今夜の授業を職員のいとかんが振り返り!
今週のSCHOOL OF LOCK!は様々な事でしんどい思いをしている生徒の声を聞いていく授業『しんどー相談室』をお届け。
初日の今夜は『ヤングケアラーでしんどい』。「ヤングケアラー」とは本当だったら大人がやるはずの家事・介護・兄弟の世話を大人に代わってやっていている18歳未満の生徒の事。
もしかしたら自分はヤングケアラーかもしれない。ヤングケアラーでしんどい思いをしている。ヤングケアラーなので友達と遊ぶ時間がない。進路を変えようと思っている。そんな生徒の声を聞いていきました
電話を繋いだのは……
父子家庭で家事と学業の両立が大変だという【長崎県 15歳 ラジオネーム エクレア】
小2の頃から父子家庭となったRN:エクレア。自身の勉強と両立しながら、家族の料理を作ったり、妹弟の宿題を教える毎日。テスト前に勉強に時間がさけなかったり、友達の遊びの誘いを断らなければならなかったりと、生活にも弊害が出てきているという。そんなRN:エクレアの将来の夢は、エステティシャンになること!未来を見据えて頑張るエクレアに対し、校長教頭がエールを送っていきました。
そして、認知症の祖母のお世話に疲れているという【岐阜県 16歳 ラジオネーム リをン】
去年のゴールデンウィークから認知症の祖母との同居が始まり、オンライン授業を受けながらのお世話が始まったというRN:リをン。家庭内での介護を押し付けが増えてきていて、なぜ自分だけやらなければならないんだという葛藤も感じ始めている。そんなリをンだが、親友に相談したことでとても気が楽になった。こういう重めの相談でも正直に話すことが大切なんだと気がついたと話してくれた。
最後は、障がいを持った弟のために、特別支援学校の先生を目指す元ヤングケアラーの【茨城県 23歳 ラジオネーム しらす】
生まれつき障がいのある寝たきりの弟のため、学校と両立しながら、夜中ずっとお世話をしていたというしらす。
人工呼吸器の確認やおむつ替えなど毎日2時間睡眠でお世話をしていたという。大学1年の頃、弟は他界。苦しい生活だったけれども楽しいことも多く、今は弟のくれた夢を背負い『特別支援学校の先生』を目指していると力強く答えてくれた。
そんな今夜の授業はradikoのタイムフリーで聴きなおすことができます。ぜひ再出席してみてください
しんどー相談室1日目。君の今の“しんどい”を聞かせて
『 しんどい 』
さかた校長「理由は様々だとしても、今しんどいなぁって思っている生徒、どれぐらいいるんだろうかね。掲示板を見てても、『学校行きたくないな…』とか、『コロナのせいで大会がまた中止になってしんどいな…』とか、『なかなか思うように友達とうまくいかなくてしんどいな…』とか。毎日、しんどいなぁって思いを抱えた生徒達の書き込みが、SCHOOL OF LOCK!の
『学校掲示板』に書き込まれてる。それで今週のSCHOOL OF LOCK!は4日間、“今、しんどい”という思いを抱えている生徒に向けて、
『しんどー相談室』を行いたいと思う」
こもり教頭「進路相談室ではなく、“しんどー相談室”。今しんどいなぁと思っている生徒の君の話を聞いていきます」
さかた校長「今回は4日間、毎日授業テーマを決めてお届けしていきます」
まず今日は、
『ヤングケアラーでしんどい』
火曜日が、
『学校に行くのがしんどい』
水曜日が、
『貧困でしんどい』
木曜日が、
『差別でしんどい』
さかた校長「この4つについてしんどい生徒と、毎日話をしていこうと思う。今挙げたしんどいこと、それらすべてに対して僕達が、特効薬ではないけれども…上手く話すことができるわけじゃ決してないんだけれども、それでも僕達は君と話がしたいと思ってる。そして、君達が普段何も言えなくて周りに話せていなかったりする“君の本当の心の声”を聞きたいと思ってる。今日も、生徒の君の声を聞かせて欲しい!」
♪ 愛を知るまでは / あいみょん
さかた校長「しんどー相談室。今夜は、
『ヤングケアラーでしんどい』。これは僕達、
SCHOOL OF LOCK!で一度授業をお届けして、そこで初めて知った言葉なんだけれども…。“ヤングケアラー”というのは、本当だったら大人がやるはずだとされていることを、大人の代わりにやっている18歳未満の子ども達のことです」
