DJ MIXの授業(w/ AOKI takamasa) - 後編
サカナクション 2015.5.28 木曜日
山口「はい、授業を始めますから、席に着いて下さい。マンガを読んでいる生徒はマンガをしまいなさい。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いている生徒も一度閉じなさい。授業が始まりますよ。さて、今日もゲスト講師の方がいらっしゃっているので、早めに黒板を書きたいと思います。」
AOKI「ははは(笑)。やめてー(笑)。」
山口「(笑)今回もゲスト講師にAOKI takamasa先生をお招きして授業を行っていきます。よろしくお願いします。」
AOKI「よろしくお願いしますー。」
山口「先週聴いていない人もいるかと思いますので、AOKI先生の紹介をしたいと思うんですけど、AOKI先生はサカナクションの数々の曲のリミックスやリアレンジや、いろんな形で今も関わっていただいているんですけど。普段はダンスミュージックを作っているミュージシャンなんですね。フランスとドイツに住んでいらしゃっていて、トータルで何年くらいいらっしゃったんですか?」
AOKI「トータルで7年くらいですかね。」
山口「7年間。実際に海外へプレイをしに行っていて、日本との違いみたいなのって……もちろん、国が違うのでキャラクターも違うのは当たり前なんですけど。音楽に対する向き合い方だったり、接し方の違いで一番大きな部分はどんな所に感じますか?」
AOKI「あの……日本はやっぱり娯楽が多いと思うんですね。いろんな娯楽があるけれども。もちろんヨーロッパもいろんな娯楽があるんですけど、音楽が占める割合がすごい大きい気がするんですね。みんな普通に日々夜飲みに行って、踊りに行って、帰るっていう。テレビを見るよりも、よりそっちの方に重きがあって、音楽がより密接で近い存在というか。」
山口「なんか、ドイツのベルリンでは、国がクラブミュージックやクラブに対して助成金を出しているっていう話を聞いたりして。あれって、観光資源としてクラブミュージックだったり、クラブを認識しているということですよね。」
AOKI「ですよね。多分そうやんね。」
山口「実際に僕もドイツに行った時に、クラブ目当てで行きましたけど、そういう風に音楽を目当てにいろんな人が集まってくるってすごく良い交流があったりして、文化としてもすごく豊かになるような気がしますけど。多分、日本っていろんな音楽が混ざっていて、すごく世界的に見ても面白くなり得る国であるのに、何かクラブミュージックだったり、クラブに対する印象っていうのは、怖いとか、暗いとか、そういうものがあるんですけど、海外でもクラブに対してそういう印象を持っている人はいるんですか?暗いとか、怖いとか。」
AOKI「確かに暗いけれども(笑)、明るさ的には暗いですけど、みんなちょっとこう……発散するというかね。音楽を通して踊りながら表現するというか。自分の喜びを音楽を身体で表現するっていうのがより当たり前のような気がしますね。日本の方はみんな僕も含めてシャイな方が多いと思うので、踊ってええんかな、とか、踊ったらちょっと恥ずかしいかな、みたいな感じで思われる方も多いかもしれないけど。ヨーロッパ以外でもそうですけど、南米もそうやけど、みんなもっと積極的に自分を解放しているような気がして。踊りはやっぱり解放だと思うんですよね。それがみんな、より身近な存在のような気がしますね。」
山口「近日ね、実はAOKIさんとかRhizomatiksの真鍋(大度)さんとか、ANREALAGEの森永(邦彦)さんや、スタイリストの三田(真一)さんとか、いろんな人が集まって、ひとつのパーティみたいなことをやろうかなっていうのを企んでいるんですよね。10代のみんなも触れられるような形になんとかしてね。企んでいるので、是非それも楽しみにしていてください。」
■ 前回の授業に出席していない生徒の皆さん、まずは先週の放送後記をチェックしてください!
