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食から日本を考える。ニッポンフードシフト

食から日本を考える。ニッポンフードシフト

身近な「食」をひもといていくと日本の食料自給率や生産現場が抱える課題が見えてくる!?
今回は、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」というテーマで深掘りしました。
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(杉浦)
佳菜子ちゃんは食べることがめちゃくちゃ好きなんだよね。

(村上)
大好きです!食べるために生きています!かき氷が一番好きだけど、食事の中で一番好きなのは蓮根です。友達に“妖怪サラダお化け”と言われるくらい、野菜が大好きです。

(杉浦)
僕も畑で野菜を育てているので分かりますね。

(村上)
どんな野菜を育てているんですか?

(杉浦)
今は、枝豆の準備とか、新じゃがいもが始まったりとか。楽しいですね。そうした大好物の数々、これから先もずっとおいしく食べられると思いますか?

(村上)
え、食べられるでしょ?!食べられなきゃ困ります!

(杉浦)
実は、これから先もずっとおいしく食べられるかどうかは、私たちの生活や社会のあり方に大きく関わってくるところなんですって!

(村上)
話のスケールが大き過ぎて、どういうことなのか分からないんですけど。

(杉浦)
そうですよね。そこで今日は、皆さんもイメージがつきやすいように、みんなが大好きな「餃子」から日本の食を考えていきます。今日の講師は、農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室長の宮長 郁夫さんです。

(村上)
宮長さん、「餃子から日本の食を考える」ってどういうことですか?

(宮長)
はい。餃子には、白菜やキャベツ、豚肉など様々な材料が使われています。それらを一つ一つひもといて、私たちの食卓に上がるまでを見ていくと「日本の食の現状」や「抱えている課題」が見えてくるんです。

(杉浦)
佳菜子ちゃんは、餃子を作るならスーパーで何を買う?

(村上)
白菜、ニラ、ニンニク、ショウガ、豚肉。

(杉浦)
それらの具材、全て国産でしょうか?

(村上)
えっ!?ニンニクは海外産のものもありますけど、青森など国産も広く出回っていますから、全て国産の材料で作れちゃうんじゃないかな!と思いますけども。

(杉浦)
宮長さん、佳菜子ちゃんはこう言ってますけど。

(宮長)
確かに、生鮮野菜は国産が多いですが、一般的に餃子の具材に使われる「豚肉」は国産であっても、とうもろこしなどの餌の原料の多くは海外から輸入されています。また「餃子の皮」に使用されている小麦粉、その原料の小麦は8割以上が海外からの輸入です。

(村上)
そうなんですね!!小麦は8割以上も海外からの輸入だったんですね。輸入に頼りきりというのは良くないと聞いたことがありますが・・・。

(宮長)
はい。近年は世界的に人口が増加していることもあり、食料需要が増えています。そんな中、コロナ禍のように世界的なパンデミックによって輸送が滞ったり、異常気象で生産地が打撃を受けると、当然に供給できる食料は減り、私たちの食生活に影響を及ぼす可能性があります。近年、食品の値上がりが目立っているのも、こうしたことが要因の一つになっています。このため、もしもの時でも食料を安定的に確保するためには、できる限り国内で生産することが大切で、その指標の一つとして食料自給率があります。

(杉浦)
食料自給率とは、私たちが消費した食料のうち、どれだけ国産で賄われたかを示す指標ですよね。

(宮長)
よくご存知ですね。日本の食料自給率は、昨年度はカロリーベースで38パーセントほどでした。
品目別で見ると、米の自給率は99パーセント、野菜は79パーセントで、他の品目と比較すると自給率は高めなのですが、一方で、日本人にとってなじみの深い大豆の自給率は6パーセント、小麦も15パーセントとそれほど高くはありません。

(村上)
ということは、ちょっと大げさかもしれないですけど、もしもの時、食料の確保ができなくなるっていうことですか?それは私としては、めちゃくちゃ困ります!パンもうどんも大好きなので。食料自給率を上げるために私たちにできることってどんなことがありますか?