こもり教頭「より具体的に言うと、“病気の家族の代わりに家事や介護をしている”、“親の代わりに兄弟の世話をしている”、“親の代わりにバイトをして生活を支えている”…。他にもいろいろな状態があると思います」
さかた校長「こんな風に、本来10代である生徒の君がやる必要がなくていいことを大人の代わりにやらざるを得ない、それがヤングケアラーに該当します」
こもり教頭「
全国の10代の4%〜6%がヤングケアラーに該当する状態にあると言われています」
さかた校長「
前回の授業(8月3日放送分)で、ヤングケアラー問題を取材している朝日新聞の畑山記者と一緒にお届けして、僕達が知ったヤングケアラーの問題点は、“家族の介護に追われることで勉強時間や友人との時間が取れない”、“進路を変えざるを得ない”、“恥ずかしくて周りに相談ができない”、“家庭内のことだから実態が把握しづらい”、“子ども達がそのこと(ケア)が当たり前だと思っていて声をあげづらい”、“どこに助けを求めていいかわからない”。…他にも、家族のことが好きで大切だからこそ、僕や私がバイトをしたりいろんなケアをすることで今家族のバランスが成り立ってると、当事者の君達は知ってるから、なかなか外に、“つらい”と言いづらい仕組みというか…。そういう風になってるから、本当に優しい故に背負いすぎてしまう難しさがあって」
こもり教頭「周りの友達だったり、普段学校で接している中では気付きづらいというのも、この間の授業を経て思ったところです。掲示板とかでも『友達がもしかしたらヤングケアラーだったかもしれません』みたいな書き込みをくれた生徒もいたし、実態を掴みづらいっていうのは1つの問題点ではあるんですけど。『ヤングケアラー』って言葉自体、僕も授業で初めて知りましたし。この言葉自体を知っていくことで、自分の中で引き出しも増えて行く気がしたので、友達に対して“そうかも”って思える気持ちも、どこかで持っておいたほうがいいなというのも感じましたね」
さかた校長「言葉を知るだけでも、ちょっとした時に“ひょっとしたら…”って思うところ、違和感が、ヤングケアラーに紐づくと言うかね。何よりも、普段楽しい書き込みをしている生徒達が、ヤングケアラーとして電話に出てきて“うちは実はこういう感じなんです”って言うのにも、俺達もびっくりした。普段隠して笑顔作ってくれてたのかって思うと、早く気付いてあげたらよかったな…というのもあるし」
家の家事は私と妹と弟で分けて全て行い、兄弟の世話は全て私が見ています。父子家庭なので仕方ないのですが…
エクレア
15歳/長崎県
エクレア 長崎県 15歳 女性
さかた校長「エクレア、ありがとう。そして、久しぶりやねぇ」
こもり教頭「
『キュンキュンしりとり』以来だよね?」
エクレア「そうです」
さかた校長「改めて、15歳…学年聞いてもいいか?」
エクレア「高校1年生です」
さかた校長「父子家庭の状態で、家事も妹と弟と分担して、お世話もやってるなら…すげぇ大変やねぇ」
エクレア「はい。でも、楽しくやってます」
さかた校長「いつぐらいからこういう状況になったのかな?」
エクレア「小学2年生の時に父子家庭になって、その時はおばあちゃんのお手伝いとして家事をしてたんですけど、おばあちゃんの年齢とか体力面を考えて去年から完全に自分達でやるようになりました」
こもり教頭「おばあちゃんは一緒に住んでるの?」
エクレア「今は一緒に住んでないです」
さかた校長「まだエクレアが高校1年生だから…妹と弟はいくつ?」
エクレア「妹が中学1年生で、弟が小学6年生です」
さかた校長「そうか。エクレアが一番上だから、しっかりせないかん立場ではあるもんなぁ。日々の生活の中で、家事や学校はどんな感じ?」
エクレア「学校は、スクールバスで1時間半かかるちょっと遠いところに通っているので、朝からは何にもできないんですけど…。学校から帰ってきてからご飯を作ったり、掃除とか洗濯をやってます」
さかた校長「1時間半バスでかかるってことは、そもそもめちゃくちゃ早起きだよな?」
エクレア「5時半起きです」
こもり教頭「早いねぇ! まだ家族のみんなは寝てる頃?」
エクレア「みんな爆睡してます」
さかた校長「(家事の)分担を兄弟でしてるっていうけど、まだ小さいからほぼほぼ(一番上の仕事になるよ)ねぇ」
エクレア「自分がやる中でちょっとした手伝いとかをしてもらったり、皿洗いは日にちごとに分けてやってます」
