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みんなで守る地域交通!「交通空白」の解消に向けて

みんなで守る地域交通!「交通空白」の解消に向けて

地方での移動手段に困った経験ありませんか?
利用者や働き手の減少により、地域の路線バスや地域鉄道が廃止されるなど、今、地方の交通空白が課題となっています。
今回は、「みんなで守る地域交通!「交通空白」の解消に向けて」というテーマで学びました。
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(杉浦)
佳菜子ちゃん、「暮らしやすいまち」って聞くと、どんなまちをイメージしますか?

(村上)
「暮らしやすいまち」で言うと、結構、私の実家がそんな感じだったんですけど、家の裏にスーパーがあったりとか、徒歩10分で商店街があって、1分くらい歩けばスケートリンクもあって。結構、名古屋って住みやすいと言われるんですけど、そういう場所かなと思います。

(杉浦)
やっぱり、スーパーや病院、学校とか日常生活に欠かせないから、それらが充実していると「暮らしやすいまち」って思いますよね。でも、佳菜子ちゃんも知ってのとおり、日本は少子高齢化が進んでるから、人口も働き手も減り続けてるじゃない。だから必然的に病院や学校の数が年々減っていってるんだよね。

(村上)
学校とかも統合される話っていうのは、よく聞きますよね。でも、病院減ってしまうと、みんなが困るし、特にご高齢のかたは困っちゃうんじゃないかなって。

(杉浦)
マイカーとかがあればいいんだけど、高齢になればなるほど免許を返納して運転しなくなるじゃない。だから電車やバス、タクシーなどの地域交通は「地域の足」として、地元のかたにとって重要なサービスなんだよね。ところが、その肝心な地域交通が、今、存続の危機にさらされてるんだって!

(村上)
えっ!? 存続の危機に? それは困りますね。

(杉浦)
ここからは、今日の講師に伺っていきましょう! 国土交通省総合政策局地域交通課の板垣 友圭梨さんです。

(村上)
板垣さん、地域交通が存続の危機なんですか?

(板垣)
はい、そうなんです。先ほどお二人がお話されていたように、日本は人口も働き手も年々減っています。そのため、路線バスや地域鉄道、タクシーの利用者は徐々に減少し、当然のことながら事業者の経営は悪化して、赤字路線を廃止せざるを得ない状況なんです。

(杉浦)
実際、地域の路線バスや地域鉄道の事業者のおよそ9割は赤字なんだって。

(村上)
9割も!と言うことは、地域交通は地元の事業者さんが頑張ってくれて、成り立ってるっていうことですよね。

(杉浦)
そうなんだよね。佳菜子ちゃんは「交通空白」って言葉、聞いたことある?

(村上)
初めて聞きました。「交通空白」って何なんでしょうか? 板垣さん。

(板垣)
地域によって事情は様々ですが、国土交通省では、バス停や駅が近くになくタクシーなどが30分以内に配車されない地域や、運行本数が少なくて地域交通の使い勝手が悪い地域などを「交通空白」と言っておりまして、「国土交通省「交通空白」解消本部」を設置して、課題認識を持っている自治体の「交通空白」を解消していくために取組を進めています。

(村上)
交通空白の地域があると、地域の方々が暮らしにくいというだけじゃなくて、他にも何かデメリットってあるんですか?

(板垣)
はい。日本は地方の人口減少を解消し日本全体の活力を上げることを目的に、様々な取組を進めています。そのうちの一つが「インバウンド対策」です。外国人観光客の方々に大都市圏だけでなく、地方も観光していただくことで地域経済を活性化し、地域を元気にする取組です。しかし、交通空白がありますと、空港や駅に着いた後、観光に必要な移動の足を確保できません。観光客を誘い込むことが難しいんです。

(杉浦)
そうなんだよね。実際、外国人観光客の多くは、東京、大阪、名古屋の三大都市圏を観光するかたが多くて、地方を訪れるかたはまだまだ少ない状況なんだって。

(村上)
外国人観光客のかただけじゃないですよね、この話は。私たちだって、国内旅行をする時、交通が確保できないと、空港や駅から離れた地域を観光するハードルって上がっちゃいますもんね。

(板垣)
そうなんです。また、日本は新しい地方経済を創生するために、工場の誘致なども積極的に進めていますが、地域交通が整っていないと不具合が生じることもあります。

(杉浦)
例えば、熊本県に世界最大手の台湾の半導体メーカーの工場が出来たの。以前は畑だった所に大きな工場と関連企業、さらに、そこで働く方々が住むアパートやホテルなども多数できたんだって。これによって地域の経済が急速に活性化しているんだけど。

(村上)
良かった話ですよね。

(杉浦)
良かったんだけど、実は、この地域は電車や路線バスが十分に整備されていない地域で、マイカー利用者が多いこともあって、以前から通勤時間帯の交通渋滞が慢性化してたんだって。そうした地域に工場が出来て急速に人が増えたから、交通渋滞がさらに悪化しちゃってるんだって。

(村上)
なるほど! 地域交通の整備が追いついていないということですよね。

(板垣)
そうなんです。これらのことからも分かるように、地方を元気にするためには、移動手段の確保は欠かせないものです。そのため、今、交通空白を解消する取組が積極的に進められているんです。昨年、石破総理も所信表明演説で、「地域交通は地方創生の基盤」、「全国で交通空白の解消に向け、移動の足の確保を強力に進める」と発言しています。

(村上)
具体的には、どういった取組があるんですか?

