アーカイブ
2024.09.15
その気持ちに飲み込まれないで!オーバードーズの危険性
10代の若者たちの薬物乱用が増加しています。
その背景には、家族や地域社会との交流が乏しいなど、ある共通項がありました。
今回は、「その気持ちに飲み込まれないで!オーバードーズの危険性」というテーマで学びました。
続きを読む
その背景には、家族や地域社会との交流が乏しいなど、ある共通項がありました。
今回は、「その気持ちに飲み込まれないで!オーバードーズの危険性」というテーマで学びました。
(杉浦)
佳菜子ちゃんも「薬物乱用」は知ってるよね。
(村上)
覚醒剤とか大麻など、違法な薬物を使用するっていうことですよね。乱用し続けることで、依存症になって、やめたくてもやめられない状態になっちゃう危険なことです。
(杉浦)
そう。「薬物乱用」と聞くと、まず最初に思い浮かべるのは、そうした違法薬物だよね。でも、最近は、薬局やドラッグストアなどに売っている市販薬を乱用する若者が急増しているんだって。
(村上)
誰でも買える薬なら乱用じゃない…のかな?とか思っちゃいますけどね。
(杉浦)
医薬品は決められた量や回数を守って飲むのが基本なんだけど、その量や回数を超えて飲むことを「乱用」って言うんだよね。特に、市販薬を一度にたくさん飲むことを「オーバードーズ」とか、略して「OD」って言うんだけど。
(村上)
「オーバードーズ」って、最近ニュースで聞いたり、見たりするけど、若者に急増しているんですよね。
(杉浦)
そうなんだよね。全国にある精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた10代の患者を対象に、原因となった薬物を調べたところ、覚醒剤、大麻などがある中で、10年前の2014年に最も多かったのが「危険ドラッグ」で48パーセント。「市販薬」は0(ゼロ)パーセント。ところが、2020年ではこの割合が逆転して、「危険ドラッグ」は0(ゼロ)パーセント。市販薬が56パーセント。多くない?
(村上)
危険ドラッグは0(ゼロ)なんですね!わずか6年の間に状況がこんなに変わるんですね。びっくりしてます。
(杉浦)
実はね、もっと驚く調査結果もあるんですよ。ここからは、今日の講師に伺っていきましょう。厚生労働省医薬局医薬安全対策課長の野村 由美子さんです。
(村上)
野村さん、オーバードーズをする若者が増えているということですが。
(野村)
実は、国立精神・神経医療研究センターが2021年に行った、「薬物使用と生活に関する全国高校生調査」によると、「過去1年間に市販薬を乱用した経験がある」と答えた生徒が、およそ60人に1人の割合でいることが分かりました。
(杉浦)
割合で言うと、2クラスに1人だよね。全国どの高校にいてもおかしくない状況だっていうことですか。
(村上)
なぜ、若者の間に急激に広がってしまっているんでしょうか?
(野村)
市販薬の乱用は若者に限らなければ、昔からあった問題です。一部の風邪薬や咳止め薬などの市販薬には、決められた量を超えて飲むと、「フワフワした感覚になる」などの覚醒作用があるからです。それが近年、若者の間で急激に広がっているのは、SNSなどで、乱用の対象となる薬の製品名や、「どれくらい飲めば、どのようになる」といった体験談なども拡散され、10代の若者がオーバードーズの情報に接しやすくなったことも要因の一つではないかと言われています。
(杉浦)
市販薬は大麻や覚醒剤のように違法な薬物じゃないし、手に入れるのも簡単だから、軽い気持ちでやってしまう若者も少なくないようですね。それに、「市販薬だから安全だ」と思っている若者もいるみたいなんですけども、野村さん、これは大きな間違いなんですよね。
(野村)
はい。「市販薬だから、少々多めに飲んでも大丈夫」と思うのは非常に危険です。例え市販薬であっても、たくさん飲んでしまうと、体に大きなダメージを与えてしまいます。
(杉浦)
実際、救急医療機関に搬送された「急性市販薬中毒患者」の健康被害には、「吐き気」、「嘔吐」、「腹痛」、「意識障害」、「イライラ」、「震え」、「頭痛」、「耳鳴り」、「不整脈」などの症状が確認されています。
(野村)
今、挙げていただいたのは急性の症状ですが、オーバードーズには成分によって依存性もあります。例えば、風邪薬のオーバードーズを繰り返すと、徐々に肝臓が壊れて、死に至る恐れもあります。実は、市販薬にはいろいろな成分が含まれているため、オーバードーズで中毒になると、作用が影響し合って、原因が分からなくなる場合もあり、治療がとても難しくなってしまうなどのリスクもあるんです。
(村上)
違法じゃないからといって「安全」でも「安心」でもないんですね。オーバードーズしている若者はこうした事実を知らないんですかね?