さかた校長「そういうのも、エクレアが分担とか決めたりして?」
エクレア「はい」
さかた校長「一通り家事をやって、落ち着いて自分の時間ができるのって何時位なの?」
エクレア「(夜の)10時半とか」
さかた校長「ちょうど(時間的に)今だ。めちゃめちゃ大変な中、ごめんな」
こもり教頭「ありがとう。料理とかはどうしてるの?」
エクレア「自分たちでやってます」
こもり教頭「お父さんはお仕事に出て、いつも何時位に帰ってくる?」
エクレア「20時から21時位に帰ってきます」
こもり教頭「じゃあ一緒に夜ご飯食べるとか、時間が合うことも少ないんじゃない?」
エクレア「少ないです」
さかた校長「ちなみにエクレア、これは得意っていう料理とかあるの?」
エクレア「生姜焼きが得意です!」
こもり教頭「いいじゃん!」
さかた校長「うわ〜! 生姜焼きなんて全員大好きだし、お父さんも喜ぶっしょ?」
エクレア「喜んで食べてくれます」
さかた校長「そうかぁ! 毎日の中で、今エクレアが“ちょっと不安だな”みたいに思ってることはあるの?」
エクレア「家事とかをやってるから、テストとかになった時に勉強する時間があまり取れなかったりするので…」
こもり教頭「中期、期末とかになってくると、より勉強量も増やさないと、復習して…とかってのもあるしね」
さかた校長「今、部活とかはやれてないのかな?」
エクレア「部活は入ってないです」
さかた校長「そうだよなぁ。帰りも遅くなるし、ご飯の支度もせないかんのならね…」
こもり教頭「高校1年生、環境の変化には慣れてきた頃なのかな?」
エクレア「だいぶ慣れてはきました」
こもり教頭「でもテストともなると、さすがに時間を作って自分でスケジュール立てて…っていうのも難しいよね」
さかた校長「友達とは放課後なかなか遊びに行けなかったりもすると思うし…休日とかも大変なのかな?」
エクレア「平日にできないこととかを休日にやらないといけないので、誘ってもらってもなかなか遊びに行けなかったりしてます」
さかた校長「そうだよなぁ。だって、料理とか掃除も、自分の好きなことを我慢してその時間をあてるとかでもないもんな」
こもり教頭「エクレアは友達にはさ、家の状況とかって話したの?」
エクレア「仲の良い子達はみんな知ってて、相談とかにも乗ってくれます。すごく救われてます」
さかた校長「それは良かったな! 愚痴じゃないけど、ちょっとしたこともこぼせなかったら、マジでしんど過ぎるもんな。お父さんにはそういうことって話せてたりするの?」
エクレア「お父さんは、自分がちょっと話しづらくて、きついなぁって(気持ちに)なってたらすぐ気付いてくれて、“どうした?”って話しかけてくれるので、ものすごく助かってます」
さかた校長「これ、もしお父さんから“どうした? 大丈夫か”って言葉がなかったら、自分から“今きついんだよね”って言えてたかな?」
エクレア「たぶん、言えてなかったと思います」
さかた校長「やっぱり言いづらさがある?」
エクレア「はい。お父さんも仕事とかで疲れてるのに、自分が言っても大丈夫なのかな…とか考えてしまって」
さかた校長「頑張って働いてくれてる姿を、一番知ってるもんな。その分言いづらいけども、お父さんが気付いてきっかけをくれて、そこで話せてるから。エクレアのことを心配したり、ちょっとした表情の違いで気付いてくれる友達もおるからね。そういった環境でいることは、すげぇ大変なしんどい状況の中でも功名というか、俺達も嬉しいな」
こもり教頭「エクレアの中ではさ、今後この生活が続いてくってなった時に、不安だなと思うこととかはあるの?」
エクレア「将来、都会の方に出て働きたいんですけど…やっぱり家のことを考えたら地元に残って働いた方がいいのかなって、冷静になってます」
さかた校長「う〜ん…。ちなみに、将来どういった職業に就きたいとかあるの?」
エクレア「
エステティシャンになりたくて 」
さかた校長「おお! かっこいいね! その夢って、ずいぶん前から持ってたの?」
エクレア「中学2年生の時、職場体験に行って。その時にエステティシャンの方に話を聞いて、なりたいなって思って…。その時に決めました」
さかた校長「地元で(エステティシャンになる)ってことも可能性はあるけども、いろんな幅を考えた時に都会の方がいいかもしれんから、なかなかね…」
