山口探偵への挑戦状「アナログレコードブーム再燃の犯人を探せ!」
サカナクション 2020.11.13 金曜日
聴取期限 2020年11月20日(金)PM 10:00 まで
音楽にまつわる様々な謎を、名探偵・山口一郎が解決する授業『山口探偵への挑戦状』。今回は生徒からの調査依頼に挑みます!
山口「サカナクションの山口一郎改め……真実はいつもひとつ!山口探偵です!音楽にまつわるさまざまな謎を解決!絶対に犯人を見つけ出す!それが、山口探偵!……じっちゃんの名にかけてー!……ふふふ(笑) 俺、金田一ってテレビでやっていたのをちらっと見たくらいなんですよ。コナンもね、スニーカーの下にジェットが付いていて、それで走っている映像しか浮かばないんだけど(笑)。あのね、先生の時代は"さんまの名探偵"だから(笑)。金田一も石坂浩二さんだから。だからちょっと分かんないんだけど……いくよ!」
「先週お届けした結果、僕のところにたくさんの依頼が届いた!その中から、この2000年代の名探偵と言われている山口探偵が挑む謎はこれだ!」
「……カシャ、カシャ、カシャ……デレレーン♪ 今、ルパン(三世のサイブタイトル)の効果音ね(笑)。」
『アナログレコードブーム再燃の犯人を探せ!』
(鹿児島県 17歳 女性 ラジオネーム バニラガールからの依頼)
「かつてCDの登場によってその存在が危ぶまれていたレコード。みんなレコードって……存在は知っているけど持っている人はいないのかなってイメージでした、先生は今ね。しかし、今このアナログレコードの売り上げが非常に伸びていると。DJツールとしてのレコードっていうものから、もっと身近なものになりつつあるのかな?サカナクションもアナログレコードをリリースしたことがあります。実際僕たちはアナログで音楽を聴くことが多いので。あと、アナログの音ってデジタルにはない独特の音の繋がりだったり、厚みがあるんですよ。この話はまた今度するけども。だから、サカナクションもちゃんとアナログでリリースしたいなって思ってリリースをしています。」
「よーし!じゃあ、アナログレコードブーム再燃の犯人を、じっちゃんの名にかけて探し当てる!……クリリンさーん!!……ふふふ(笑)……どうも、石坂浩二です(笑)。……クリリンさーん、レコードの売り上げがすごいよー。お父さーん!……って、もうキャラが混ざりすぎてわけわかんなくなってるから、いくぞ!」
<探偵ファイル(1)>
アメリカ国内のレコードの売り上げが30年以上ぶりにCDを上回る。今年上半期のレコードの売上額は約246億円でCDの売上額138億円を大きく上回った。レコードの売り上げは物理的な媒体全体の62%を占めたが、音楽業界全体の売上の85%はストリーミングによるもの。
「つまり、CDの売り上げがストリーミングに移行して、レコードの売り上げがちょっと伸びたっていう感覚かな?だから、爆発的にレコードの売り上げが伸びたっていうよりは、横ばいないしちょっと右肩あがりになったと。ただCDは愕然とした落ち方をしていると。正直、アメリカにはCDショップないですもん。日本が世界で一番CDが売れているらしいですよ。なので、世界的には、CDメディアは完全にオワコンだと。我々もCDはもちろんまだ手元にあるし、引っ張り出して聴くけど、基本はストリーミングになっちゃっていますよね。探すときもそうだし。ちゃんと聴き直したいなっていうときにCDを引っ張ってくるって感じだけど、基本的にはそういう聴き方になっちゃっていますよね。だから、アナログで聴くっていうことは、アナログでしかリリースされていないものをアナログで購入するっていう要素の他に、アナログを購入するという欲が一体どこにあるのか……それがじっちゃんの名にかけて見つけるべきひとつのポイント!……オッス、オラ金田一!(笑)……コナンが分かんないな……」
<探偵ファイル(2)>
日本国内のアナログレコードの売上は、1976年には2億枚。その後CDなどの台頭に押され、減少の一途を辿り、2009年には約10万枚にまで減少。しかし2017年に100万枚を記録。16年ぶりとなる生産数100万枚超えを果たした。
2017年にはソニーが29年ぶりにレコードの自主生産を開始。サカナクション、星野源、きゃりーぱみゅぱみゅ、RADWIMPS、PerfumeなどのアーティストがCDとアナログ盤を同時発売。