(宮長)
例えば、料理をする時に国産の食材を使うことです。餃子の皮に使用する小麦粉を国産の米粉に変えたり、餃子を作る時に使う豚肉を国産にしたりすることですね。

(杉浦)
でも、国産の豚肉も、その餌の原料の多くは海外から輸入しているとおっしゃっていましたね。

(宮長)
そうですね。その現状を踏まえ、家畜の餌には、国内で生産される「飼料用のお米」の他、「余った食品」なども使われてきているところですが、近年これらに加えて「規格外の野菜」などを活用する動きも生まれています。このような余った資源を利用した餌は「エコフィード」と呼ばれ、輸入した餌に依存しすぎない農業経営につながるだけではなく、SDGsの推進にもつながっています。農業の現場では今まさに、創意工夫のある様々な取組が行われているところなんです。
また、豚肉を100パーセント国産の野生のシカやイノシシの肉、いわゆるジビエに変えれば日本の農業を応援することにもつながります。

(村上)
餃子をひもといていくと、いろんなことが見えてくるんですね。最初、餃子で?と思いましたが、すごいですね。

(杉浦)
続いては佳菜子ちゃん、餃子の具材に使われる白菜やキャベツの生産現場を想像してみてください。一体どのように収穫や運搬がされていると思いますか?

(村上)
前に、番組のロケでじゃがいもの収穫を体験したんですが、めっちゃ大変でした!やっぱり地面にアプローチするので腰も痛いし、足も踏ん張らないといけないし、鍬を使うと腕も使うので、全身がしんどくて、結構な体力を使うなと思いました。

(杉浦)
上の茎も切って掘って探して、大きさを揃えながら詰めて運んで大変ですよね。この“大変”というイメージについて、宮長さんどうですか?

(宮長)
そうですね。確かにそういう大変な現場もある一方で、白菜やキャベツといった農産物については生産者の減少や高齢化が進んでいる面もあります。現在の農業従事者数は約120万人ですが、今後20年で30万人にまで減少する可能性があるんです。そのため近年は、作業負担を軽減させるための機械化が進んでいます。

(杉浦)
生産者の減少や高齢化、これも日本の農業が抱える課題の一つですね。

(宮長)
はい。日常の仕事として自営農業に従事している方々の2023年の平均年齢は、68.7歳。全体のおよそ7割以上が65歳以上の高齢者の方々です。

(村上)
そうなんですね。若いかたも増えてきたという話も聞きますが、やっぱりご高齢のかたが頑張ってくださっているんですね。私たちはおいしい白菜やキャベツといった食材を食べられているのも、皆さんの努力のお陰なんですね。

(杉浦)
機械化も進めていかないとだしね。

(村上)
そうですよね。機械化が進んでいなかったら、今よりも生産量が減っているかもしれないですよね。

(宮長)
はい。そうならないために、今、日本では、生産性を向上させることで農業の持続的な発展につながるよう、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業、いわゆる「スマート農業」を推進しています。無人で動くトラクターや、リモコンを使った草刈機が導入されていたり、肥料の散布にドローンを活用したりと、近年はそうした先端技術を活用した農業現場も増えてきているんです。また、「農業をやってみたい」という若い世代の新規就労者を後押しするための取組なども積極的に行っています。

(村上)
ドローンで肥料をまくってすごい進化ですよね。餃子から日本を考えるってこういうことなんですね。

(杉浦)
でも佳菜子ちゃん、感心している場合じゃないですよ。これからも「おいしい餃子」を食べ続けるためには、生産現場の頑張りだけでは十分ではないんですよ。私たち消費者も行動を変えていかなくちゃいけませんよね、宮長さん。

(宮長)
はい。それこそが「ニッポンフードシフト」です。

(村上)
なんですか?「ニッポンフードシフト」って?