こもり教頭「それこそ、専門学校に通いたいとかってなった時は、都心の方に学校が(集中して)あったりってこともあるからね…。選択肢は増えてくる中で、エクレアが大学生になる時にやっと妹が高校生になるくらいの歳だもんね。そうなると、自分が家を出て…みたいなことは、ちょっと考えづらいなぁっていう不安もある?」
エクレア「めっちゃあります」
さかた校長「今しんどい思いをしているからこそ、これをまた妹や弟たちに(味わわせたくない)って思うもんなぁ。でもね、せっかくなりたい夢があって、職場体験でいろんな話を聞いて、すげぇキラキラ見えたと思うんだよ。そういう風になりてぇなって思ったエクレアの心っていうのはさ、唯一無二の、君が思った素晴らしいことだから…絶対にね、叶えて欲しいんよなぁ」
エクレア「はい」
さかた校長「その為にも、それこそお父さんにだったり、まだ小さいけれども兄弟にも、話さなくちゃいけない時がもちろん来るし。エクレアが優しくて、家族の為にしっかり生きてくれてるっていうのはわかってるから
少しだけワガママを言っても良いからさ。 進路を決める時になったら、思い切って(ワガママを)言って良いと思うな!」
エクレア「…はい!」
さかた校長「『キュンキュンしりとり』もそうだけどさ、エクレアの発想力だったり笑顔だったりさ、すげぇ元気になると思うのよ! お客さんも! その時には思いを伝えて、俺と教頭を美肌にして欲しいね」
こもり教頭「教頭は小顔になりたい」
一同「(笑)」
さかた校長「俺、肌つやつやにして欲しい(笑)」
こもり教頭「いつか絶対に自分の進路について、学校でも向き合わなきゃいけないし、ご家族とも話さなきゃいけないけど。それ以前に、エクレアが思ってることを口に出せてる状況なのであれば、夢を語ることなんて、絶対ワガママなことなんかじゃないと思うから! だから、言葉にして欲しいなって思う。それ(夢)をどうこうするっていうのは現実的な問題があるからその時考えなきゃいけないけど、そこに至るまでに我慢する必要はないと思う! 言葉にするのは全然ワガママじゃないから。
言葉にできる、自分のマインドっていうのを大切にして欲しいなって思う」
さかた校長「エクレア、(やっと家事が)落ち着くこの時間帯に電話してくれてありがとな。また明日も早いだろうしな。ゆっくり寝てね。家族の為に美味しい生姜焼きも作ってくれよ! 話してくれて、ありがとう!!」
こもり教頭「ありがとね!!」
エクレア「ありがとうございました」
♪ Funny Bunny / Uru
さかた校長「今、お父さんが気付いてあげたり、“どうなの”と声掛けしてるけど、そういう言葉がなければ自分からは話すことができなかったっていうのが、優しく家族を思っているからこその言葉だなぁと思ったな。本当はね、そういうのも(声掛けや働きかけが)なくても、言葉を発してもいいのに…。そういうところの難しさっていうのが、このヤングケアラーの中にもあるから、発言しやすいような環境だったり状況に、僕たち大人が出来たらいいなと思うな」
しんどー相談室、今夜は
『ヤングケアラーでしんどい』。
■
ヤングケアラー
コロナが流行しだしてから私は認知症の祖母と住むようになりました。もう1年以上たつことになりますが、まだ慣れません。
「私はヤングケアラーです。助けて欲しい。」
なんてまわりには言えません。ヤングケアラーなんて言葉を知っている人は少ないし、同級生とかと相談しにくい内容だからです。それに、私が本当に「ヤングケアラー」なのかも怪しいからです。
祖母の身の回りのことを全て私がやっているわけではありません。兄がやってくれることもあります。でも、私がいれば親も兄も私を「頼る」というか、「押し付ける」というかって感じで。
認知症ってなってしまった人の家族だけでなく本人もつらいものだとは知っています。でも、相手を傷つけないようにすれば、自分が傷つくし、自分を傷つけないようにすれば相手が傷つくし…
っとどうしようもなくなりつつあります。
それに、コロナが広がったことで私の学校はオンライン授業になりました。その結果、祖母が家にいる状態で授業を受けなくてはならなくなりました。一緒にいる時間が増えたので、より疲れています。
限界です。でももう少し頑張らなくてはいけません。
リをン
女性/16歳/岐阜県
2021-08-03 17:42
リをン 岐阜県 16歳 女性
