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その行為は禁止です!チケット不正転売禁止法

その行為は禁止です!チケット不正転売禁止法

なかなか手に入らないライブや舞台などのチケットが高額で売られていたら、あなたはどうしますか?
知らないでは済まされない、チケットに関する法律とは?
是非、これから行く予定のチケットがあるかたは、お手元にご用意を!
今回は、「その行為は禁止です! チケット不正転売禁止法」というテーマで学びました。
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(杉浦)
佳菜子ちゃんは、好きなアーティストのライブや舞台に行ったりする?

(村上)
あります!舞台やミュージカルは、表現の勉強のために小さい頃からよく行ってました。最近だと、アーティストの「ちゃんみな」さんのライブに行きました。太陽さんは?

(杉浦)
僕も、友達のライブや役者仲間の舞台を観に行くことが多いかな。やっぱり、生で観るよさはありますよね。さぁ、今日学んでいくのは、そんなエンタメを観るために購入するチケットに関することです。佳菜子ちゃんは、「ダフ屋」とか「転売ヤー(転売屋)」って言葉、聞いたことある?

(村上)
「転売ヤー」は聞いたことあるけど、「ダフ屋」は知らないなぁ。

(杉浦)
「ダフ屋」は、人気のライブや舞台、スポーツイベントのチケットを、転売する目的で購入して、会場の周りで「チケットあるよ。」と声をかけてチケットを元の販売価格よりも高額で転売する人のこと。「転売ヤー」は、そのオンライン版で、オークションサイトなどを利用して高額で販売する業者や個人のことです。こうしたダフ屋や転売ヤーがいるので、行きたいライブのチケットが全然取れなかったり、定価1万円のチケットが5倍10倍で売られちゃったりしてるから、実際に。アイススケートのショーでも、そういう話聞いたことない?

(村上)
「転売ヤー」という言葉を聞いたことがあるから、もしかしたら、あったのかもしれないですけど、実際にこういう事例があった!という事は、私は知らないですね。あと、「ダフ屋」を知らないのは、私が出る側で準備しているから、ショーの直前に転売している姿を観る機会がなかったのかもしれないです。ちなみに、チケットを転売するから「転売する人」を意味する「転売ヤー」って言葉になるのはわかるんですけど、ダフ屋の「ダフ」ってどういう意味なんですか?

(杉浦)
それ、僕も気になって調べたんですよ。いろんな説があるみたいだけど、有力なのはチケットを意味する「札(ふだ)」を逆さにすると「ダフ」で、「札を売る人」だから「ダフ屋」という隠語で呼ばれるようになったというもの。一説には戦後、物が不足した頃から現れるようになったみたい。

(村上)
そんな昔から迷惑行為があったんですね。

(杉浦)
そう。当時からやっちゃいけないことだったから、隠語が生まれたんだろうね。こうした行為のせいで、チケットを手に入れることができなかったり、不当に高額な代金を払うことは、僕たち消費者にとっても大きな負担だよね。

(村上)
興行する側や出演者にとっても迷惑な話ですよね。彼らがチケットをいくら高額で売っても、それは興行主や出演者の利益には全くならないですもんね。ひどいなと思いますし、もしお客様が定価でチケットを購入できていたら、その後も二度三度と観に来れていたかもしれないですし、会場で販売されているタオルやTシャツなどのグッズなども買えていたかもしれないですよね。ダフ屋や転売ヤーのせいで、迷惑してますよね。

(杉浦)
だから「ダフ屋行為」に関しては、各都道府県の迷惑防止条例で禁止されているんだよね。ただ、この迷惑防止条例で取り締まれるのは「公共の場所または公共の乗り物」で行われるチケットの売買なので、「インターネット上での売買」は取り締まることができないんだって。

(村上)
えー!じゃぁ、転売ヤーは取り締まれないんですか?

(杉浦)
そうなんですよ。だから、2019年に施行されたのが、今日のテーマである「チケット不正転売禁止法」なんです。ここからは講師のかたに伺っていきましょう!文化庁文化経済・国際課専門官の依田 浩崇さんです。

(村上)
依田さん、「チケット不正転売禁止法」とは、どういった法律なんですか?

(依田)
「チケット不正転売禁止法」は、簡単に説明すると、国内で行われる映画、音楽、舞踊などの芸術・芸能やスポーツイベントなどのチケットの不正転売などを禁止する法律です。不正転売とは、興行主に事前の同意を得ずに、反復継続する意思をもって行う有償による譲渡で、元の販売価格を超える価格で特定興行入場券を転売することを意味します。

(杉浦)
今のお話の中に大切な事柄が四つありましたので、もう一度繰り返しますと、不正転売というのは、一つ目「興行主の事前の同意を得ないで」、二つ目「継続する意思をもって、お金を得て権利を譲り渡す行為」、三つ目「元の販売価格より高額で」、四つ目「特定興行入場券を転売すること」ですね。

(村上)
あのー「特定興行入場券」ってなんですか?

(依田)
「特定興行入場券」とは、不特定または多数の者に販売され、かつ、次の三つのいずれにも該当する、日本国内で行われる芸術・芸能やスポーツイベントなどのチケットをいうと定義されています。

(杉浦)
今、実際にチケットを持っているかたは、そのチケットを見ながら聴いてもらいたいので、紙のチケットを引き出しやバッグの中から取り出して、電子チケットの場合は画面の準備をお願いします。

(村上)
依田さん、早速「特定興行入場券」に該当する三つの要件を教えてください。

(依田)
はい。一つ目は、「販売の際に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示されていて、そのことが、券面あるいは電子チケットの画面上にも記載されていること」です。

(杉浦)
佳菜子ちゃんには、あるアーティストのチケットを用意しました。そのチケットの裏を見てもらっていいですか?

