毎日新聞 PRESENTS NEWS CONNECTION
ON AIR BLOG / 2020.05.20 update
今日はツイッター上で盛り上がりを見せた「#検察庁法改正案に抗議します」について。毎日新聞 世論調査室長の平田崇浩さんに解説していただきました。
「#検察庁法改正案に抗議します」。このハッシュタグをつけたツイートが政権を動かしたと言われています。政権側は当初、一部の人たちがツイートやリツイートを繰り返しているだけだと言っていたのですが、今、国会での成立断念に追い込まれました。
Q:これは、検察官の定年を65歳に引き上げる法案ですよね。何が問題だったのか改めて説明をお願いします。
A:国家公務員の定年を65歳に引き上げることになっていて、検察官もそれに合わせるというのが本来の趣旨でした。それ自体に反対している人はいないと思います。問題は、内閣や法務大臣の判断で特別に検事総長など検察幹部の定年を延長できる条文がいつの間にか付け加えられていたことです。
Q:「いつの間にか」というのはどういう意味ですか。
A:この条文を定年延長の特例規定というのですが、去年、法務省がまとめた法案にはなかったのです。それが今年3月に国会に提出された法案にはいつの間にか入っていて、立憲民主党などの野党が驚いて猛反対を始めたわけです。
Q:定年延長の特例規定がなぜ問題なのか、詳しく説明してください。
A:そのためには、今年2月に定年で退官する予定だった東京高等検察庁トップの黒川弘務検事長という方の人事について説明する必要があります。検察庁法では、検事長の定年は63歳と定められていて、検察庁法が戦後に制定されてからずっと厳格に運用されてきました。ですが、安倍政権は突然、法律の解釈を変更したと言って、黒川検事長の定年を半年間延長したのです。
Q:検察庁法を改正しなくても定年延長できたのですか。
A:野党は違法な定年延長だと批判しました。法律を作る立法権というのは国民が選挙で選んだ国会にあるのであって、政府が勝手に法律の解釈を変更していいはずがありません。そうこう議論しているうちに、国会に提出された検察庁法改正案の中に定年延長の特例規定が付け加えられていた。野党は、黒川検事長の定年延長を後付けで正当化しようとしていると反発した——という経緯です。
Q:新型コロナウイルス対策が遅いと政府も国会も批判されている中で、それほど問題のある法案を通そうとしていたというのが信じられないです。
A:安倍政権は法案を取り下げないで、次の国会で成立させたいと言っています。黒川検事長の定年延長も撤回していません。時間が経てば国民は忘れてくれると考えているのだとしたら、それこそ長期政権の緩み、おごりだと言わなければなりません。
——新型コロナウイルスの影響で誰もが感染の不安におびえながら生活していて、仕事を失ったり、収入が減ったり、学生や受験生は授業が受けられなかったりしています。こういうときこそ、苦しんでいる人や困っている人を助けることに全力を上げるのが政治の役割ではないでしょうか。私たちはこの国の主権者として、しっかり政治を監視していかなければいけないと強く思いました。