べていることと同じなんですよね。

(杉浦)
そうなんだよね。だから、患者さんや家族だけでなく、食べ物を提供する飲食店の責任者、そこで働く従業員のかた、すべてのかたが、食物アレルギーへの理解を深めて、みんなでリスクを回避することが大切なんだよね。今日はここがポイント!

(村上)
患者さんや家族が気を付けるだけじゃなくて、「みんなで」なんですね。

(杉浦)
そう!まずは、食物アレルギーの患者さんやそのご家族が、毎日の暮らしの中でどのように困っているのか、今日の講師に伺っていきましょう。消費者庁食品表示課 宇野 真麻さんです。

(村上)
宇野さん、食物アレルギーの患者さんやそのご家族のご苦労は、私も少しはイメージできてるとは思うんですけど、まだ分かっていない部分もありますね…。

(宇野)
はい。多くのかたは「食物アレルギー」という言葉や、患者さんがアレルギーの原因となる食べ物を食べることができないことはご存知だと思います。でも、それによって、どれだけ毎日の生活で苦労をしているかは、なかなかイメージができないのではないでしょうか。

(杉浦)
例えば、3歳のお子さんが卵アレルギーだったら、おやつにクッキーも、お誕生日にケーキもダメです。

(村上)
保育園でみんなが食べていても、一人だけ我慢しなければいけない、ってことですよね。

(宇野)
そうなんです。他にも、家庭の中だと、例えば、3歳のこどもが重度の牛乳アレルギーだったら家族全員、兄妹がいればその兄弟まで牛乳を避ける生活を強いられるケースがあるんです。冷蔵庫に牛乳やヨーグルト、チーズなどを入れておくと、アレルギーがあるこどもが誤って食べてしまう可能性があるからです。牛乳が「ほんの数滴」でも、触れたり、口に入れば、患者さんにとっては命に関わる重大なことになる場合があります。

(杉浦)
佳菜子ちゃん、それを知ってたらさ、冷蔵庫にアレルギーに関わる食べ物、入れられないよね。

(村上)
絶対に入れられないです!

(杉浦)
そして、こういう状況だと、当然、外食もままなりませんよね。

(宇野)
そうなんです。ネットでメニューを確認したり、店員さんに一つひとつ確認する手間がかかるので、気軽に外食ができないんです。そのため、中には、外食経験がほとんどないまま成長する子もいます。

(村上)
そうか… 家族での外食は、大切な経験ですよね。でも最近は、食物アレルギーについてメニューに書いてあるお店もありますよね。

(杉浦)
確かにそうなんだけど、実は、飲食店や量り売りのお惣菜店などの外食・中食では、食物アレルギーに関する情報提供は義務付けられてはいないんだって。

(宇野)
冷凍食品、スナック菓子、ジュースなど、容器に入れられた加工食品には、「特定原材料」の表示が義務付けられています。「特定原材料」というのは、重篤な症状が現れやすい8品目で、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、牛乳、落花生つまりピーナッツです。しかし、外食・中食の場合、これらの表示は義務付けられていません。

(村上)
義務付けられてないんですね。でも、それってどうしてですか?

(宇野)
例えば、工場で製造する「加工食品」だと特定の商品のみを製造するラインなどで管理ができますが、町の飲食店では同じキッチンで複数の料理を同時に手早く調理するため、他の料理の原材料の混入を防ぐことはかなり難しいと考えられるからです。他にも、飲食店は全国展開するチェーン店や家族経営のお店など規模が様々で、一律のルールを作ることは難しいと考えられるからです。

(杉浦)
今、外食・中食で食物アレルギーの情報提供をしてるお店は、みんな自主的にやってるんだよね。やっぱり、「美味しい料理を楽しんでもらいたい」っていう気持ちからじゃないかな。

(村上)
宇野さん、飲食店や量り売りのお惣菜屋さんなど、外食・中食の責任者や従業員の方々が食物アレルギーのリスクを回避するために気を付けたいことは、どんなことがありますか?

(宇野)
最も大切なことは、「最新で正確な情報を提供すること」だと考えています。最も避けたいのは曖昧な回答をすることで、「分からない時には「分からない」と回答すること」が大切です。

(村上)
「分からない」って、なんかいい加減な印象を与えてしまいそうな気がするんですけど。

(宇野)
「分からない」のであれば、はっきりと「分からない」と答えるほうが食物アレルギー患者さんやご家族にとっては親切な対応です。分からないのであれば「食べない」という判断がすぐにできるからです。でも、分からないのに確認しないまま「入っていないです」と答えてしまったり、「大丈夫だと思いますよ」など、曖昧に答えられてしまうと、誤った判断をする可能性も出てきてしまいます。

(杉浦)
そうなのよ、佳菜子ちゃん。さっき、外食経験が乏しいまま成長するこどもがいる話をしたじゃないですか。そうしたこどもが、中学生ぐらいになって友達同士で外食をすると、店員さんの曖昧な回答でも「大丈夫だな」と判断しちゃう可能性があると思わない?

