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誹謗中傷はダメ!厳しく処罰される場合があります!

誹謗中傷はダメ!厳しく処罰される場合があります!

SNSなどのコミュニケーションツールは便利ですが、人を傷つける誹謗中傷は、犯罪となる場合があります。
今回は、「誹謗中傷はダメ!厳しく処罰される場合があります!」というテーマで学びました。
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(杉浦)
佳菜子ちゃん。誹謗中傷、嫌だよね。

(村上)
嫌だ!傷つきますもん。

(杉浦)
そういう文章目にするだけでも、メンタルやられるしね。

(村上)
そうですよ。

(杉浦)
インターネットが普及してからネットの掲示板とかSNS、動画共有サイトなど、コミュニケーションツールが増えたから、便利になった反面、こうしたツールを使って名誉を傷つける行為が多発して、社会問題になってるよね。

(村上)
アスリートとか、競技に向き合っている人たちでも、やっぱり見てるかたたちから誹謗中傷されることがありますもん。だから、有名人に限らず、ネット上の誹謗中傷が原因で自殺してしまうかたとかもいますもんね。

(杉浦)
思っててもいいから、書かないで!って思うよね。思っても、周りの人と、それを話していればいいじゃん、世界に発信しないで!すごく思う。

(村上)
分かる!

(杉浦)
言葉による暴力は、殴ったり蹴ったりするのと同じか、それ以上に人を傷つける行為なんですけども、指先一つで、しかも匿名で簡単にできちゃうから、どんどん増えているような気がするよね。そこで、2022年7月7日から「侮辱罪」の法定刑、つまり、法律で定められた刑が引き上げられて厳しくなったんだって。ここからは、法務省刑事局参事官の猪股 正貴さんにお話を伺っていきます。

(村上)
猪股さん、「侮辱罪」の法定刑が引き上げられたということですが、もう少し詳しくお願いします。

(猪股)
はい。先ほど杉浦さんのお話にもあったように、インターネット上で人の名誉を傷つける行為が特に社会問題化していることをきっかけにして、誹謗中傷全般に対する非難や、「誹謗中傷を抑止すべき」という意識が高まっています。そのため、法律を改正して、侮辱罪の法定刑を引き上げて抑止するとともに、悪質な侮辱行為に対して厳正に対処できるようになりました。

(村上)
そうなんですね。では基本的なところから教えてもらいたいんですが、そもそも「侮辱罪」って、どういう罪なんでしょうか?

(猪股)
「侮辱罪」は、「事実を示さずに公然と人を侮辱する」ことによって成立する罪です。「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態のことです。例えば、インターネット上の掲示板やSNSのコメント欄などに「誰だれはバカだ」、「ブスだ」、「無能だ」、「悪徳業者だ」など、抽象的な悪口を書き込んだり、動画共有サイトで、そうした発言をする行為は「侮辱罪」で処罰される場合があります。

(村上)
「バカ」っていう言葉は日常会話の中で出ることもたまにあるじゃないですか、「いやいや、バカだなー」みたいな。

(猪股)
確かに、親しい間柄で冗談で言っている人もいますが、悪意を持って言ったり、ネット上に書き込みをすると、実際に処罰されるかどうかは事案により様々ですが、「侮辱罪」で処罰される場合があるということです。

(村上)
どれくらいの刑になるんでしょうか?

(猪股)
侮辱罪の法定刑は、法律の改正前は、拘留または科料という軽いものでした。

(村上)
「拘留」って初めて聞いたんですが、どういうものなんでしょうか?

(猪股)
「拘留」は、1日以上30日未満、刑事施設で身柄を拘束する刑罰のことです。

(村上)
これまでの法律では、ネット上で誹謗中傷をして、その相手を自殺させてしまい、侮辱罪が成立するとして裁判を受けた場合でも、30日未満、拘束されるか、科料というお金を支払うだけだったということなんですね。

(猪股)
はい。法律の改正後は、「拘留」または「科料」に加えて、「1年以下の懲役・禁錮」、若しくは「30万円以下の罰金」という刑罰の選択肢が増えました。

(村上)
「拘留」と「懲役・禁錮」って、どう違うんでしょうか?

(杉浦)
確かに、これ、ちょっと分かりづらいですよね。猪股さん、簡潔に説明すると、この三つにはどんな違いがありますか?

(猪股)
どれも刑事施設で身柄を拘束することですが、「拘留」は、1日以上30日未満の身体拘束で、「懲役・禁錮」は、より長期の身体拘束のことを言います。「懲役」と「禁錮」では、刑務作業、つまり、決められた作業を行うかどうかに違いがありまして、「懲役」の場合は刑務作業を行うこととなります。

(村上)
なるほど、そういう違いがあるんですね。となると、改正前は、侮辱罪に処せられても懲役刑や禁錮刑になることは無かったけれど、改正後の法律では、それらがあり得るってことですよね。侮辱罪はそれだけ重大な犯罪と考えられるようになったっていうことですよね。

(猪股)
はい。また、これは改正前も改正後も同じですが、侮辱罪で処罰されれば前科となります。

(村上)
考えなしに、気軽な気持ちでネット上で誹謗中傷すれば、一生消えない経歴を持つことになるってことですね。

(杉浦)
ちなみに、佳菜子ちゃん、「科料」と「罰金」の違いは分かった?

