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ON AIR BLOG / 2020.07.15 update
今日は「コロナの東京の状況について」毎日新聞 世論調査室長の平田崇浩さんにリモートで解説していただきました。
Q 最近、よく耳にする、政府の「Go Toトラベル」キャンペーン。詳しい内容をお伺いしたいのですが・・・
A 新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが落ち込んだ観光業界を支援する事業です。私たちが国内旅行をするときの代金の最大半額を国が負担してくれます。例えば1人2万円で1泊旅行に行ったとして、35%に当たる7000円が割引になって、さらに15%に当たる3000円分、旅行先で使えるクーポン券がもらえる仕組みです。
Q それはかなりお得ですね。いつから始まるのですか。
A 政府は当初、お盆前の8月上旬からと言っていたのですが、今月下旬の4連休に使えるように7月22日からに前倒ししました。最初は35%の代金割引だけですが、9月以降はクーポン券ももらえるようになるそうです。
Q 気になるのは、コロナの感染者数がまた増えていることですよね。こんな状況で「どんどん旅行してください」って言っちゃって大丈夫なのでしょうか。
A そう思いますよね。特に東京を中心とした首都圏では緊急事態宣言が出ていたとき以上に毎日、感染者が確認されています。ほかの県の知事が「東京からは来てほしくない」と言い始めている状況なのに、わざわざキャンペーンを前倒しするというのは何かちぐはぐというか、アクセルとブレーキの踏み方を間違っている感じもします。
Q その点を政府はどう説明しているのですか。
A 最近の感染者は若い20代や30代が多いから重症化する人は少ないと。
Q だから危ないのではないですか。無症状の若い人が旅行に行って感染を広げることにならないでしょうか。
A 私もその心配があると思います。一方で、観光地の旅館や飲食店が苦しい経営状況に陥っているのも心配です。なので、例えばですが、キャンペーンの対象を感染者が増えていない地域だけに限定してはどうでしょうか。首都圏や大阪に住んでいる人は当面、旅行してもキャンペーンの恩恵は受けられないようにするとか、ほかの地域から首都圏への旅行も対象から外すというのはダメでしょうか。
Q 不公平だと思う人もいると思います。
A 難しい問題ですよね。もともと地域によって感染状況が違うのに、全国一律の外出自粛や休業の要請をする必要があったのかという指摘もあります。
今度は一転して、全国一斉にイベントの自粛を緩和して、みんなでどんどん旅行しようということでいいのかどうか。
Q 旅行代金の最大半額を国が支援するというのはとても魅力的ですが、それだけ税金を使うということですよね。
A 「Go To トラベル」事業の予算は1兆円以上になります。「コロナの流行が収束した後に人の流れと街のにぎわいをつくり出す」という目的で、4月に編成された第1次補正予算に盛り込まれました。当時はまだ緊急事態宣言が出ていて、医療現場にまともに防護具も届いていない時期だったので、順番が違うという批判を浴びましたね。
Q コロナはまだ収束していないし、医療現場への支援はまだまだ足りません。コロナウイルスと闘っている病院の経営難が問題になっていて、これから第2波、第3波が来たときに対応できるのでしょうか。
A いろんな意味でちぐはぐな感じがしますよね。コロナ感染が長引く中、収束を待つばかりでは日本経済が苦しくなるので、感染防止と経済活動の再生をどう両立させるかを手探りで考えていかなければならない状況なのだと思います。
——観光業だけでなく、音楽やスポーツのイベントも少しずつ再開している大事な時期です。感染拡大につながるようなことだけは絶対に避けなければ、
また全てを自粛する事態になりかねません。「Go To トラベル」もとにかく感染防止に気をつけて、できるだけ安全な地域から少しずつ広げていけばいいのではないでしょうか。