(村上)
確かにそうですね。どんなことでも危険を察知する能力って、経験を積み重ねることで養われますもんね。外食経験が乏しい子のことなども想像すると、やっぱり、食物アレルギーに関しては「最新で正確な情報提供」が大切で、分からないときは「分からない」って回答することが最適なんですね。

(宇野)
そうなんです。また、ほんの僅か食べただけでも発症してしまうかたに向けては、アレルギーの原因となる食べ物をメニューに使っていなかったとしても、他の調理過程で意図せず混入してしまう可能性もあることを、きちんと伝えることが大切です。実際、同じ調理器具を使う、揚げ油を共有する、厨房で粉が舞い別メニューの原材料が意図せず混入するなど、外食や中食でこれらを完全に防ぐことは難しいものです。

(村上)
これまで、食物アレルギーに関する知識が不十分で事故が起こったこともあると思うんですけど、どうですか?

(杉浦)
そうそう。僕も今回、事前に予習して知ったんだけど、いろんなケースがあるんだよね。例えば「店員さんの知識不足」による事故事例だと、脱脂粉乳が牛乳から作られてると知らず、牛乳アレルギー患者さんに提供してしまったケース。別の例として「落花生」と「ピーナッツ」が同じものだと知らなかったために事故が発生したケースもあったんだって。

(村上)
なるほど。そういった場合もあるんですね。

(杉浦)
また、「作り直しをせず提供」したことで事故が生じたケースもあるそうですよ。

(村上)
「作り直しをせず提供」って、どういうことですか? 宇野さん。

(宇野)
卵アレルギーであることを伝えてオムライスの上の卵を除いてくださいと注文したのに、卵を乗せた通常のオムライスが運ばれてきたそうです。そこでもう一度、卵アレルギーだと伝えて卵を除いたものをお願いしたわけですが、その後、出されたチキンライスを食べたら、アナフィラキシーショックで救急搬送されました。このケースでは、料理を作り直さずに、オムライスの上の卵を剥がしただけだったため、卵が残っていて、事故が起こってしまったんです。

(村上)
ほんの少しでも卵が残っていたらダメだって、お店のかたは知らなかったんですね。

(宇野)
こうしたケースからも、リスク回避として、飲食店の責任者は食物アレルギーに関する正しい知識を学び、従業員と一緒に調理工程や接客方法などにルールを設けて、従業員全員がルール通りの対応を徹底することが重要です。

(杉浦)
「食物アレルギーに関する問合せを受けたら、必ず正しい知識を持った責任者が対応する」というルールは一案ですよね。

(宇野)
また、食物アレルギー患者さんやご家族も、お店のかたの食物アレルギーに関する知識量には個人差があることを知っておくことも大切だと思います。そのため、アレルギーの原因となる食べ物が入っているかどうか質問する時には、食物アレルギーだと伝えた上で、「食物アレルギーなんですが牛乳や脱脂粉乳を使っていますか?」、「食物アレルギーなんですが落花生・ピーナッツは入っていますか」と尋ねたり、作り直しをお願いする時には、「食物アレルギーなので卵を剥がすだけではなく作り直してください」とはっきり伝えるようにしてみてください。それが身を守ることにつながります。

(村上)
「卵を使わないでください」とだけ言うと、単に「卵が嫌いな人」と勘違いされて、「卵だけ取り除けばいいでしょ」と思われかねないですもんね。

(杉浦)
そうね。食物アレルギーは「食べ物の好き嫌い」ではない、命に関わることだからこそ、外食・中食の責任者や従業員、食物アレルギー患者さんやご家族、みんなでリスクを回避する行動をとることが大切なんだよね。

(宇野)
消費者庁では、外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供がより一層推進されることを目指し、外食・中食事業者の皆さんや、食物アレルギーの患者さん・ご家族のかたが、それぞれの視点から学べる動画を公開しています。「食品表示 情報提供 YouTube」で検索すると、消費者庁のYouTubeチャンネル内で、動画を紹介しているページをすぐに見付けることができます。是非、一度ご覧いただき、食物アレルギーに対する理解を深めましょう。

(村上)
今日の話を聞いて、私が注目したのは「人によって違う食物アレルギー、理解しよう」です。やっぱり、人によって反応も量も違うので、そこは理解していきたいですね。

(杉浦)
僕は、「食物アレルギーは、食べ物の好き嫌いではない。命に関わることです!」ということを理解して欲しいですね。


「 関連リンク 」
消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
消費者庁「【動画】外食・中食での食物アレルギーについて」
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