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ON AIR BLOG / 2017.01.11 update
今日のテーマは「日本製の無人月面探査車の挑戦が年内にも実現」毎日新聞 論説委員中村秀明さんに解説していただきました。
まず、このチャレンジ、世界的な賞金レースの形をとっている点が特徴です。
2017年末までに「純粋な民間開発による探査機を月面に降ろす」「その探査機で月を500㍍移動する」「高画質の月面映像を地球に送る」という3つの課題を最初に達成したチームには賞金3000万㌦(約36億円)が贈られます。スポンサーの中心は米グーグル社です。
当初は世界30チーム以上が手を上げたが、脱落やチームの合体などで16チームに。米国、ドイツ、インド、イスラエルのほか日本の民間チーム「HAKUTO(白兎)」も最終段階に入っています。探査機の開発は、小惑星探査機「はやぶさ」にかかわった吉田和哉・東北大大学院教授の研究室が中心。車両とはいえHAKUTOの場合、小さめの段ボール箱程度で重さ4㌔。軽くて強い炭素繊維を多用した4輪車で構造はできるだけ単純にした。参加チーム中、最も小型軽量で壊れにくい。まさに「メード・イン・ジャパン」です。
そのチームリーダーの袴田武史さん(37)に取材したことがあるが、彼にもドラマがある。子どものころの夢は「『スターウォーズ』に出てくるような宇宙船を作りたい」。それだけを聞けば夢を実現したようですが、話は簡単ではない。志望する大学の宇宙工学科を3度受験して3度とも不合格。仕方ないので他大学の理工学部に入り、テニスサークルで遊んでいた彼だが、高校の友人が一浪して自分が学びたかった航空宇宙工学を学んでいる姿を見て、「もう一度、航空宇宙工学に挑戦しよう」と退学を決意。名古屋大学の航空宇宙工学科に進学しました。やはり、あきらめてはいけませんね。
探査機を乗せたロケットはインドが開発したものを使って、今年の年末に打ち上げの予定。袴田さんは「軽くて小さく、仕組みが簡単なほど月面でも故障が少ない」とレースの勝利に自信をのぞかせる。しかし、賞金で元がとれるわけではない。その狙いはもっと大きい。実績のない小さなベンチャーの大きな挑戦が注目されることで、「新たな技術開発やビジネス創造の動きに火をつけたい」と言う。
そして、自らは小惑星での資源探査を10年後をめどに事業化する第一段階と位置づけている。
下町ロケットのような、なにか熱いものがこみ上げてくるニュースでした。