『リモート授業に一番適した方法は何なのか?』
サカナクション 2020.4.17 金曜日
聴取期限 2020年4月24日(金)PM 11:27 まで
今回のサカナLOCKS!は、山口一郎先生の自宅からのリモート授業をお送りします。SCHOOL OF LOCK!でも、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、アーティスト講師陣が、学校外から授業を届ける「リモート放送」方式を取り入れております。生徒の皆さんに向けて、いつもの教室=スタジオを離れて授業を届ける場合、最も適した方法は何なのか。音を学ぶ "音学" の講師として、オンエアで実験してみようと思います。
リモート授業、まずは生徒と逆電するときにも使う「電話」を使います。
<その1:電話>
山口「はい、授業を始めますから席についてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いている人はInstagramをそのままにして、サカナLOCKS!のインスタアカウントをフォローしてください。授業が始まりますよ。本日からこのサカナLOCKS!は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、リモート授業をお届けしたいと思います。」
「いま一郎先生はね、自宅から電話回線を使って授業をお届けしています。もしもーし、聞こえますか?この音声は電話回線の音声ですよ。よく聞いたことがある感じじゃないですか?電話っぽいでしょ?ふだん生徒と電話で話していて思うけど、この音はそんなに良くはないですよね。電話の音って分かるもんね。"ミュージシャンしりとり"の授業でも、たまになんて言ったのか聞き取りづらい時がありますからね。時代遅れですよね、電話の音声ってね。」
「一番音が悪いと思われる電話回線でのリモート授業はここまで。次は、みんながよく使っているだろうLINE電話で繋いでみたいと思います。音の違いはあるかしらね。」
<その2:LINE通話>
「はい、授業を始めますから席についてください。続いては、LINE通話でお話を始めましたよ。どうですか、音声の方は。普通の電話よりも音質が良いと言われていますよね。これは皆さん、ラジオで聴いていて違いを感じているのではないでしょうか。iPhoneを使っている人だったら、FaceTimeオーディオとかはこの音声に近いのかなと思います。しかも、こちらはパケット通信なので、パケ放題のプランで契約している生徒は、電話回線を使わずにこのLINE通話で話していたりするんじゃないでしょうか。先生たちの時代はね、家電(固定電話)だったのよ。いまの生徒は、LINE通話とかでパケット放題を使って、彼氏彼女と朝まで電話していてもお父さんやお母さんに怒られないでしょう。先生たちの時代は固定電話だったから、「電話代がとんでもないわよ!」って怒られたりしたものなんですよ。しかも、コードレスじゃない時代も通ってきているからね。黒電話とかみんな知ってるか?受話器と本体が繋がっちゃってるやつだよ。ああいうので、階段のところで親に声が聞かれないように隠れながら電話したりしたもんなのよ。で、コードレスになったら充電が切れちゃうのよね、コードレス電話のね。そういう時代があったんだけど、今はみんな好きなだけ電話で愛しえちゃうものね!うーん……良い時代が来ていると思う。」
「こんな風に音声が良くなったので、最近のサカナクションの近況を話していきたいと思います。サカナクションはツアー中だったんですが、コロナウイルスの影響でツアーが延期になっております。なので、家でできることをいろいろやっています。まずは、音楽の作品を作るっていうことを考えていますが、いま、『サカナクション #STAYHOME カレンダー』っていうのを作っていて、そこにチームサカナクションのInstagram Live配信だったり、毎週土曜日は、サカナクションの過去のライブ配信とかをやっていて、そういうのをまとめたカレンダーを作ってアップしています。そうすると、みんなSTAY HOMEしていても楽しみがあるから良いかなと思ってね。このカレンダーは、この状況が収まっても更新していけたらいいなと思っています。」