さかた校長「リをン! いつも書き込みもありがとな。おばあちゃんのお世話だったりしているのはいつぐらいからなのかな?」
リをン「去年のゴールデンウィークからです」
さかた校長「おばあちゃんの症状は急にひどくなったのかな?」
リをン「もともと、コロナ禍になる前から少しずつですけど認知症の症状が出ていて。コロナ禍になってから急にひどくなって、本当に身の周りのことをすぐに忘れてしまう感じです。それで一旦病院に行ったら認知症の診断が出て、一緒に住むことになりました」
さかた校長「そうか…。他、家族構成はどうなってるんだろう?」
リをン「母と父と兄と祖母と私の、5人です」
さかた校長「おばあちゃんのお世話っていうのは家族みんなでやってる感じなのかな?」
リをン「ほとんど私か、お兄ちゃんだったりします」
さかた校長「親御さんは2人とも働いてて家を出ている感じなのかな?」
リをン「はい、共働きなので」
さかた校長「(親御さんは)結構朝早く出て、帰りは遅いかな?」
リをン「勤務が週ごとに変わったりして…」
こもり教頭「あぁ。ちょっと不規則な感じなんだ」
さかた校長「平日の学校の日とかはどうしてるの?」
リをン「(祖母が)デイサービスに行ってる日もあって、日中いない日もあるんですけど、曜日によってはデイサービスがなかったりするので。そういう日はオンライン授業を受けながら一緒にいる感じです」
さかた校長「そうかぁ…。まだオンライン授業自体も慣れてないというか、普通の授業を学校で受けるよりもすごく難しいやん。それをおばあちゃんを看ながらっていうと…大変やろ? 授業に集中ってできるのかな?」
リをン「大変ですね。(集中)できないですね」
こもり教頭「家にいると、もっといろいろ考えちゃうもんね。目に見えちゃうがゆえにね」
さかた校長「お兄ちゃんも学生なのかな?」
リをン「大学4年生です」
さかた校長「じゃあその辺の、これは担当しますとか(分担)って言うのは話せたりするの?」
リをン「(話せ)ないですね…」
こもり教頭「“気付いた方がやってよ”みたいな感じ? それとも“リをンやっといてよ”みたいな感じで言われることの方が多いのかな?」
リをン「そうですね。最初の方は、“これやっといて”とか言ってたんですけど、最近はもう“やっといてくれるよね?”みたいな感じで」
さかた校長「なるほどな。そこの相談もなく、結構“あれ、私だけが…”みたいな感じなのかな。そういうのは、お父さんお母さんには話せたりはするの?」
リをン「(話せたり)しないです」
さかた校長「うーん…。話せない理由はある?」
リをン「夜になったら母は帰って来るけど、祖母がいろいろ忘れちゃうので、それでケンカすることがあって…。母もいっぱいいっぱいな感じなので、お世話とかでゴタゴタして相談したら、余計に荷物が増えちゃうのかなって思って…」
さかた校長「そうか…。お母さんたちもいっぱいいっぱいになってるところを、リをンが気付けてるからね。その分、言いづらいもんな」
こもり教頭「そういう状態の時にそういうこと言うと、そんなつもりで言ったわけじゃないけど、やりたくないからワガママ言ってるように見えるのも、すごい嫌だしね」
リをン「はい。嫌です」
さかた校長「みんなで支え合いたい気持ちはあるのに、すれ違うというか…なぁ」
こもり教頭「そう。意図していない伝わり方と見え方しちゃう時があるからさ。いろいろ考えちゃうよね」
さかた校長「落ち着いた時に話そうと思っても、ずるずるずるずるなって…。タイミングを逃してしまってしんどいってこともあるけんなぁ。休みの日だったり、自分の時間を好きに使えてるって時間はあるのかな?」
リをン「兄がたまーにやってくれる時もあるので、その時は自分の時間が作れます」
さかた校長「そういう状態に今あるって、周りの友達とかに話したりできるの?」
リをン「一度だけ、親友に話したことがあります」
さかた校長「話してみてどうだった?」
リをン「こういう話ってしていいのかわからなくて、ずっと一人で悩んでたんですけど…。
本当に優しく聞いてくれて心が楽になったっていうか、すごく気が楽になりました」
さかた校長「(それまで)話せなかったのは、家族内のことだからっていうのもあったのかな?」
リをン「それもあるし、“そっか”で終わる気もしていたので。“そっか”って言われるのは見放されてる感じがして、言われるのが怖かったので…」