(宮長)
農林水産省では現在、農政の基本理念や政策の方向性を示す「食料・農業・農村基本法」の25年ぶりの見直しを進めています。この中で触れられていますが、食料の持続的な供給が確保されるよう、例えば環境に負荷をかけないような農産物などを、消費者の皆さんに積極的に手に取ってもらうことが重要と考えています。消費者の皆さんにこうした日本の食の現状と課題に気づいてもらえるよう、消費者、生産者、食品関係事業者、つまり日本の「食」を支えるあらゆる人々と行政が一体となって、日本の食を考え議論し、行動する国民運動が、ニッポンフードシフトです。すでにこのニッポンフードシフトのもと、様々な取組を展開しています。

(杉浦)
ニッポンフードシフトのウェブサイトを見ると、興味深い多くの取組がもう既に発信されていますよね。

(宮長)
はい。今日は餃子から日本を考えていますけど、今日お話しているようなことがコンパクトにまとめられた「餃子から日本を考える。」アニメーション動画や、同じように「おにぎりから日本を考える。」動画も公開しています。

(村上)
おにぎりからも日本が見えてくるんですね。動画の公開以外にはどんなことをされているんですか?

(宮長)
各都道府県の特産を使った新しい餃子の食べ方を提案しています。そこで、“餃子の王様”と呼ばれる餃子界のレジェンド、パラダイス山元さんに47都道府県の国産食材を使った餃子の食べ方を考えてもらい、47の食べ方をニッポンフードシフトのウェブサイトで公開しています。

(杉浦)
僕も先ほど、スマホで見てみたんですけど、例えば青森県だったら「フライドガーリックとりんごピューレで食べる餃子」など、インパクトのある食べ方がズラッと紹介されていました。

(村上)
どんな味わいになるんだろう?新しい!

(杉浦)
そう言うだろうと思って、今日はこちらを用意しました!佳菜子ちゃんの出身地である愛知県の食材「赤味噌と青じそとオリーブオイルで食べる餃子」です。

(村上)
おしゃれですね!

(杉浦)
パラダイス山元さんは、「旨みの塊である赤味噌と、餃子の肉汁の仲を取り持つ青じそ。オリーブオイルが全体を上手くまとめてくれる。」とコメントされています。

(村上)
いただきます!おいしい!すごく一つにまとまっていて、オリーブオイルの香りと青じその香りと赤味噌のコクが、餃子を引き立ててくれています!

(杉浦)
青じそと餃子はよくあるけれども、そこに赤味噌は入れたことがないな。僕もいただきます。…合う!!オリーブオイルと青じそが餃子をフレッシュにしてくれる!それでいて、赤味噌がコクを足してくれている。これは47都道府県の国産食材を使った餃子を制覇したいですね。

(村上)
餃子はいろんな食材と相性がいいので、食べ方を色々と冒険してみると面白いですね。

(宮長)
はい。ニッポンフードシフトでは、「ニッポンの『食』はこれからもずっと『おいしい』か?」といったメッセージを投げかけています。当たり前のように毎日とる食事ですが、そのおいしいの向こう側には「食」に関わる課題が横たわっています。おいしい日本の食をずっと守りもっと育てていくために、私達は何を知り、考え、どのように行動していくかがとても大事です。
本日の餃子の話が皆さんに何らか気づいていただくきっかけになればと期待しています。

(村上)
今日の学びの中で一番注目したのは、ニッポンフードシフトのウェブサイトを見れば、全てが分かると思ったので、「ニッポンフードシフト」のウェブサイトを注目したいなと思います。

(杉浦)
僕は、「料理から食材をひもといて生産者の方までいく。」この発想がなかったので、これはいい考えだと思いました。成長日誌に「餃子から食材の原点を考えよう」とメモします!


「 関連リンク 」
ニッポンフードシフト事務局「食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT」
農林水産省「ニッポンフードシフト」
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