(野村)
もちろん、知らない若者もいますが、中には「知っているけれどやめられない」、「やらずにはいられない」そういう若者がいるのも事実です。
(村上)
依存性があって危険なことだと分かっていても、「やらずにはいられない」ってどういうことなんでしょうか?
(野村)
その要因の一つには「孤立や孤独」があるとも言われています。
(杉浦)
佳菜子ちゃん、ここにオーバードーズの経験のある高校生の特徴という調査結果があるので紹介しますけども、性別は、男性より女性なんだって。生活習慣は、「睡眠時間が短い」、「朝食を食べない頻度が高い」、「インターネットの使用時間が長い」。学校生活では、「学校が楽しくない」、「親しく遊べる友人や相談できる友人がいない」。家庭では、「親に相談できない」、「大人不在で過ごす時間が長い」、「家族との夕食頻度が少ない」、「コロナ禍による自粛生活に対するストレスが高い」などが挙げられているんだよね。
(野村)
これらのことから、オーバードーズの経験のある高校生は、「家族や地域社会との交流が客観的に見て著しく乏しい状態」という共通項があることが分かります。
(村上)
ということは、孤立している状況から抜け出したくてオーバードーズするっていうことなんですかね?
(杉浦)
そういう若者もいるということなんだよね。
(村上)
野村さん、若者はなぜ、危険と分かっていながら、オーバードーズをしてしまうのでしょうか?
(野村)
先ほども少しご説明しましたが、一部の風邪薬や咳止め薬、解熱鎮痛薬は、決められた量を超えて摂取すると覚醒作用が生じて、「気持ちがよくなる」、「パフォーマンスが上がる」、「気分が変わる」といった精神状態をもたらすことがあります。オーバードーズをする若者は、そうした効果を求めて乱用を繰り返すのですが、その背景には、「ひどい精神状態から解放されたい」、「死にたい」、「どれほど絶望的だったかを示したい」、「誰かに本当に愛されているのかを知りたい」などの理由もあるようです。
(杉浦)
ここで、ある少女の事例を紹介したいと思います。オーバードーズをするようになったのは16歳で家出をした時、友人から「イヤなことを忘れられる」、「ぐっすり眠れる」と教えられたのがきっかけだったそうです。
(村上)
「イヤなこと」って、どんなことだったんでしょうか?
(杉浦)
彼女の場合、小学校低学年の時に両親が離婚。それをきっかけにして母親が昼夜を問わず仕事をするようになり、この頃から身体的虐待を受けるようになったそうです。顔に痣を作り登校する時には「遊んでいて壁にぶつかったと言え」と母親に言われたため、虐待を疑われたことはなく、中学に入ると、虐待はさらにエスカレートしていったそうです。
(村上)
そうした辛い状態から抜け出したくて、オーバードーズをしてしまったんですね。
(杉浦)
他にも、母親との関係が悪く、精神安定剤代わりにオーバードーズを繰り返していた16歳の女の子の事例もあります。本当は寂しがり屋で、母親のことも好きで、仲良くしたいのにうまくいかず、何も考えられない状態を作らないと眠れなかったそうです。
(村上)
精神的に追い詰められて「やらずにはいられなかった」、もっと言うと、「生きるためにオーバードーズをしていた」ということなんですかね…
(杉浦)
彼女の場合、「薬に頼りたい気持ち」と「やめたい気持ち」があって、悩んでいたそうなんですけども、医療機関に掛かって、自助グループにも通って、状況に変化が表れたそうです。
(村上)
それは良かったです!自助グループというのは、同じ問題を抱える人同士が自発的に集まって、問題を分かち合い、理解し、支え合うグループのことですよね。以前「ギャンブル依存症」を取り上げた時に話題にありました。
(野村)
はい。周りに信頼できる大人や友人がいれば、つらい気持ちや困っていることを相談してみるのもいいことだと思います。でも身近な人だからこそ、話しづらいこともありますよね。そういう時は、まず、専門家に話を聞いてもらいましょう。「相談しても問題が解決するわけじゃない」、「どうせオーバードーズをやめろと言われるだけでしょ」と思うかもしれませんが、相談窓口の役割はオーバードーズをやめさせることではありません。「話を聞き、助けになること」です。
(村上)
「親からの虐待」や「母親との不仲」などは、問題が深刻で、一人で何とかできるものではないですよね。
(野村)
誰かに相談するのは勇気がいるかもしれませんが、ただ誰かと何でもないお話をするだけで、心が少し晴れることもあります。
(村上)
では、もし家族や友達がオーバードーズをしていることに気付いたら、周りの人はどうしたらいいんでしょうか?