⇒2015年5月21日 『DJ MIXの授業(w/ AOKI takamasa) _ 前編』
山口「では、引き続き、今夜も “つなぎ” の授業をお届けしたいと思います。AOKI先生に、実際に曲と曲をつないでもらおうと思うんですけど、今日つないでもらう曲をちょっと教えていただきたいんですけど。」
AOKI「これはDARTRIIXという、op.disc から出ている、半野喜弘さんと田中フミヤさんのコラボレーション作品なんですけど。」
山口「op.discっていうレーベルですよね。分かりやすく言うと、ビクターとか、ソニーとか、レコード会社みたいなものですね。」
AOKI「そうですね。そこの、最近出た『Flying One Hand』っていうアルバムから「If Walk Alone」ってやつですね。」
「If Walk Alone」DARTRIIX
山口「イェーイ!これは、田中フミヤさんと半野喜弘さんが一緒に作った作品なんですね。すごい、子どもの声とか入ってる。すごいキックのリズムと、ピアノのすごく大きいリズムがひとつの曲に入っていて、なんかおしゃれですね。」
AOKI「ね。雰囲気がね。自由に明るく、自然に身体が動きだしてしまう雰囲気をずっと醸し出している音楽やと思うんですけどね。」
山口「しかも、優しい気持ちと踊るっていうのがすごい混ざっていて、これが自分の部屋で流れていたら、程よく、上げすぎないというか、浴びせすぎないで音楽を楽しめるサウンドになっていますね。」
AOKI「でも、キック自体はすごくパンチがあって、あったかいけど、どでかくないというか。キックっていうのは、この4つ。ドン、ドン、ドン、ドンってイーブンに入っています。」
山口「じゃあ、1曲目はこの半野さんと田中さんの……」
AOKI「DARTRIIXというユニット。」
山口「この曲からどの曲につないでもらうのか、もう一曲の方を。」
AOKI「次は、トーマス・メルキオール(Thomas Melchior)さんっていう、ドイツ人の方ですね。すごい良いおじさんです(笑)。」
山口「あ、お会いしたことがあるんですか?」
AOKI「はい、あります。田中フミヤさんとかともすごい仲良い方で。」
山口「あ、今聴いてもらった曲の。」
AOKI「そう。その方の、僕もすごい大好きな方です。」
「Choir」Melchior Productions Ltd
山口「これはさっきの曲に比べて陽気な感じがしますね。」
AOKI「うん。パーカッションも入っていますけど、また全然違うグルーヴがある曲ですよね。」
山口「では、先程のゆったりとしたピアノの中にキックの4つが入ることで優しい気分になる曲から、ちょっと陽気な気分のこの曲に移行すると。」
AOKI「そうですね。」
山口「移行する際には、つなぎとして、曲と曲が混ざっている瞬間があるわけですよ。それをこれから実践していただきましょう。」
AOKI「はい。トライしてみましょう。」
(♪「If Walk Alone」DARTRIIX が流れて……)
山口「今は1曲目だけが流れているんですね。」
AOKI「そうです。」
山口「今、1曲目のこの曲を流しながら、AOKIさんは2曲目をヘッドフォンで聴きながら、2つの曲が同じテンポになるように合わせていっているところですね。」
(♪ 「If I Walk Alone」に「Choir」が少しずつ混ざってきて……)
山口「これ2曲目が薄く、ちょっと流れ始めています。今、これは1曲目と2曲目が混ざって聞こえている状態。そしてEQっていう、高音、中音、低音っていう3つを調整できるボリュームみたいなのがあるんだけど、それでレンジを変えて、音の幅を調整して綺麗に混ざるようになっています。」
山口「AOKI先生、これで一旦2曲目の方をがっと下げていただいてもいいですか?」
AOKI「はい。」
(♪ミックスされている状態から「If I Walk Alone」だけを聴く)
山口「今、これは1曲目だけです。」
(♪ミックスされている状態から「Choir」だけを聴く)
山口「これが2曲目。そして……」
(♪ 「If I Walk Alone」と「Choir」がミックスされた状態)
山口「これが混ざった状態ですね。すごい自然ですね。気持ち良い。全く別のグルーヴになりますね、2曲が混ざると。」
AOKI「うん。」
山口「そして……さっきよりも低音が出てきましたね。低音っていうのは、低い音……キックの部分とか。だんだん、さっき鳴っていた大きいって言っていたピアノの音が聞こえなくなってきましたね。比重としては2曲目の方が大きくなっています。1曲目から2曲目の方がメインになってきましたね。」
(♪ そして「Choir」に完全に切り替わる)