さかた校長「思うような反応がなかった時にどうしようって(思ってたんだ)。そのせいで大好きな友達を嫌いになりたくないもんな」
こもり教頭「ね。距離感できちゃうんじゃないかって不安にも思っちゃうしね」
さかた校長「でもその親友は、話聞いてくれたんやね。そこからは結構話せたりするの?」
リをン「ちょくちょく。何かあるたびに話をしたり、
親友の方から“最近どう?”とか“大丈夫?”とか聞いてくれることもあるので」
さかた校長「そりゃ嬉しいな! 聞いてくれるっていうのは、リをン的にも話しやすいもんな」
こもり教頭「自分から“いつもしんどいんだよ、なんなんだよ”っていうのをわざわざ言う必要はきっとないんだけど、リをンは本当に心が詰まっちゃったりとか(した時は)それを口にするのは悪いことでは絶対ないと思いますし。今、身近に聞いてくれるお友達がいるんだとするならば、頼れる時に、自分が必要としてる言葉を心から出すっていうことは、一個の選択肢として全然間違ってないと思う。
だから今後、きゅっとつらくなる時があるかもしれないけど、その時にも絶対口にして良いと思うし。もしかしたら今後、他の人に話した時に自分の思ってたこととは違う感じの反応になっちゃうかもしんないけど、それも一つ、自分が伝えていくという意味でも大切なことだと思うから。楽になった、話してよかったなって思う気持ちは本当に素直に受け取っていいんじゃないかなって思うね」
さかた校長「友達にもそうだし、タイミングを見てお母さんにもね、全然話していいことだから、リをン!」
リをン「はい」
さかた校長「一人でそんな背負いこまんでいいけんな。気持ちが少しでも軽くなることを俺たちは願ってるから。ここでも、こういう風に話してくれて、それがきっかけとなって生徒のみんなもいろいろ思うことになったし。ありがとな、話してくれて」
こもり教頭「ありがとう!」
リをン「こちらこそありがとうございます」
続いて話を聞かせてくれるのは…。
18歳未満ではないのですが、障害のある弟の世話をしていた元ヤングケアラーです。現在は自分の経験を活かせるのではないかと思い、特別支援学校の教員を目指しています。
私の弟は重度の障害を持っていました。高校生の時、呼吸器や酸素低下を知らせるアラームで目を覚まし、夜通し弟の介護をしていました。その為、授業ではほぼ毎時間寝てしまい、先生から呼び出しをされることもありましたが、弟を言い訳にしたくなかったのでそれを周囲に言えませんでした。
弟は3年前に他界しましたが、今となってはその時の苦労は思い出の一つですし、その経験が将来に活きてくると、前向きに捉えております。
しらす
23歳/茨城県
しらす 茨城県 23歳 女性
さかた校長「今23歳ということは…しらすは学生?」
しらす「一浪しておりまして、大学4年生です」
さかた校長「弟さんの世話をしていたっていうのは、いつぐらいの期間なんだろう?」
しらす「弟が生まれてから私が大学1年生の時までなので、13年間ですね」
さかた校長「家族との生活はどういった暮らしだった?」
しらす「私は主に夜中に弟の介護をしていました。母が昼間は弟の介護をしているので、夜勤をしておりまして、父は昼間働いているので夜は寝ていました」
さかた校長「夜中っていうのは何時ぐらいのこと?」
しらす「夜の10時から、寝れない時は朝の4時ぐらいまで介護してたこともありましたね。2時間くらい寝て学校に行くっていうのは結構ありました」
さかた校長「そうか…。お世話をする、具体的な内容はどういったことをしてたんだろう?」
しらす「弟は人工呼吸器をつけていたので、人工呼吸器が外れてしまうと呼吸ができなくなるから、ずっと呼吸器ついてるかなって確認をしたりとか。オムツを替えたりとか、ご飯や水分を口から摂れなかったので、鼻にチューブを入れてそこから栄養を入れていたんですが、たまにチューブが外れてしまった時は夜通し…2時間くらい鼻チューブを入れるのが、とても大変でした」
こもり教頭「僕、前に職場体験みたいなので看護学校に行かせていただいたことがあって。そこで実習生と一緒に管を入れる実習に参加したことがあるんです。2時間格闘したって話を聞いて、僕は実際の経験はないけど(実習の)体験があるので、これは本当に夜通しかかるなって(それくらい難しいと)すごく感じる…」