(野村)
「どうしたの?」、「なにか悩んでいる?」、「よかったら話を聞かせて」と声を掛け、話を聞いてあげてください。そして、何をしてあげたらいいのか分からなかったら、やはり、相談窓口に連絡をしてみてください。相談はオーバードーズしている本人でなくてもできます。オーバードーズを繰り返す我が子に悩んでいる、ご家族からの相談にも対応しています。ご家族が相談支援につながることが、問題解決の第一歩になります。
(杉浦)
相談窓口がいろいろあるんですよね。「つらい気持ちやオーバードーズをやめたくてもやめられないこと」なら、精神保健福祉センター。「つらい、消えたい、死んでしまいたい」など、思い悩んでいたら、電話やSNSで話を聞いてくれる「まもろうよ こころ」。孤独・孤立で悩まれているかたは孤独・孤立対策ウェブサイト「あなたはひとりじゃない」などです。これらの一覧は厚生労働省のホームページ内にあるオーバードーズのページに載っています。「オーバードーズ」で検索するとすぐに見つけることができます。
(野村)
オーバードーズをする若者が急増しています。その対策として薬局やドラッグストアでは、若者が一部の医薬品を購入する際、氏名や年齢を確認したり、数量を制限するなどの措置を講じていますが、それだけでは、オーバードーズという危険な行為を防ぐことはできません。どうか、周りにオーバードーズをしている人がいたら声を掛け、話を聞いてあげてください。必要な場合には専門の窓口につないでください。そして、今、生きづらい思いをしているかたは、その気持ちに飲み込まれず、どうか信頼できる人に頼ってください。身近な人に話すのが難しければ、専門の相談窓口に相談してください。あなたが話してくれるのを、待っています。
(村上)
私が今日の話の中で特に注目したのは「1人で抱え込まず相談してね。」相談することは難しいかもしれないけど、できれば一人で抱え込まず、たくさんの人がサポートしてくれると思うので、思い切って相談してほしいなと思います。
(杉浦)
僕は、相談できない人もいるかもしれないから、「オーバードーズ 相談窓口いろいろあります。」と。その状況によって相談するところも変わってくると思うので、そういうところもあるよ!というのを知ってほしいですね。
「 関連リンク 」
・厚生労働省「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」
・厚生労働省「まもろうよ こころ」
・内閣府 孤独・孤立対策推進室「あなたはひとりじゃない」
佳菜子ちゃんも「薬物乱用」は知ってるよね。
(村上)
覚醒剤とか大麻など、違法な薬物を使用するっていうことですよね。乱用し続けることで、依存症になって、やめたくてもやめられない状態になっちゃう危険なことです。
(杉浦)
そう。「薬物乱用」と聞くと、まず最初に思い浮かべるのは、そうした違法薬物だよね。でも、最近は、薬局やドラッグストアなどに売っている市販薬を乱用する若者が急増しているんだって。
(村上)
誰でも買える薬なら乱用じゃない…のかな?とか思っちゃいますけどね。
(杉浦)
医薬品は決められた量や回数を守って飲むのが基本なんだけど、その量や回数を超えて飲むことを「乱用」って言うんだよね。特に、市販薬を一度にたくさん飲むことを「オーバードーズ」とか、略して「OD」って言うんだけど。
(村上)
「オーバードーズ」って、最近ニュースで聞いたり、見たりするけど、若者に急増しているんですよね。
(杉浦)
そうなんだよね。全国にある精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた10代の患者を対象に、原因となった薬物を調べたところ、覚醒剤、大麻などがある中で、10年前の2014年に最も多かったのが「危険ドラッグ」で48パーセント。「市販薬」は0(ゼロ)パーセント。ところが、2020年ではこの割合が逆転して、「危険ドラッグ」は0(ゼロ)パーセント。市販薬が56パーセント。多くない?
(村上)
危険ドラッグは0(ゼロ)なんですね!わずか6年の間に状況がこんなに変わるんですね。びっくりしてます。
(杉浦)
実はね、もっと驚く調査結果もあるんですよ。ここからは、今日の講師に伺っていきましょう。厚生労働省医薬局医薬安全対策課長の野村 由美子さんです。
(村上)
野村さん、オーバードーズをする若者が増えているということですが。
(野村)
実は、国立精神・神経医療研究センターが2021年に行った、「薬物使用と生活に関する全国高校生調査」によると、「過去1年間に市販薬を乱用した経験がある」と答えた生徒が、およそ60人に1人の割合でいることが分かりました。
(杉浦)
割合で言うと、2クラスに1人だよね。全国どの高校にいてもおかしくない状況だっていうことですか。
(村上)
なぜ、若者の間に急激に広がってしまっているんでしょうか?
