- 2011年9月25日(日)
- Bjork
- 「New World」
- Bjork
- ビョーク・・・一般的には映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のイメージが強いかも知れませんね。電子音を駆使し、お世辞にもPOPとは言えない、独特な世界を繰り広げる彼女ですが、世界のクリエイターから、その感性を支持されているアーティスト。来週、通算7枚目となるニューアルバムをリリースする彼女はいったい、どんな信念の元、活動を続けているのでしょうか?
来週、通算7枚目となるソロアルバム「バイオフィリア」をリリースするアイスランドの歌姫、ビョーク。先日行われたライブでも、地球の重力を利用する楽器を使うなどそのサウンドはもちろん、パフォーマンスにも、独特のセンスが反映されています。最近も、スマートフォン対応の、進化するアプリをリリースし、マルチメディアに対する展開も話題となっています。毎回彼女が発表するのは、皆の想像を超えたものばかり。彼女の中にあるもの、発想の源はどこにあるのでしょうか?その答えは、彼女の母国、アイスランドにありそうです。
1965。北の海に浮かぶ火山の島、アイスランドに生まれたビョーク。両親の影響で、幼い頃から作曲をはじめ、7歳から地元の音楽学校に通い、フルートやピアノ、クラシックを学びます。そして、母親の勧めで12歳でリリースした童謡のアルバムはアイスランドで大ヒットとなり、天才子役と呼ばれるようになります。しかし、常に新しいものを作り出したいと思った彼女は、13歳からパンクバンドを結成。20代で結成したバンド「シュガーキューブス」は、アイスランドのみならず、海外でもブレイクし、彼女の名前は、アイスランド以外でも知られるようになります。シュガーキューブスを解散した彼女は、翌年にはソロアルバムをリリース。彼女自身、大好きだという電子音楽を大胆に取り入れた音楽は、世界から絶賛され、彼女のイメージもまた、ここから定着していきました。
- 「Joga」
- Bjork
- 「大地の温かさ、宇宙の大きさ、人間のはかなさ」壮大なテーマを歌った1997年の「ホモジェニック」。女優としても評価の高かった2000年の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、人の声だけで構成された2004年の「メダラ」、フェミニストとして政治的メッセージの強かった2007年の「ヴォルタ」・・・彼女は、アルバムごとにコンセプトを定め、常に音楽的タブーにチャレンジし続けて来ました。人々を驚かすその発想は、幼い頃の音楽学校での体験が原動力となっていたのです。
少しハスキーな歌声、独特なメロディー。そこには、私たちが学んできた音楽の枠を超えた、自由な発想があります。アイスランド。北海道と四国を合わせたくらいこの国は、火山と氷河が織りなす大自然に恵まれた国。オーロラが見え、火山エネルギーを上手に使い、自然からの恩恵をうまく生かした生活。そんな中、ビョークは、幼い頃、自分がまだ自覚する前から、自然と口から歌が生まれ、自然を音楽で表現する経験をしてきました。そんな彼女にとって、音楽学校で習うクラシックの音楽理論など、あまり意味のないもの。従来の教育に疑問を感じるようになります。もっと音楽は自由なはず。彼女は、自然の中で音楽と過ごし、音楽や音楽理論が、火山や溶岩や空や雨、月と関係していることを、体感で知っていたのです。自由、表現、個性、衝動性、自発性こそが音楽。音楽とのつながりは、もっとシンプルでいい。子供の頃、もっと他のアプローチで音楽を勉強したかったと語るビョークは、その想いが、新しいタッチスクリーン機材に出会ったことから、音楽への感覚的な創造が解き放たれ、今回の壮大な新作「バイオフィリア」へとつながっていきました。
- 「Crystalline」
- Bjork
- 歌いながら、同時に操作して、曲を自分のフィーリングに直結させるシステム。彼女の制作意欲は、かねてから彼女が願ってきた、子どもたちに、自由に音楽を造る楽しさを知ってほしいという思いとつながり、今回の新作は、ただの音楽作品の集合にとどまらず、ツアーで巡る世界各地で、子ども達へのワークショップを開くという活動に広がっています。クリスタルができるように音楽も生まれ、キラキラと輝きを増す。子どもたちに、自分たちの持つワクワク感を、より自由に伝える能力を見つけてほしい。かつての自分がそうであったように、自然との繋がりを感じる事で、自らの中から生まれるものに、耳を傾けてほしい。そんな思いは、多くの大人を動かし、現実のものとなっているのです。
今回の最新作でも、自然と電子機器の融合というとても難しい課題にチャレンジしているビョーク。この曲は、今年6月に開催されたライブでも演奏され、そのリズムは、地球の重力によって徐々に変化する振り子を使っています。彼女曰く、「リズムは、これからもどんどん変わっていくと思うわ」・・・
彼女の衣装、そしてそのサウンドは、とても奇抜なものとしてとらえられ、変わった人だと思われがちですが、とても子ども想いの素敵な人です。あまり知られていませんが、アイスランドでは、子ども用の童話映画を造ったり、大好きなムーミンの映画に音楽を提供したり、世界の子どもたちへ、支援活動にも積極的に参加しています。
今年、46歳になるビョーク。「ちょうど自然と人間との関係に慣れてきたころ」そう語る彼女は、まだまだ進化の途中のようです。今夜は、ビョークをピックアップしました。