さかた校長「弟さんが寝返りを打ったり、ふとした手の動きとかで外れたり…という心配の可能性が、ずっと続くわけやから」
しらす「なので、あんまり深くは眠れていなかったと記憶してます。弟は6歳下なので、私が6歳の時に生まれたんですが、鼻チューブとかをやり始めたのは(私が)中学、高校生くらいの時ですかね」
さかた校長「自分の学校の授業だったり、疲れてたり、いろいろしなくちゃいけないことがある中でお世話をしてて、しらす的に大変だったことは?」
しらす「睡眠時間が少なかったので、先ほど出ていたRN エクレアさんとかも言ってましたが、テスト勉強とかがあんまり出来なくて。本当に眠い時は模試とかも10分くらいしか解けなくて後全部寝てる、みたいな感じで先生に呼び出されたりしてました」
さかた校長「そりゃそうだよね…。また普通の生活ではない2時間だからなぁ。先生も(寝てしまった)本当のところの理由は知らないわけやん? そういうのって言えてたりしたの?」
しらす「弟を言い訳にしたくなかったので、先生には言えませんでした」
さかた校長「別にね、それはちゃんとした事実だから、悪いことでもなんでもないんだけど。しらすの弟さんを思う気持ちとかもあるし、言い訳にしたくないのはあるもんな」
しらす「
“気を遣わせないかな”っていうのは、ヤングケアラーの子はみんな口を揃えて言うことだと思っていて。私も同じように、誰かに、大人に言うことで気を遣わせちゃうんじゃないかって不安がありました」
さかた校長「そういう不安は、お父さんお母さんには話せなかったかな?」
しらす「話せないです。今も、あの時はこう思ってたよ、ということはあんまり言えてないです」
こもり教頭「でも、現実問題として2時間しか寝てなくて授業中寝ちゃうとか、学校は平日あるわけじゃん。続いていくと、自分の中でも葛藤とかって生まれなかったのかな?」
しらす「自分自身はそれが日常になっていたので、そこまで自分が苦労してるという風にはその時はあんまり感じませんでした」
こもり教頭「それ(自分の苦労)よりかは、それを言ってしまうことで誰かに背負わせてしまうって気持ちの方が強かったのかな?」
しらす「そうですね。母とか父も頑張っているので、私が心配かけたくないって部分もあったんだと思います」
さかた校長「みんな家族は知ってるもんね。お父さんお母さんの頑張りだったり、お父さんお母さんもしらすが頑張ってくれてるのも知ってるしな。友達とかにはどうだった?」
しらす「仲の良い友達とかには言えていたので、やっぱり人に話すと楽になるっていうのはすごい感じました」
さかた校長「そうだよなぁ。きっかけは、友達には自分から話せていたの?」
しらす「たまたまなんですが、高校で仲良かった友達が幼稚園からずっと仲が良い友達でもあったので、私の家族のこともよく知っている友達が周りにたくさんいたってところで、話しやすい環境ではあったのかなと思ってます」
さかた校長「素敵な友達がおったんやね。弟さんへの愛だったり、家族みんなが(苦労を)抱えてる中でも…現実問題にしらす、むちゃくちゃしんどかったもんね」
しらす「今思うと、大変だったんじゃないかなと思います」
さかた校長「今、特別支援学校の教員を目指してるの?」
しらす「そうですね。今大学4年生なんですが、
特別支援学校の先生を目指す学部に入って勉強しています」
こもり教頭「そのきっかけは、弟さんと一緒に過ごした経験?」
しらす「そうですね。弟の(通っていた)特別支援学校の先生との関わりとかを見て、私も目指したいなって思って。高校2年生くらいの時に (先生に)なろうと思って、頑張ってます」
さかた校長「すげぇな。素敵な夢を見つけて、しらすが見てきた景色の中から自分で決めたことやからね。日々をちゃんと戦って乗り越えて、今こうしてしっかり夢を目指しているし。今4年生だから、特別支援学校の教員になるってところはもう近いもんな!」
しらす「はい。昨日、教員採用試験を受けまして、10月に発表なのでドキドキで待っているところです」
さかた校長「おぉ! そうか。とにかくお疲れ様! 手応え的にはどうだった?」
しらす「やはり私には、弟との経験という大きな武器があるので、それが面接でも活きていたので、私的には頑張れたかなと思っています!」