「アナログかっこいいみたいな風潮が一時期、出ましたよね。今はまたちょっと違う意味合いになってきているけど。『LP盤のでっかい感じがいいんだよ。お前ら若者には分かんねーだろうけど、やっぱりCDじゃなくてよ、LPのでっかいデザインがいいんだよ』って言っている人たちが僕らの上の世代にいたんですけど、その気持ち分かる……って僕らもなってきているし、下の世代の子たちもアナログかっこいい、バイナルかっこいい……みたいな。そういうデザインっていうものに対する惹かれ方もあるんじゃないかと思いますね。つまり、さっきの探偵ファイル(1)と一緒で、アナログの価値っていうものが今のリスナーにとってどういったものなのかという謎を解けば、この事件の犯人が分かる!」
<探偵ファイル(3)>
タワーレコードがアナログからCDに移行して以来初となるアナログ盤レコード専門店TOWER VINYLが2019年3月にオープン。在庫数は約7万枚。そのうち中古レコードは4万枚。
「なるほど。新しいレコードだけではなく、旧譜……昔のレコードが半分以上占めているというわけですね。店舗の中にあるアナログレコードが。つまり、CDではなくて、当時のそのままの音を聴きたいんだという層も増えてきている。つまり、アナログの価値みたいなものの中にヒントが現れた。過去の旧譜のレアなやつをコレクションしたいという……そういった層がいるということが判明した。この犯人が残した証拠はいかに……!ふふふ(笑)」
<探偵ファイル(4)>
広末涼子、1997年リリースの1stアルバム『ARIGATO!』が2020年に初アナログレコード化。収録曲は「MajiでKoiする5秒前」や「大スキ!」など全12曲。
「 (♪「大スキ!」が流れて……)そうそう、あー……これ、いい曲だよ。懐かしいね。すごい売れたよ。みんな知ってる。広末涼子って天使だってみんな思ったと思う。これを今アナログ化するっていうことは、やはりこの層にアナログが届いているっていう自覚がレーベルにはある。なるほどな……戦略が見えてきたぞ。犯人の動機が分かってきたぞ。」
<探偵ファイル(5)>
イギリスでは、カセットテープ・アルバムの売上が倍増。約17年ぶりに年間の売上が10万本超えの予想。1年間の売上本数が10万本を超えるのは2003年以来。
「カセットテープも売れていると。はー……ちょっとこれは面白い現象ですよね。つまり、ハイレゾ音源とか、ピュアオーディオとか、いいイヤホン、ヘッドホン……そういったことじゃなくて、音楽の聴き方、それすらもファッション化しているというか。そういう要素があるのかなって思いますよね。音質っていうもの……デジタルではっきりとした透明感のある分かりやすい音っていうよりも、カセットで聴く音質だったりとか、カセットだけでリリースする個性だったりとか……ある種コンセプトっていうところに音楽を見出している人も出てきているってことですよね。」
「僕らも8cmシングル(「忘れられないの / モス」)を出したときに、『聴けないけど買います』っていう人が結構いたっていうのは、コレクションとして持ちたいっていう思いと、考え方が好きっていう要素も多分あったんですよね。だからある種アナログとかカセットっていうのは、それをリリースするミュージシャンの考え方っていうところのひとつの武器になっているのかな?つまり、そういった動機がはっきりしてきたな。」
<探偵ファイル(6)>
アナログレコードと真逆の存在であるストリーミングサービス。2008年にSpotifyのサービスがスタート。日本国内では2015年にAWA、LINEMUSIC、Apple Music、 Google Play Music、Amazon Prime Musicなどが立て続けにサービスを開始。
「日本は、実はストリーミングに対して最初後ろ向きだったんですよね。本当に時代遅れだなって思うけど。今はすっかり乗り替わっていますけど。つまり、アナログレコードで聴くっていうこととは違う、簡単に聴けるストリーミングサービスっていうのが伸びてきたことで、たくさんの音楽を簡単に聴けるようになったことで、逆にアナログの魅力を感じる人が増えているという。つまり……サブスクリプションという密室の中で、アナログレコードがいかに売れたのか……この密室トリックを解かなければ……!じっちゃん、危ない!!……ふふふ(笑)」
<探偵ファイル(7)>
イギリスでは、アナログレコードを購入した人の約45%は、音楽ストリーミングでまず音楽を聴いてからアナログレコードを購入しているという調査結果。さらに、購入者のうちおよそ7%はターンテーブルを所有していない。