(村上)
んー。分かんないです。難しい。

(猪股)
これは金額の違いなどで言い方が変わるんです。「科料」は1,000円以上1万円未満で、「罰金」は1万円以上です。

(村上)
法律改正後も、「拘留」や「科料」になる場合もあるんですか?

(猪股)
はい。侮辱罪は法定刑が引き上げられた後も、個々の事案における悪質性に応じた適切な処罰ができるように、軽い刑罰である拘留や科料の選択肢も残されています。そのため、改正後も、悪質性の低い事案は、拘留や科料になる場合もあります。ですので、侮辱罪に当たる行為の全てが厳しく処罰されることになったというわけではありません。

(村上)
猪股さん、侮辱罪の法定刑が引き上げられて、他にどんな点が変わったんですか?

(猪股)
法律上の取扱いに変更があります。例えば、「教唆犯(きょうさはん)」や「幇助犯(ほうじょはん)」について、これまでは処罰することができませんでしたが、法定刑の引き上げに伴い、処罰が可能になりました。

(村上)
「教唆犯」と「幇助犯」というのはどういうものでしょう?

(猪股)
実際に犯罪を犯した者のことを「正犯」と呼ぶのに対して、「教唆犯」というのは、他人を唆して、犯罪の実行を決意させること。「幇助犯」は、他人の犯罪の手助けをして、その実現を容易にすることです。

(杉浦)
例えば、「あの子、ウザいよね。ネットに悪口を書けばおとなしくなるんじゃない。書いちゃいなよ」みたいな、実際に書き込みをする人を唆した場合が「教唆犯」。一方の「幇助犯」は、ネット上に悪口を書くことを知りながら、スマホを貸して書き込みをしやすくする場合とか。手助けだね。

(村上)
これって、どの程度の罰になるんですか?

(猪股)
侮辱罪の「教唆犯」の場合、実際に罪を犯した「正犯」と同じ範囲で処罰されるので、1年以下の懲役・禁錮、若しくは30万円以下の罰金が科される場合があります。一方の「幇助犯」は、正犯の法定刑の半分の範囲内で処罰されます。

(杉浦)
こうした変更があったことからも、侮辱罪が重大な犯罪と考えられるようになったことが分かりますね。

(村上)
他に、侮辱罪の法定刑が引き上げられて変更になったことってありますか?

(猪股)
法定刑の引上げに伴い、公訴時効の期間が、1年から3年に延びました。改正前は、インターネット上に侮辱罪に当たる書き込みがされた場合、書き込みから1年が経過してしまうと、検察官が、書き込んだ人を侮辱罪で起訴することができませんでした。

(村上)
1年って、あっという間ですよね。

(猪股)
はい。捜査機関への相談が遅れると、捜査機関がプロバイダーを特定したり、発信者を見つけ出したりしている間に書き込みから1年が過ぎてしまうこともあります。

(杉浦)
だから、これまで泣き寝入りしていたかたもいると思いますので、被害に遭っているかたにとっては心強い変更になりますよね。

(猪股)
また、逮捕に関しても取扱いに変更があります。これまで警察が逮捕状により侮辱罪の被疑者、つまり、侮辱罪にあたる行為をした疑いのある人を逮捕することができたのは、被疑者が住所不定である場合、または、正当な理由なく出頭に応じない場合のみでした。

(村上)
誰でも逮捕されるわけではなかったんですね。

(猪股)
はい。しかし現在は、その制限がなくなったので、定まった住所があっても、出頭に応じていても、逮捕の必要があると認められる場合には逮捕状により逮捕される可能性があります。

(杉浦)
侮辱罪に当たる行為をする人の中には、相手のことが「気に入らないからやった」、「日頃の言動がひどいから正義感にかられてやった」などと主張する人もいるようですが、安易に誹謗中傷すると、逮捕されて懲役刑や禁錮刑になる可能性があることを知ってほしいですね。

(猪股)
はい。また、例えば、侮辱罪にあたる他人の投稿を引用して、別の投稿をした場合であっても、侮辱罪で処罰される可能性があります。

(村上)
例え、再投稿であっても、その投稿が誰かを傷つけることにならないか、慎重に考えて行動しないといけませんね。

(猪股)
はい。ただし、今回の改正により、侮辱罪が成立する要件に変更はなく、侮辱罪として処罰される範囲が広がるというわけではありません。ですので、「表現の自由」が不当に侵害されるものではありません。詳しいことは「法務省」、「侮辱罪」で検索すると「侮辱罪の法定刑引上げ Q&A」のページがありますので、そちらをご確認ください。

(村上)
今日の話を聞いて特に注目したのは、「自分がされて嫌なことは 人にもしない!」。小さい頃に言われたんですけど、誹謗中傷をする人は忘れちゃっているのかな?と思うので。

(杉浦)
これ、子どもたちの教育に僕も言ってますね。やった方は忘れたりするからさ、された方は覚えてるから。僕が特に注目したのは「誹謗中傷は 自他ともに傷つくよ…だからダメ!!」。誹謗中傷をしたかたも、侮辱罪で捕まっちゃうから、元からやらないで!と。

(村上)
自分の人生に傷がつきますからね。


「 関連リンク 」
法務省「侮辱罪の法定刑の引き上げ」
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