『サカナクションの2017年、山口一郎の2017年を振り返る』

サカナクション 2017.12.28 木曜日

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今回は、2017年最後の授業ということで、音学室にたくさん黒板を用意しています。山口一郎先生が今年を振り返りながら、思いついたことをそのまま黒板に書いていきます。

山口「生徒の皆さんにとって、この2017年はどんな1年だったでしょうか。まずは、サカナクションの2017年を振り返って黒板を書きたいと思います

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「サカナクションは今年で(デビュー)10周年を迎えました。来年の5月までが10周年イヤーになるわけですから、まだ絶賛10周年イヤー中なんですけど。なんかね、10年同じことをやってくるっていうのは、相当なことだなと思いますし、自分が活動していって、前線に立っていられているというのはすごく良かったなと思いますね。あと、応援してくださっている方たちが本当に支えてくださっているということを実感した10年でした。」

「でもやっぱりね・・・10年バンドをやるって、皆さんあんまり想像できないと思うんですけど・・・5人なんですよ。5人が・・・10年間、同じことをやり続けているっていうのは、いろんなことがあるんですよね。例えば、愛美ちゃん。ベースの愛美ちゃんは子供が生まれて、お母さんになってから音楽をやっていたりとか・・・10年前は想像もしていませんでしたからね。でも、今まで僕らは朝から朝までスタジオで作業をしていたのを(苦笑)、何時までって決めるようにしてサイクルが少し変わったりとか、それに伴ってそれぞれの役割分担みたいなものも変わっていったりとか・・・本当にめまぐるしく変化することがあった1年だったかなと、2017年は特に思いますね。アルバムの制作も、そういった事情もあり。」

「・・・言い訳じゃないんだけど、新しい作品を作っていく中で、アルバムがなかなか出来ない理由っていうのは、シングル曲が多いからなんですよ。この長い期間の中で、アカデミー賞(※)もあったりしたから・・・なんかね・・・それを1つにまとめて新しいアルバムを作るっていうことが難しくなっているんです。だからね、今、サカナクションの中で考えているのは、まったく新しい、10周年からの本当に新しい第一歩としてのアルバムを作ろうっていうのが来年の動きになるのかなと。今のサカナクションっていうのをどう表現するかっていうのに固執して作品作りをできたらなって思っています。」

(※サカナクション先生は、映画『バクマン。』の映画音楽で2016年に日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。)

「でも、やっぱりね・・・女の子が2人いて男3人だから、バンドの中でも喧嘩もするし・・・もちろん仲は良いんだけど、いろいろあるわけですよ。僕が制作で引きこもっていたり、4人でスタジオに入る時間とかがすごく長いので、4人の空気感みたいなものを僕があまり感じ取れなくなっていたりすることも結構あったんです。僕、突発性難聴で片耳が聞こえないから、メンバーに頼ってきた部分が結構あって。例えば、ライブミックスとか。サラウンドライブ(SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around)とかもやりましたが、僕はサラウンドはわからないんです。片耳が聞こえないから。バイノーラル、バイノーラルって『情熱大陸』で言ってましたけど、実は僕はバイノーラルを体験できないんですね。だから、そういった部分で実際に信頼出来る部分にそこを頼むというか・・・確認してもらうこと。それをやっていかないと続けられなくなっているんですよ。だから、頼りすぎていた部分もあったなって思っていて・・・だから、今メンバーの4人の中で起きていることと、僕の中で起きていることが乖離(かいり)しているんだけど、それを2018年は、それぞれがインプットしてきたことをぐっとまとめて作品作りできたらなと思うし、解散とかじゃなくて、いずれはメンバーがそれぞれ独立できたらなって思っています。サカナクションっていう母体から、それぞれが独立して、それぞれが好きな音楽や他の好きなことを出来るようになっていったら良いなと思います。エジー(江島啓一)、愛美ちゃんも、DAOKOのプロデュースを一緒にやったりしているけど、そういう活動が各メンバーに出てきて、2020年とか2021年には、それぞれが好きなことを見つけられていたらいいのかなと思ったりしています。」

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「あと、[NF]っていうものも立ち上げて1年経ちましたが・・・NFってよく分からない形だと思うんですよ、皆さんからすると。僕らからすると、NFっていうのは、音楽の新しい形を提案したり、音楽の新しいシステムを作りたい・・・ただ、CDを作ったりライブをするだけじゃなくて、違う表現の方法を世の中と結びついて出来たら良いのになって。音楽に関わる音楽以外の仕事をしている人たちをもっとフックアップしたいなとか、みんなでひとつの空間を作りたいなって思ってやっていることなんだけど、他に誰かがやっていたことではないことだから、それを理解してもらうのに時間がかかるっていうのは分かっているので。僕ね、NFを作った時のひとつの理由として、50歳、60歳になった時に、今みたいに活動できなくなったとして、今のメンバーがそれでも音楽で表現をできる場所を作っておきたかったんですよ。NFって、企業と音楽で仕事をしたり、いろんな操作音を作ったり・・・そういう仕事って、40歳、50歳になっても出来ると思うんです。東京に連れてきちゃった責任があるから、僕が会社を作っておけば、彼らも僕の会社で働けるし、役員になってもらえばそれで生活できるかなって思って。その下準備みたいなものをサカナクションと並行してやっているわけです。2017年は、それと、メンバーをぐっとまとめていくことに躍起になって・・・ようやくアルバムを作ることに向けて走り出していますので、楽しみにしていただけたらなと思います。本当にね、ファーストアルバムやセカンドアルバムのような気持ちで原曲を作っていて、それが皆さんの元に届いて、どう聴いてもらえるのかを楽しみにしているので、期待していてもらいたいなと思います。」