山口「今、完全に2曲目だけになりました。今はもう、1曲目の音は出ていないですね、DARTRIIXの方は流れていない。……これ、生徒分かったかな?すごいナチュラルな変化でしたが。AOKI先生、ありがとうございました。」
AOKI「ありがとうございました。」
山口「どうですか?実際にこうやってラジオでやってみて。」
AOKI「いやー、緊張しますねー(笑)。でも、自分はまだまだビギナーなので、もっと上手いDJの方は、日本中、世界中にたくさんおられるので、是非そういう方々のプレイを是非現場で。心地いい爆音で聴いてもらって、解放していただきたいですね、自分を。解放して、踊って踊って、体感して欲しいです。自分で。」
山口「その、踊ることって、本当に何か、スポーツじゃないけど、それに近いような解放がありますよね。」
AOKI「ね。」
山口「実際に、僕はロックバンドとしてステージに立ってライブをするときに、みんなジャンプしたり一体感を持って踊るっていう、そういう楽しみ方をする人が多い中で、実際に自分たちがライブでAOKIさんたちと曲をやるようになってから、ラップトップで歌の無い音楽を流している時に、みんなが自由に踊っている姿が大分見えるようになってきて。みんな知らないだけで、遊びに行ったり、音楽に対して理解を深めていくと、もっと自由にひとつの音楽に限らずいろんな音楽の楽しみ方ができるんじゃないかなって。」
山口「僕らはAOKIさんと付き合うことでそういう機会を持てるようになったんですけど。実際にサカナクションの僕らの楽曲に参加してみてAOKIさん的にどうでした?」
AOKI「サカナクション自体、ダンスミュージックに意識があるっていうのを事前に教えていただいていたし、音楽からもすごいそれを感じ取れていたので、僕としてはやりやすかったですね。自分の欲しているものを伝えたら、そのままOKが来たりとか、共有できたりすることが多かったので、僕としてはすごい楽やった。楽しかったし。」
山口「実際にたくさんの人に関わった曲が広まっていっている様とかを、紅白(歌合戦)で僕らが演奏していたり、『SMAP×SMAP』に出た時に、AOKIさんと作った『Moment』のリミックス……あれ、AOKIさんとやりましたよね(笑)。あれとかも、テレビで流れたりするのを実際に見たわけじゃないですか。それって、作ったものが実際に影響するっていう様を実際に見てみて、どう思いました?」
AOKI「あー、でも、まさか自分の音楽がテレビでそんな感じで鳴るとは正直想像していなかったので……。昔は、自分の音楽っていうと特殊な音が多いので、テレビでは流せないって言われたことが多々あったんですけど。」
山口「え、自分の作った曲を?それは、流せないって言われた理由は何だったんですか?」
AOKI「その……エラー音なので、ノイズが結構入っていて、シャープなノイズ音が多いので、聞く人が、音が飛んでいるとか(笑)、ノイズが入っているとか、そういう苦情がくることが多かったりして(笑)。」
山口「ははは!(笑)」
AOKI「それは10年くらい前の話なんですけど。それで、自分の音楽をまさかSMAPの方が歌われるっていう(笑)。何じゃこれ、みたいな。えらい時代になったなと。感謝します。」
山口「あの時のトラックも正直ノイズ入ってますよね。」
AOKI「入れて入れてって言うから!(笑)」
山口「ははは!(笑) そうだった。もう、やっちゃいましょう!みたいな感じでしたよね。あれも僕の家で作ったんですよね。」
AOKI「そうそう。ええのほんまに!?って思った。ええの、こんなにノイズ入れてって(笑)。」
山口「ははは(笑)。僕らも、本当に、ああいう場でチャレンジする際に、AOKIさんと一緒に作った音楽が外に出せるっていうのはすごい良い経験でしたし、これからもいろんなことで遊んでいきたいと思うんですけど。汗かいて、そこで知らない人と一緒に自分の知らない音楽で、低音を感じる場所、クラブで踊るっていうのは、多分知らない自分の扉を開くひとつのエッセンスになるんじゃないかと思いますね。」
AOKI「自分が勝手に設定していたリミットを外していって、どんどん自由に自分を解放していくっていう、そのプロセスって、自分はすごい楽しかったし、もの凄いその結果楽になった。だからみんなも、周りを気にせずに踊りまくることで、それを体感してもらえるんちゃうかなと思いますね。」
山口「だし、フェスで楽しんでいる、楽しめている人たちは、クラブに行っても絶対に楽しめるはずだから。こういう風に、歌の無い音楽の聴き方だったり遊び方っていうのも知ると、ひょっとしたらもっと楽しい音楽ライフが送れるんじゃないかなと思います。AOKI takamasa先生、ありがとうございました!」
AOKI takamasa先生の音楽をもっと知りたい生徒は [ AOKI takamasa オフィシャルサイト]をチェックしてみよう!