新潟県立十日町総合高校。
この学校には、SCHOOL OF LOCK! で、一度、電話をつないで話した女子生徒がいる。
「30人編成の吹奏楽部の大会に、たった18人で挑む」
そう力強い声をラジオから聞かせてくれた。
そんな彼女たちの「最後の大会」を追った。 |
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■2011年8月1日(月)
総勢18人の小さな吹奏楽団の内、男子はたった一人。
練習場所である「音楽室」は一見女子校さながらだった。
山々に囲まれた盆地特有の澄んだ風が時折、音楽室の中を通っていき、彼らの演奏がその勢いのある風と共鳴する。 |
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演奏を眺めていて、女子らしからぬ鬼気迫る集中力を持っている子が、数名いた瞬間を覚えている。
そして、演奏の合間に独特な緊張感が生まれるのを何度も感じた。 |
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この日は、演奏曲である「jalan jalan」を何度も繰り返し演奏する。
この部の掲げるテーマは、壁に掛けられている言葉、「Furioso (フリオーソ)」。
音楽用語で「激しく」「熱狂的に」を意味するイタリア語。 |
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その意味から辿ると、この部のテーマ「Furioso」に納得することが出来た。
「18人とは思えぬ演奏パフォーマンス」
彼らの演奏の中に確かに「Furioso」という言葉が宿っていた。
昼食の時間。
演奏している時とのギャップを一層感じられる瞬間だった。
楽器を置くと皆、普通の女の子に戻る。
翌日がコンクールということを忘れているかのような笑顔が弾ける。
明るく学年の壁もほとんどなく、人並みに人見知り。
それが楽器を持っていない時の彼女たちの印象だ。
十日町を囲む山々に太陽が吸い込まれていく頃、明日への意気込みを胸に、生徒たちは学校を後にしていった。 |
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■2011年8月2日(火)
盆地特有の暑さが体にまとわりつく。
早朝にも関わらず、汗を滲ませながら、楽器搬出の準備を生徒たちが進める。
生徒の装いは、昨日のシャージ、裸足スタイルから、白シャツ・黒パンツといった装いに変わり、心なしか表情が引き締まっているように見えた。 |
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楽器搬出を済ませた一行は市内にある多目的ホールへ向かう。
ここで最終リハーサルを行った。
黙々と練習に励む面々。 |
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昼食を挟み、再びバスで1時間程かけて新潟市内にあるコンクール会場へ向かう。
「第52回新潟県吹奏楽コンクール」、これが彼らが挑む、最後の大会だ。
会場に到着すると「戦いに来たんだ」という意識が彼らのムードを変えていった。
他校の演奏をチェックすることもなく、自分たちの楽器の手入れに終始する。
そして、早々とリハーサル室へ通された。 |
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いよいよ本番直前。
部長のシオリを持つ手が震えている。
今までなかったことだが、カメラを嫌がるメンバーも出て来た。
今回の撮影の中で最も彼らがナーバスになっていた瞬間だった。
そんな彼らのステージに向かう後ろ姿を、見送った。 |
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たった18人での演奏が始まる。
出足は順調とは言えなかった。
緊張のせいだろうか、最初の一音に力を感じられなかった。
しかし、中盤にさしかかると徐々に自分たちのペースを持ち直していく。
終盤になる頃には、ステージの半分にも満たない見た目のスケールとは裏腹に、十日町総合高校特有の力強い躍動感が会場を制圧し始める。
我々がさっきまで知っていた彼らではなくなっていた。
「他のチームの約半分の人数とは思えない」
そう思えるほどの音の強さがそこにはあった。 |
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■演奏を終えて
演奏を終えた彼らの元に一目散に向かう。
「楽しかった」
そこで見た彼らは、今回の撮影で一番の笑顔だった。
後悔も無い。
そんな瞬間の後は、もしかしたら一番の笑顔が待っているのかもしれない。
彼らの姿を見て、そう強く感じた。 |
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■結果発表
この大会の先にある西関東大会へ進めるのは、上位4チーム。
果たして新潟県十日町高校吹奏楽部は、上位4チームに入ることができたのか…? |
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