(野村)
市販薬の乱用は若者に限らなければ、昔からあった問題です。一部の風邪薬や咳止め薬などの市販薬には、決められた量を超えて飲むと、「フワフワした感覚になる」などの覚醒作用があるからです。それが近年、若者の間で急激に広がっているのは、SNSなどで、乱用の対象となる薬の製品名や、「どれくらい飲めば、どのようになる」といった体験談なども拡散され、10代の若者がオーバードーズの情報に接しやすくなったことも要因の一つではないかと言われています。
(杉浦)
市販薬は大麻や覚醒剤のように違法な薬物じゃないし、手に入れるのも簡単だから、軽い気持ちでやってしまう若者も少なくないようですね。それに、「市販薬だから安全だ」と思っている若者もいるみたいなんですけども、野村さん、これは大きな間違いなんですよね。
(野村)
はい。「市販薬だから、少々多めに飲んでも大丈夫」と思うのは非常に危険です。例え市販薬であっても、たくさん飲んでしまうと、体に大きなダメージを与えてしまいます。
(杉浦)
実際、救急医療機関に搬送された「急性市販薬中毒患者」の健康被害には、「吐き気」、「嘔吐」、「腹痛」、「意識障害」、「イライラ」、「震え」、「頭痛」、「耳鳴り」、「不整脈」などの症状が確認されています。
(野村)
今、挙げていただいたのは急性の症状ですが、オーバードーズには成分によって依存性もあります。例えば、風邪薬のオーバードーズを繰り返すと、徐々に肝臓が壊れて、死に至る恐れもあります。実は、市販薬にはいろいろな成分が含まれているため、オーバードーズで中毒になると、作用が影響し合って、原因が分からなくなる場合もあり、治療がとても難しくなってしまうなどのリスクもあるんです。
(村上)
違法じゃないからといって「安全」でも「安心」でもないんですね。オーバードーズしている若者はこうした事実を知らないんですかね?
(野村)
もちろん、知らない若者もいますが、中には「知っているけれどやめられない」、「やらずにはいられない」そういう若者がいるのも事実です。
(村上)
依存性があって危険なことだと分かっていても、「やらずにはいられない」ってどういうことなんでしょうか?
(野村)
その要因の一つには「孤立や孤独」があるとも言われています。
(杉浦)
佳菜子ちゃん、ここにオーバードーズの経験のある高校生の特徴という調査結果があるので紹介しますけども、性別は、男性より女性なんだって。生活習慣は、「睡眠時間が短い」、「朝食を食べない頻度が高い」、「インターネットの使用時間が長い」。学校生活では、「学校が楽しくない」、「親しく遊べる友人や相談できる友人がいない」。家庭では、「親に相談できない」、「大人不在で過ごす時間が長い」、「家族との夕食頻度が少ない」、「コロナ禍による自粛生活に対するストレスが高い」などが挙げられているんだよね。
(野村)
これらのことから、オーバードーズの経験のある高校生は、「家族や地域社会との交流が客観的に見て著しく乏しい状態」という共通項があることが分かります。
(村上)
ということは、孤立している状況から抜け出したくてオーバードーズするっていうことなんですかね?
(杉浦)
そういう若者もいるということなんだよね。
(村上)
野村さん、若者はなぜ、危険と分かっていながら、オーバードーズをしてしまうのでしょうか?
(野村)
先ほども少しご説明しましたが、一部の風邪薬や咳止め薬、解熱鎮痛薬は、決められた量を超えて摂取すると覚醒作用が生じて、「気持ちがよくなる」、「パフォーマンスが上がる」、「気分が変わる」といった精神状態をもたらすことがあります。オーバードーズをする若者は、そうした効果を求めて乱用を繰り返すのですが、その背景には、「ひどい精神状態から解放されたい」、「死にたい」、「どれほど絶望的だったかを示したい」、「誰かに本当に愛されているのかを知りたい」などの理由もあるようです。
(杉浦)
ここで、ある少女の事例を紹介したいと思います。オーバードーズをするようになったのは16歳で家出をした時、友人から「イヤなことを忘れられる」、「ぐっすり眠れる」と教えられたのがきっかけだったそうです。
(村上)
「イヤなこと」って、どんなことだったんでしょうか?
