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大切な未来を守る 子宮頸がん予防ワクチン

大切な未来を守る 子宮頸がん予防ワクチン

将来のためにも、そして自分や家族のためにも、今から予防できることがあります。
今回は、「大切な未来を守る 子宮頸がん予防ワクチン」というテーマで学びました。
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(杉浦)
さて、今日学んでいくのは、特に、女の子やその保護者に知ってもらいたい大切なことです。「がん」と言うと、今は生涯のうち二人に一人はなる病気と言われてますけれども。

(村上)
日本人に多いのは、大腸がん、肺がん、胃がんだって聞いたことがあります。うちも、おじいちゃんが胃がんになったという話を聞いてます。

(杉浦)
そうか。今日はね、「がん」の中でも、女性がかかる「子宮頸がん」の予防について学んでいきたいと思います。子宮頸がんは、比較的、若い女性に発症しやすいんだって。

(村上)
そうなんですか。「がん」というと、年配のかたに多い印象ですけど。

(杉浦)
日本では、毎年、およそ1万1,000人の女性が子宮頸がんにかかっていて、毎年およそ2,900人の女性が亡くなっているんだって。これをもう少し身近なシーンに置き換えると、女子校で、1クラスおよそ35人だとすると、2クラスに1人くらいの割合で子宮頸がんにかかっていて、10クラスに1人くらいが子宮頸がんで亡くなっている計算になるんだよね。

(村上)
想像していたよりも多いし、身近な「がん」なんだなと改めて感じます。

(杉浦)
他の「がん」とは違って、患者さんは20歳代の若いうちから増え始めて、30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう女性が、年間およそ1,000人いるんだって。

(村上)
子宮を失うということは、妊娠できなくなってしまうということですよね。これは未来の人生設計に大きく関わることですね。

(杉浦)
そうなんです。だから、若いうちから予防することが大切なんです!ここからは、今日の講師に教えていただきましょう!厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部予防接種課の早田 英二郎さんです。早田さんは、産婦人科医でもあるそうですね。

(村上)
早田さん、子宮頸がんは若いうちから予防することが大切ということですが、どういったことをすればいいんですか?

(早田)
はい。子宮頸がんを予防するためにできることは、「HPVワクチンの接種」と、「子宮頸がんの検診」です。この二つを行うことで、子宮頸がんになるリスクを減らしたり、「がん」の早期発見・早期治療につなげることができます。

(村上)
HPVワクチンって、あまり聞き馴染みがないんですけれども、そもそも「がん」ってワクチンで予防できるものなんですか?

(杉浦)
いろいろ疑問が出てきたよね。それでは早田さん、まずは子宮頸がんとはどういうがんなのか、基本的なところから教えてください。

(早田)
はい。子宮頸がんは子宮の出口に近い部分にできるがんで、「ヒトパピローマウイルス」、略して「HPV」の感染がきっかけで起こることが多い「がん」と考えられています。このウイルスは主に性交渉により感染し、女性の多くが「一生に一度は感染する」と言われています。しかし、ほとんどの人は自然にウイルスが消えていきます。一部のかたが、ウイルスが消えず「がん」になってしまうことがあるんです。

(村上)
誰もが感染するのに、「がん」になる人とならない人がいるんですね。

(早田)
はい。ですから、HPVへの「感染を防ぐこと」、これが「がん」にならないための一つの手段になります。そして、その感染を防ぐ効果を期待できるのが「HPVワクチンの接種」なんです。

(村上)
なるほど!患者さんは、20歳代から増え始めるんですよね。そうすると、何歳頃にワクチンを接種すればいいんですか?

(杉浦)
佳菜子ちゃん、それ、めちゃくちゃいい質問ですよね、早田さん!

(早田)
はい。日本では小学6年から高校1年相当の女の子を対象に定期接種として公費でHPVワクチンの接種を提供しております。

(杉浦)
ちなみに、公費の補助が無い場合の接種費用は1回の接種につき3万円くらい。これは、ワクチンの種類や回数によって違うんだって。

(村上)
でも、これ、結構大きな負担額だと思うんですけど。ワクチンの種類によって回数も違ってくるから、負担額も変わってくるということですよね。

(早田)
はい。公費で受けられるHPVワクチンには、3種類ありまして、一定の間隔をあけて、同じ種類のワクチンを合計2回又は3回接種することになります。ワクチンの種類や年齢によって、接種のタイミングや回数が異なります。どのワクチンを接種するかは、接種する医療機関にご相談ください。

(村上)
ワクチンの種類とか回数の話をしていると、コロナの時のワクチン接種のことを思い出しませんか?あの時、ワクチンを接種すると副反応があったというかたがかなりいたので、副反応について気になるんですけれども。早田さん、HPVワクチンを接種すると副反応はありますか?

(早田)
はい。HPVワクチンは、新型コロナワクチンと同じく、筋肉注射という方法で接種をします。副反応については、接種を受けた部分の痛みや腫れたりとか、赤みなどの症状が起こるとか、まれではありますが重い症状が起こることもあります。

(杉浦)
重い症状には、例えばどんなものがありますか。

(早田)
呼吸困難やじんましんなどといったアレルギー症状や、頭痛や吐き気、手足の力が入りにくいといった神経系の症状があります。

(村上)
コロナのワクチンの時もいろんな症状が確認されていましたよね。やっぱり不安になるかたもいると思うんですけど、重い症状はどれくらいの確率で出ているんですか?

