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ON AIR BLOG / 2017.02.22 update
今日は、カナダのジャスティン・トルドー首相の態度が安倍首相と比較され、
国際的に話題になっているという話です。
毎日新聞夕刊編集部、堀山明子さんに解説していただきました。
Q:トルドー首相と言えば、昨年の伊勢志摩サミットでイケメン首相として
注目された記憶がありますが、いったい何が安倍首相と比較されているのですか?
A:トランプ大統領と米国で首脳会談した日程が2人とも2月中旬だったので、
その対応や外交姿勢が比較されています。
安倍首相は、英国に継ぐ2番目の首脳として10日に、
3番目のトルドー首相はその3日後に会談がありました。
首脳会談後の記者会見では当然、イスラム圏7カ国の国民の入国を
一時禁止する米大統領令に対する見解を問う質問が出たのですが、
安倍首相は「内政問題なのでコメントしない」と発言したのに対し、
トルドー首相は「私の役目、我々(カナダ人)の責任はカナダ流を守り、
世界の良き事例であり続けることです」と答えました。
米国と違い、シリア難民の受け入れを続けるぞというメッセージが
にじみ出ていますよね。
日本もカナダも米国の友好国として初の首脳会談で
トランプ大統領を直接批判するのは避けたという点では同じですが、
トルドー首相のほうが自国の立場を鮮明に打ち出し、
トランプさんとの距離感を見せつけたと言えます。
Q:そういえば、握手の仕方も、安倍首相はトランプさんにグイグイ捕まれて
逃げられなかったのに、トルドー首相はスマートに握手していましたね。
A:それもネットで動画が流されていますが、トランプさんは相手の手を引き寄せて
自分が主導権を握る、手を握ったら放さない、というクセがあるのですが、
トルドー首相はトランプさんが近づこうとすると腕をつかんでさりげなく阻止したり、
握手もグイっと持って行かれる前に手を放すとか、ずいぶん対策が取られていました。
たかが握手ですが、ゴルフまで一緒にやって首脳間の個人的関係を
アピールしたいという思いで訪米した安倍首相と、
あまりトランプさんと仲良くなりすぎると国内で批判を浴びるかもしれないと
身構えて行ったトルドー首相の基本姿勢の違いが根底にあったという見方もできます。
Q:トルドー首相はどういう経歴の方なんですか?
A:父親も首相を務めた名門の家系の長男です。
父のピエール・トルドー首相は、公用語を英仏2カ国語にしたり、
移民受け入れ推進たり、今の多文化国家カナダの原型を作り上げたと言えます。
その息子のトルドー首相は2015年に自由党党首として9年ぶりに保守政権から
奪還し、初の内閣ではマイノリティの閣僚を登用したり、男女半々にしたり、
思い切った人事をしてリベラル色を印象づけました。
シリア難民も4カ月で2万5000人受け入れると表明し、
公約通りほぼ実現しました。リベラルな政策がウリの首相ですから、
トランプさんとは一線を画したかったのでしょうね。
Q:気持ちは分かりますが、
それで移民がカナダに押し寄せたら対応しきれなくなりませんか?
A:そういう懸念はカナダ国内でも強まってはいます。
2017年にカナダは難民を4万人受け入れる方針ですが、
今週発表された賛成47%に対し、多すぎるという回答は41%。
賛成がわずかに上回っていますが、国内を二分する争点になっているのは事実です。
ちなみに、この世論調査ではトランプ大統領との会談についても聞いていますが、
57%がトランプ氏と距離を保ったのは良かったと答えています。
トランプ大統領が移民排斥に対する反発が、
カナダの難民受け入れを推し進めているのかもしれません。