(杉浦)
その取組の一つが、「公共ライドシェア」と「日本版ライドシェア」なんです。

(村上)
板垣さん、「ライドシェア」って自家用車を使って一般ドライバーが有料で人を運ぶサービスですよね。「公共ライドシェア」と「日本版ライドシェア」って、どういうものなんでしょうか?

(板垣)
「公共ライドシェア」と「日本版ライドシェア」に共通するのは、「二種免許」を持たずに有料で人を運ぶサービスを提供できるということです。本来、人を有料で運ぶ場合、タクシードライバーさんのように、「二種免許」が必要ですが、ライドシェアのドライバーは、それが不要というのが大きな特徴です。

(村上)
なるほど。「公共ライドシェア」と「日本版ライドシェア」それぞれについて、もう少し詳しく教えていただけますか。

(板垣)
まず「公共ライドシェア」は、交通が著しく不便な地域であったり、介護が必要なかたなどに向けて、市町村やNPO法人などが、自家用車を活用して提供する有料の旅客運送です。

(村上)
すでに運用されている地域があるんですよね?

(板垣)
はい。熊本県の水上村では、昨年4月から村が主体となって、公共ライドシェアを導入しました。村内の路線バスが通っていない地区と村の外にある公立病院を結び、郵便局やスーパーなど、18か所の停留所を設定して運行しています。実施時間帯は祝祭日を除く月曜と木曜、1日3往復で運賃は500円です。

(村上)
週に2日でも交通手段があるとありがたいですよね。運賃も500円なら、タクシーを呼ぶよりはリーズナブルで助かりますね。

(杉浦)
板垣さん、石川県小松市の公共ライドシェアは、夜間運行しているそうですね。

(板垣)
はい、そうなんです。小松市が主体となり運行している公共ライドシェアは市内全域を対象としているんですが、実施日が木曜から土曜、時間は夕方5時から深夜12時までです。こちらは、日常的に夜間の移動に不便さを感じている住民や、北陸新幹線で小松市を訪れた観光客などの移動の利便性向上に加え、能登半島地震で被災された二次避難者の移動を確保するために導入されました。

(村上)
小松市って、小松空港もあるし、新幹線の駅もあるし、交通の便がいいと思っていましたけど、夜間になると不便になってしまうんですね。

(杉浦)
小松駅周辺には有名な居酒屋さんなど飲食店がいくつかあるんだけど、そのお客さんたちの需要に対応する側面もあるんだって。

(村上)
なるほど!公共ライドシェアのおかげで、心置きなく美味しいお料理やお酒を味わえるようになったっていうことですよね。地元のかただけでなく、観光客にとっても嬉しいことですね。

(板垣)
そのほか、通学定期券を発行してこどもたちの通学に対応するライドシェアなど、地域の実情に合わせて600以上の市町村でバラエティに富んだライドシェアが展開されています。

(村上)
そうなんだ!板垣さん、続いて「日本版ライドシェア」についても教えてください。

(板垣)
「日本版ライドシェア」は、タクシー事業者の管理のもとで、一般ドライバーが自家用車などにより有料で人を運ぶサービスです。タクシーが不足する地域や時期、時間帯に提供されます。

(杉浦)
「タクシー事業者の管理のもとで」というのは、安全・安心な運用のために、それが必要ということなんでしょうね。

(板垣)
そうですね。鳥取県では昨年、大きなイベントを開催したんですが、その期間中、タクシー車両の不足が見込まれることから、鳥取県の申出により、日本版ライドシェア「とっとライドシェア」を導入しました。

(杉浦)
配車アプリを利用すれば、タクシーのように無線機を設置したり、お釣りの準備をしなくても、タクシー業務ができるんですよね。

(板垣)
そうですね。ただし、配車アプリの導入に負担を感じる事業者さんもいますので、電話を使った日本版ライドシェアを導入している地域もあります。

(村上)
地域の実情に合ったいろいろな形態があるということですよね。日頃、移動に不便を感じているかたは一度、お住まいの自治体に問い合わせてみるといいですね。

(杉浦)
地域のかたの移動手段としてだけではなく、僕たちも国内旅行で利用すれば、もっとディープな旅を楽しめそうだよね。

(板垣)
はい。国土交通省では交通空白解消に向けて、「公共ライドシェア」や「日本版ライドシェア」をはじめとした地域の実情に応じた地域交通の導入を積極的に進めています。昨年11月には「交通空白」解消・官民連携プラットフォームを立ち上げ、お困りごとを抱えた自治体や交通事業者と、ソリューションを持った企業とのマッチングを進め、一過性ではない実効性のある取組が各地域で展開されるように後押ししていく予定です。現在、会員となる自治体や交通事業者、ソリューション企業を公募しています。地域交通は地方創生の基盤です。まずは地域交通の現状を知り、継続的に利用できるサービスとして定着するように、ご協力をお願いします。

(村上)
今日の話の中で特に注目したのは「日本版ライドシェア」です。

(杉浦)
僕は「公共ライドシェア」です。


「 関連リンク 」
国土交通省「「交通空白」解消本部」
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