(杉浦)
彼女の場合、小学校低学年の時に両親が離婚。それをきっかけにして母親が昼夜を問わず仕事をするようになり、この頃から身体的虐待を受けるようになったそうです。顔に痣を作り登校する時には「遊んでいて壁にぶつかったと言え」と母親に言われたため、虐待を疑われたことはなく、中学に入ると、虐待はさらにエスカレートしていったそうです。
(村上)
そうした辛い状態から抜け出したくて、オーバードーズをしてしまったんですね。
(杉浦)
他にも、母親との関係が悪く、精神安定剤代わりにオーバードーズを繰り返していた16歳の女の子の事例もあります。本当は寂しがり屋で、母親のことも好きで、仲良くしたいのにうまくいかず、何も考えられない状態を作らないと眠れなかったそうです。
(村上)
精神的に追い詰められて「やらずにはいられなかった」、もっと言うと、「生きるためにオーバードーズをしていた」ということなんですかね…
(杉浦)
彼女の場合、「薬に頼りたい気持ち」と「やめたい気持ち」があって、悩んでいたそうなんですけども、医療機関に掛かって、自助グループにも通って、状況に変化が表れたそうです。
(村上)
それは良かったです!自助グループというのは、同じ問題を抱える人同士が自発的に集まって、問題を分かち合い、理解し、支え合うグループのことですよね。以前「ギャンブル依存症」を取り上げた時に話題にありました。
(野村)
はい。周りに信頼できる大人や友人がいれば、つらい気持ちや困っていることを相談してみるのもいいことだと思います。でも身近な人だからこそ、話しづらいこともありますよね。そういう時は、まず、専門家に話を聞いてもらいましょう。「相談しても問題が解決するわけじゃない」、「どうせオーバードーズをやめろと言われるだけでしょ」と思うかもしれませんが、相談窓口の役割はオーバードーズをやめさせることではありません。「話を聞き、助けになること」です。
(村上)
「親からの虐待」や「母親との不仲」などは、問題が深刻で、一人で何とかできるものではないですよね。
(野村)
誰かに相談するのは勇気がいるかもしれませんが、ただ誰かと何でもないお話をするだけで、心が少し晴れることもあります。
(村上)
では、もし家族や友達がオーバードーズをしていることに気付いたら、周りの人はどうしたらいいんでしょうか?
(野村)
「どうしたの?」、「なにか悩んでいる?」、「よかったら話を聞かせて」と声を掛け、話を聞いてあげてください。そして、何をしてあげたらいいのか分からなかったら、やはり、相談窓口に連絡をしてみてください。相談はオーバードーズしている本人でなくてもできます。オーバードーズを繰り返す我が子に悩んでいる、ご家族からの相談にも対応しています。ご家族が相談支援につながることが、問題解決の第一歩になります。
(杉浦)
相談窓口がいろいろあるんですよね。「つらい気持ちやオーバードーズをやめたくてもやめられないこと」なら、精神保健福祉センター。「つらい、消えたい、死んでしまいたい」など、思い悩んでいたら、電話やSNSで話を聞いてくれる「まもろうよ こころ」。孤独・孤立で悩まれているかたは孤独・孤立対策ウェブサイト「あなたはひとりじゃない」などです。これらの一覧は厚生労働省のホームページ内にあるオーバードーズのページに載っています。「オーバードーズ」で検索するとすぐに見つけることができます。
(野村)
オーバードーズをする若者が急増しています。その対策として薬局やドラッグストアでは、若者が一部の医薬品を購入する際、氏名や年齢を確認したり、数量を制限するなどの措置を講じていますが、それだけでは、オーバードーズという危険な行為を防ぐことはできません。どうか、周りにオーバードーズをしている人がいたら声を掛け、話を聞いてあげてください。必要な場合には専門の窓口につないでください。そして、今、生きづらい思いをしているかたは、その気持ちに飲み込まれず、どうか信頼できる人に頼ってください。身近な人に話すのが難しければ、専門の相談窓口に相談してください。あなたが話してくれるのを、待っています。
(村上)
私が今日の話の中で特に注目したのは「1人で抱え込まず相談してね。」相談することは難しいかもしれないけど、できれば一人で抱え込まず、たくさんの人がサポートしてくれると思うので、思い切って相談してほしいなと思います。
(杉浦)
僕は、相談できない人もいるかもしれないから、「オーバードーズ 相談窓口いろいろあります。」と。その状況によって相談するところも変わってくると思うので、そういうところもあるよ!というのを知ってほしいですね。
「 関連リンク 」
・厚生労働省「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について」
・厚生労働省「まもろうよ こころ」
・内閣府 孤独・孤立対策推進室「あなたはひとりじゃない」