「では、次。バンドのことやNFのことは話したから・・・プライベートのこと。プライベートなー・・・」

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「プライベートのことを振り返って一言・・・”マイノリティ”。いろいろと話題になっていたことだと思うんですけど。テレビでホモのキャラクターをやって、馬鹿にしてるって視聴者の人が批判したとかありしましたよね。でも、日本って、LGBTの人たちに対して寛容だと思うんですよね。ゲイだからって距離を置いたりすることは、日本人はそんなにないと思うんですよね。それは黒人に対しても白人に対しても同じで、すごくフラットな人種なのかなって思うんです。国際的なマイノリティっていうものに対する意識っていうものは。だけど、日本人って、一般社会的マイノリティに対してはすごく冷たいなって思うんですよね。」

「僕、37歳で独身なんですけど、37歳で独身ってだけで、「なんで独身なの?」って目で見られるんです。あと、離婚されている方・・・「バツ2なんだよね」「バツ3なんだよね」って方が僕の周りには・・・東京だからかもしれないけど、いっぱいいるんです。そういう人たちに対してすごく冷たい目で見ている気がする。どこかひっかかっている感じがするんですよ。日本は、そういったマイノリティに対してものすごく偏見があるなって感じているんですよね。だから、「早く結婚しなさい」とか、「いつ結婚するの?」とか親御さんがよく言うこととしてあるけど、僕はいろんな幸せの形があると思っているんです。例えば、50歳になって結婚して幸せになる人もいれば、結婚しないで幸せなカップルのままの人もいると思う。だから、いろんな幸せの形があるんだっていうのをもう少し理解してくれる世の中になれば良いのになって思う。そうすると、LGBTの人たちに対する考え方とかも、もうちょっと整理されてくるんじゃないかなと。僕はそれをまとめて考えていけたらなっていう気がしているんです。僕は、2017年それをすごく感じたかな。」

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「あと、不倫の問題とかも結構ざわついたじゃないですか。不倫は良いことか悪いことかって言ったら悪いことなんだけど・・・知らないじゃん、その人たちの事情を。もちろん、悪いことをしているっていうことで責め甲斐はあるんだけど、それってその人たちの家族の話だから、僕たちはそんなに突っ込まなくていいんじゃないかなと思うんですよ。例えば、自分の親友が不倫をして家族が崩壊しかけているときって、多分、支えてあげると思うんです。何やってるんだって直接怒ることもあるかもしれないし、そこで病んでいたら支えてあげると思うのね。距離が遠いからこそ、めちゃくちゃ言えたり批判したりすると思うんだけど・・・放っておいたらいいと思うんだよね。関係ないんだからさ。あとコメントとかね。サイレント・マジョリティーっていうものの存在が、ものをいう人たちの意見にどんどん流されているなって。それは表現者としてすごく痛々しく感じるんです。僕はプライベートでは、マイノリティっていうものに対することに深く考えさせられる1年でした。」

「じゃあ、最後。流行語大賞とかあるでしょ?今年の漢字とか。僕的な流行語は・・・じゃあ、書くわ、黒板に。僕的な流行語は・・・これ!」

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「ははは(笑)。サカナLOCKS!の生徒は、この「つって」に反応していると思うんだけど(笑)・・・普段使ってるよね?語尾に“つって”を付けるっていうね。つっては、元々なんなんだっけ・・・80年代の何かかな。サカナLOCKS!的な、「チャオ」からの「つって」っていうね。チャオは、2016年くらいから一時的に流行っていたけど・・・校長はね、未だに時代遅れで、チャオ!って言ってるけど(笑)。もうチャオは古いから。なるべく「つって」を日常会話に使っていこうかなと思う。「ちょっとお腹が減ったから、パンでも食べようかな・・・つって!」とかね(笑)。「先生ちょっとこの問題わかりません・・・つって!」って(笑)。多分怒られるね(笑)。」

今回の授業も終了の時間になりました。

「サカナクション10周年イヤー・・・来年は、新しいアルバムも出て、新しいツアーも始まっていくと思います。いろいろ問題もあったし、正直、サカナクションの中でもいろいろと大変で苦しい時期もあったんです。皆さんにはなかなかお知らせできないんですけど。でも、それを乗り越えて、これからも乗り越えながら、壁を乗り越えてまた次の壁を登っていきたいと思っています。皆さんも社会に出て、学生だったら受験とかあると思いますけど、ひとつひとつ乗り越えていくと、また次の壁が見えてくるから、それに向かって歩いて行っていただけたらなと思います。2018年も、サカナクションと、サカナLOCKS!をどうぞよろしくお願いいたします。皆さん、良いお年を!

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