「ほら!このストリーミングという密室の中で閉ざされた人たちがアナログレコードを購入しているという調査結果が出ている!……鑑識の皆さん、現場を荒らさないでください!!……ククク(笑) さらに、購入者のうち7%がターンテーブルを所有していない!!聴けないのに購入する7%の調査結果をどうか……!!くぅ……一体どうなっているんだ!聴けないのに購入する人が7%もいるという、この密室の中で行われている購入劇……」
「……なるほど、分かったぞ!つまり、アナログレコードというものは、人間の心の隙間を埋めるものなんだと思う……」
「つまり、犯人は……!」
「お前の物欲だーーーー!!!!!!」
「はははは!(笑) そう、アナログレコードブームの再燃とは、CDを購入するという人間の意識がアナログに移っただけである。音楽を自分のものとして所有したい、サブスクリプションのように通り過ぎるのではなく、物として保持したい……そういった人間の物欲を埋める新しいツールであるが、過去からあるものである。アナログレコードというものは、音という魅力だけではなく、人間が音楽を所有したいという物欲を抑えるものである。CDの代わりにそれが機能しているのは、LPというものがちょっとかっこいいとか、珍しいとか、そういった要素がある。……君の家にも眠っているはず!本屋に行って、ちょっと自分が頭がいいふりをして難しい本を買ったけど結局読まずに眠っているあの本!それと同じだーーーーー!!!」
「じっちゃーーーーーーん!!」
「……かーめーはーめー……波ぁぁぁ!!!!!」
「はははは(笑) なんかもう、途中から孫悟飯になっちゃったね……声がおかしくなっちゃった、叫びすぎて(笑)。」
「これはいろんな要素があるんだけども。多分、CDって今買っている人も、買うけどCDでは聴かないっていう人も多いと思います。サブスクリプションで聴いて、CDはどちらかというと応援する気持ちだったり、物として持っていたいという気持ちがあるミュージシャンのものだけ購入している気がする。でもレコードって、物欲を満たす、保持したいっていう気持ちを満たすだけではなくて、LPっていうものの魅力……CDよりも物感っていうか、物質感が強い物だと思うんですよね。現に、アナログは溝が削られていて、その溝を針が読み込んで聴いているものだから、物が振動している音なんですよね。デジタルは結果的にはデータだけど、アナログは物が振動して聞こえる音だから、リアルな音なんですよ。そこに、保有欲と物質感がマッチしたのがアナログで。
だからこそ、劇的にアナログを聴く層は伸びていないけど、右肩上がりではあり、減りもしないという。アナログでしかリリースしないっていう考え方みたいなところにも魅力を感じ始めているところがあり、カセットテープでしかリリースしないっていう魅力も、リスナーが理解し始めているというか。ただ、街で流れていて、みんなが知っている曲を聴きたいっていう層とは違う音楽の層が担保されつつあるのが今の時代だなと。だから、アナログブームの再燃というよりは……犯人が誰かというよりは、アナログブームは消えなかったと。アナログが消えずに、CDが消えていったことで、アナログが目立っているっていう要素があるのかなっていうのがありますね。」
「つまり、南極の氷が溶けた中からマンモスが出てきただけである!!!……そう、我々の手にかかれば、こんな事件なんて簡単!じっちゃん、ありがとう!」
「なんということだ……今週も名探偵山口が謎を解決。導き出したこの答えに納得がいかない場合はすぐさま掲示板に書き込め!また会おう、次の街で……!ふふふ(笑)」
そろそろ今回の授業も終了の時間になりました。
「いやね……先生、正直体調悪いんだよ、今。これもリモート授業でやってんだよ。だけど、やはり音楽に命をかけているんですね。一度音楽の話になると、血管ちぎれるかくらいの気持ちで向かい合っちゃうわけだね。今夜お届けした『山口探偵への挑戦状』では、生徒の皆さんから音楽にまつわる謎、山口探偵に解決してほしい謎をお待ちしています。もうちょっとオカルト的なのでもいいぞ。山口探偵にかかれば、こんな問題はちょろすぎる……チョロQ(笑)。じっちゃんの名にかけて、解決していきます!……じっちゃーん、おーい!そっちは崖だぞー!!……ふふふ(笑)」
新授業『山口探偵への挑戦状』
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