(村上)
おっ!チケットの裏面にすごくたくさん注意事項が書いてあります!虫眼鏡が必要なくらい、ギュっといっぱいいろんなことが書いてありますけども。ここに「主催者の同意なく有償で譲渡することは禁止します」って書いてあります。

(依田)
はい。そうなんです。そして、二つ目の要件は、「興行の日時、場所、座席が指定されたものであること」です。

(村上)
これはチケットの表に、確かに、日時、場所、座席、どれも書いてありますね。

(依田)
三つ目は、「座席が指定されている場合、購入者の氏名と連絡先を確認する措置が講じられていて、そのことがチケットに記載されていること」です。

(村上)
確かに、購入者の氏名・連絡先を確認したと書いてありますね。ちなみに、立見のコンサートなどの場合、座席指定はないですよね。その場合は「特定興行入場券」にはならないんですか?

(依田)
その場合も規定されておりまして、立見の場合は、入場資格者が予め指定されていることと、「入場資格者の氏名と連絡先を確認する措置が講じられていて、そのことがチケットに記載されていること」が要件になります。

(村上)
なるほど。時々、ご招待いただいて舞台などを観る機会があるんですけど、無料の招待券は「特定興行入場券」になるんですか?

(依田)
無料で配布されたチケットや、転売を禁止する旨の記載がないチケット、販売時に「購入者」または「入場資格者」の確認が行われていないチケット、日時の指定のないチケットなどは「特定興行入場券」には該当せず、「チケット不正転売禁止法」の対象外となります。

(杉浦)
佳菜子ちゃん、この法律に違反して高額で転売したら、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられるそうです。

(村上)
1年以下の懲役って、刑務所に入るってことですよね?思っていたより重い罰ですね。

(杉浦)
業者だけでなく個人であっても、チケットを不正転売すれば罰則の対象となります。最近、SNSでも簡単にできちゃうから、知らずに不正売買をしていたら、とんでもないことになっちゃうってことです。実際、推し活しているアーティストや劇団のチケットを複数枚購入して、それを転売していた人が、法律が施行された2019年6月以降、書類送検される例が相次いでいます。理由がね、「自分のチケット代を稼ぐために行った。」という。行きたいのは分かるけど、やっちゃいけないことだからね。

(村上)
法律が施行されたのは2019年ということで5年経っていますが、まだ知らないかたもいらっしゃるでしょうね。あの、素朴な疑問なんですけど、急にライブに行けなくなって、チケットを他の人に買ってもらいたいこともありますよね。その場合、SNSで欲しい人を探しちゃいけないんですか?定価で販売すれば、不正転売には当たりませんよね。

(依田)
はい。確かに定価であれば不正転売には当たりませんが、個人間でのチケットのやりとりはトラブルが発生する可能性があります。

(杉浦)
チケットを送ったのにお金が振り込まれない…とかね。

(依田)
ですから、急用や急病などでチケットを転売したい時は、興行主の同意を事前に得ている正規のリセールサイトの利用をお勧めします。リセールサイトであれば、トラブルになる可能性も低く、定価で転売することが可能です。

(村上)
では、逆に、私たち消費者がチケットを購入する際に気を付けたほうがいいことはありますか?

(依田)
それはもちろん、「正規のルートで買う」ことです。「どうしてもチケットが欲しい」からといって、正規でないチケット転売サイトやSNSで知り合った人から購入したりしますと、「代金を振り込んだのにチケットが届かない」、「連絡もとれない」など、トラブルになる可能性があります。

(杉浦)
また、正規のルートで購入しないと、公演が中止とか延期になった場合、返金を申し込んでも断られる可能性があるそうですね。

(村上)
あー!なるほどね!!

(依田)
はい、その通りなんです。興行主がチケットの転売を禁止している場合は、転売されたチケット代の返金を求めることは難しい場合があります。また、オークションや転売サイトなど個人間での取引でチケットが転売された場合、返金の取り決めをしていなければ、売り手に返金の義務はありません。

(村上)
正規のルートで購入しないとリスクがいっぱいあるんですね。

(杉浦)
最近は、出演者側もチケットの転売には毅然とした対応を見せています。福山雅治さんのイベントでは、転売されたチケットで入場できないようにしただけでなく、転売サイトにチケットを出品したり、購入したオフィシャルファンクラブの会員に対して、ファンクラブを強制的に永久退会させる処置を行ったんですって。

(村上)
確かに、作品を作ったり、出る側の私たちがそうやっていかないと、ファンのみなさんは、もしかしたら転売してしまうことがあるかもしれないし。

(杉浦)
そうだよね。応援しているアーティストのためにも、高額転売をやっちゃいけないということを、アーティスト側からやってくれると、ちゃんとしなきゃ!とピシッとなると思うから、こういうことは大事ですね。

(依田)
チケットの不正転売は禁止されています。ライブや舞台を観る方々も出演する方々も、心から楽しむことができるように、ルールをぜひ守っていただき、もし余ったチケットを売ったり、転売チケットを購入したりする時は、そもそも転売してよいものかしっかり確認していただきながら、興行主や興行主から許可を得た正規のリセールサイトを利用してください。

(村上)
今日のお話を聞いて、特に注目したことは、やっぱり私は出る側でもあるので、「舞台を作る側の努力を大切に!」。これが分かっていたら、転売といった行為に至らないと思うんです。メイキング動画とか、もっと出して、作る側の努力を知ってもらいたいですね。

(杉浦)
僕が今日、特に注目したのは、「NO!チケット不正転売」。これです!


「 関連リンク 」
文化庁「チケット不正転売禁止法」
消費者庁「COLUMN11「チケット不正転売禁止法」について」
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