(早田)
ワクチンが原因かどうか分からないものも含めて、接種後の重い症状として報告があったのは、ワクチンを受けたかた、1万人あたり、およそ3人から5人と言われています。もし、接種した際に気になる症状が現れたら、医師にご相談いただければと思います。

(杉浦)
ワクチンを接種するかどうかの判断は、ワクチンを接種することで、がんを予防する可能性が高まるというメリットと、副反応のリスク、これを比較して、自分で判断する必要があるということですね。

(早田)
はい。ただし、小学6年から高校1年相当の女の子の場合は、自分で判断すると同時に、接種する時には保護者のかたの同意が必要です。

(村上)
みんなどういう基準で判断しているんですかね。

(杉浦)
実際、接種したかたに接種の理由を聞きますと、「HPVワクチンは有効だと思っているから」、「子宮頸がんは危険だと思ったから」と答えたかたが多く、それに次いで、「母親にHPVワクチンの接種を勧められたから」、「HPVワクチンを公費で接種できたから」という理由が多く挙がっているそうですね。

(村上)
では、公費でHPVワクチンを接種したいと思ったら、どうしたらいいんですか?

(早田)
公費で接種が受けられる小学6年から高校1年相当の女の子がいるご家庭には、各自治体からご案内が来ておりますので、まずはそちらをご確認ください。

(杉浦)
ここで注意が必要なのは、現在、「高校1年相当」の女の子なんですよね。

(早田)
はい。HPVワクチンは年齢などによって2回又は3回接種する必要があります。また、1回目の接種を受けてから全ての接種が完了するまでに、およそ6か月間かかります。現在、高校1年相当の女の子が合計3回の接種を全て公費で受けていただくためには、9月末までに1回目の接種を済ませていただく必要があります。

(杉浦)
つまり、2回目、3回目の接種の時に高校2年生になっていたら、費用を自己負担しなければならないということです。

(村上)
え、それじゃあ、どうするかの判断は急がないといけないですね。本人はもちろん保護者のかたも、話し合って早く判断しないといけませんね。

(杉浦)
それで、期限が迫っているのは高校1年相当の女の子だけじゃないんです。実は、1997年度から2007年度生まれの女性、つまり、今年度中に17歳から27歳になる女性も、今年度中であれば、公費でHPVワクチンを接種することができるんだって!

(村上)
え?それは、どういうことですか、早田さん。

(早田)
HPVワクチンの接種を個別にお勧めする取組は2013年4月からスタートしておりました。しかし、およそ9年間、個別にお勧めする取組を差し控えられていた時期があります。その期間に定期接種の対象だったかたの中には、ワクチン接種の機会を逃してしまったかたがいらっしゃるからです。

(村上)
でも、なんで取組が控えられていたんですか?

(早田)
接種後に報告された症状について、十分に情報の提供ができない状況があったからです。しかし、2021年11月の専門家の会議で、ワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが改めて確認されました。また、ワクチン接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回るということが認められたことで、2022年4月から個別に接種をお勧めする取組を再開しました。そのため、定期接種の対象だったにも関わらず、ワクチン接種の機会を逃した女性にも、公費による接種、いわゆる「キャッチアップ接種」を実施しているんです。

(杉浦)
その「キャッチアップ接種」の締切りが、今年度、2025年の3月末までなんですけども、接種が完了するまでには6か月かかるから、今年の9月末までに1回目の接種を受けないと、公費の補助で接種を完了することができなくなっちゃうというわけです。

(村上)
じゃぁ、今年度中に17歳から27歳になる女性も早めに判断したほうがいいということですね。ちなみに、HPVワクチンって、一度3回の接種を完了したら、その後は接種しなくてもいいんですか?

(早田)
感染予防効果は、長期間維持されることが、これまでの研究で分かっています。また、子宮頸がんを予防するために大切なことは、HPVワクチンの接種だけではありません。HPVワクチンを接種していてもしていなくても、20歳になったら、子宮頸がんを早期発見するために子宮頸がん検診を定期的に受けること、これも非常に大切なことです。

(村上)
がん検診を受けて早期に発見できれば、早く治療を始められますから検診って大切ですよね。私も定期検診に行ってます!

(早田)
はい。子宮頸がんは、早期に発見して治療を受ければ、多くの場合、命を落とさずに治すことができる病気です。子宮頸がんやHPVワクチンについて、より詳しく知りたいかたは、お住まいの自治体からのご案内や、厚生労働省のホームページをご覧ください。ホームページには、「厚労省 HPV」と検索していただきますとアクセスできます。何よりもまずは、子宮頸がん、そしてHPVワクチンについて理解を深めて、親子や友達同士で話をしてみたり、かかりつけ医などにご相談いただければと思います。

(村上)
今日の話を聞いて特に注目したのは、やっぱり私も行っていますけど、「定期的に検診に行きましょう!」です。

(杉浦)
そうだよね。僕は、「子宮頸がんを若いうちから予防して、HPVワクチンもありますよ!」これを知っておくことが大事かなと思いました。


「 関連リンク 」
厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がんとHPVワクチン~」
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