さかた校長「うん! うん! ちゃんと思いはぶつけられたと思うし、弟さんと一緒に頑張った日々でもあるからな! (発表は)10月かぁ! めちゃくちゃ祈らせてもらうよ! その夢の先で、しらすが得た優しさであったりをいっぱいいろんな人たちのために使って欲しいなと思うし。俺は絶対なれると思うし、なると思うから!」
しらす「はい!」
さかた校長「ありがとね、今日は話してくれて」
こもり教頭「ありがとう!」
さかた校長「絶対祈ってるからね!」
しらす「ありがとうございます!」
♪ 正夢 / スピッツ
私の家族は、父が右半身が動かなくて(車椅子)、母がフィリピン人であまり日本語がうまくありません。車椅子を押したり、食事の用意だったりをするのですが、それが日常なのでしっかり考えることがありませんでした。たまに、他の人はこんなことしないんだろうなと思います。でもそれはしょうがないことなので、こんなことを考える自分が嫌になってしまいます。
あと、中3なので高校は行きたいところに行っていいと言われていますが、やっぱり近いところが良いのかなと考えてしまいます。家族は大事だし、自分のやりたいことは諦めたくないというふたつの思いがぶつかっています。
肉まんに押しつぶしたタピオカ
女性/15歳/長野県
さかた校長「…もちろん、家族の“進路は好きに(選んで)良いよ”って思いもあるけど、な。葛藤するね。そんなこと言ってくれる家族が大好きだという思いがあるゆえにね」
こもり教頭「そうですね。好きがゆえに…。(家族に対して)自分ができることをやりたいって思うじゃないですか。言葉にして相談できると、またちょっと変わってくるのかなっていうのも思いますね」
さかた校長「今こういう風に思ってる、悩んでるっていうことも含めて、全部言葉にして話せたらいいな」
今日の黒板
『 君の一言 』
さかた校長「今日生徒のみんなの話を聞いて、本当にいろんな思いの中でしんどいという声をあげられない子がいて。やっぱり自分から話しかける声をあげるってすごい難しくて、でもみんなが言ってたのは声をあげられない子の隣には今聞いている君がいて。友達の中にちゃんと君がいて。
だからちょっとだけ周りを見渡してみて、君の友達がちょっといつもと違うなっていうふうに思ったら、“どうしたの?”って声をかけてほしいと思っている。そのきっかけになれば、君の大切な友達が何か思いを吐き出せるきっかけになると思うし、すごくそのことで“どうしたの?”以外の言葉が見つからないかもしれないけど、聞くだけでも救われることは絶対にあるから、どうか君の大切な友達を楽にするための君の一言を待ってる」
♪ 言葉はさんかく こころは四角 Triangle / くるり
こもり教頭「校長の黒板も聞いた上で、今日聞いた“友達”ってワードは、ラジオの向こうから聴こえた言葉ではないと思っていて。誰かを助けられる一言を言えるのって、
どこかの誰じゃなくて自分だと思うし、君だと思う。だから、何か感じたことっていうのを言葉にしたいなって思いました」
さかた校長「また今日思ったことだったり、素直なことだったり、考えたこととかを掲示板に書いてもらったら、そこからまたきっかけにいろんな話ができると思うから。ぜひ、これを聴いた生徒達、次は本音のところを掲示板に書いて欲しいと思う!」
さかた校長「SCHOOL OF LOCK!は明日夜10時に再び開校!」
こもり教頭「起立! …礼!」
さかた校長・こもり教頭「また明日ーーーーー!!」
さかた校長の放送後記
君の優しい想いが大切な人のきっかけになる。
こもり教頭の放送後記
何も出来ないけどそれでも君の声を聴かせて欲しい。
Music
2021.8.30 PLAYLIST
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「オンライン授業を受けながら認知症の祖母を介護」ヤングケアラーの声
ラジオの中の学校、TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」。8月最終週は、さまざまなことでしんどい思いをしている10代のリスナーの声を聞く『しんどー相談室』をお届けしています。初日の30日(月)の放送では『ヤングケアラーでしんどい』をテーマに、パーソナリティのさかた校長とこもり教頭が、リスナーの話を聞いていきました。そのなかから、自宅で認知症の祖母の介護をしているという、高1の女性リスナーとのやり取りを紹介します。