「でも、今みんな家にいるわけじゃないですか。そうなるとやっぱりみんなもストレス溜まってきているだろうなって思うしね。SNSとかでも、僕のDMにもそうですけど、辛いっていう気持ちが吐露されていますよ。あと、ピリピリしているよね……みんな。急にSNSでみんなピリピリし始めたもんね。そういった苦しい状況の中で、音楽っていうものが大切だって思ってもらえるために、先生いろいろ活動していますよ。例えば、音楽業界で困っている人たち……つまり、音楽に関わる音楽以外の仕事をしている人たちの仕事が、全部いま止まっちゃっているのね。照明とかPAとかも……みんな仕事がない状態なので、そういう人たちの補償みたいなものを貰えるように、音楽業界が国と今やり取りをしているんだけど、そういった近況を伝えることもやっていますし、いろいろ提案したりもしています。なので、ひょっとしたら普段より忙しいのかなと思っています。だけど、先生ね……歌詞を書くのに家に居続けるのには慣れているからね!一人遊びの天才だからね(笑)。全然苦じゃないんだなー、こりゃ。新しい作品も作ろうと思いながら、ギターを握ったりもしています。」
「ではこの後は、LINE電話ではなく、別の方法で授業をお届けしたいと思います。」
<その3:オンラインミーティングアプリ>
山口「はい、授業を始めますから席についてください。今回は、リモート授業の音質実験。先ほどの電話、LINE電話と続いて、今度はオンライン会議ができるアプリの音声でお届けしております。なので、いつものサカナLOCKS!の職員の顔が、僕の目の前のPCの画面に出ていますよ。ね、諏訪さん!」
職員「一郎先生〜!こんばんはー!」
山口「ははは!(笑) 完全に未来ですねー、今。Zoomとか、Meet Nowとか、Hangouts Meetとか、Discordとかもあるのかな。そういうアプリで、テレワークや大学の授業が行われていたりします。あと、飲み会をしている人もいるんですよね?Zoomとかで、オンライン飲み会。……これ、音声的にはどうですか?皆さんにどう聞こえているんですかね。これは未知ですよ。生徒諸君、これを聞いてどう感じているのかを [サカナ掲示板]に書き込んでいただけると嬉しいです。LINE通話よりはちょっと音が悪いというか、アンビ感が強い感じがします。アンビエントっていう、空間の音ね。距離感がちょっと遠いというか。そういう風に聞こえているんじゃないかと思う。部屋の鳴りとかも聞こえているんじゃないかと思います。先ほどのLINE電話以外にも、LINEにもグループビデオ通話っていう同じような機能があったりします。これを使って家族で話をしたりしている人がいるんじゃないかな? SCHOOL OF LOCK!の職員会議も今はオンラインで行っているそうです。」
職員「そうなんです。30人くらいこういうオンライン会議で集まって、なるべく集団で会わないようにするっていうことをやっていますね。」
山口「今回は、自宅からお届けしているサカナLOCKS!ですので、音声チェックも込めてちょっと自宅をうろちょろしてみましょうか。今リビングにいるんだけど……まずは、ベランダに出てみようかな。ベランダに出て、外と中の音の違いを確かめるのも良いんじゃないの? (何か音がする)……はい、今ベランダに出ました。急に音がデッドになった感じがしないかい?……どう?(カサカサと音が聞こえて)これは、草の音です。植物の音を鳴らしています。そしてまた中に入りますよ。(バタン!と音がする)」
職員「ははは!(笑) ドアの音(笑)。」
山口「ふふふ(笑)。じゃあ、中に入って、台所の方に行ってみようかね。これは今、水を出している音(ジャーッ)これ、シャワーね!(笑) あとは、そうね……(ピッピッ)……これ、電子レンジの音。あと、冷蔵庫を開けてみようかな。(ガチャッ)冷蔵庫を開けると入っているのは、基本的には、さつまいもとアボカド(笑)。(ガサガサ……)これ、ネギね。」
職員「料理とかするんですか?」
山口「ええ、自炊してますよ。冷蔵庫はこんなもんかなー……あと、氷だね!(カチャッ)これ、氷ボックスの音だけど、聞こえるかな?分かんないかな? でも、家をウロウロしていると、その音がいろいろするっていうのは感じてもらえたかなと思う。では、次のリモート方法に変更します。」
<その4:iPhoneのアプリ『ボイスメモ』>
山口「はい、授業を始めますから席についてください。ということで、続いてはiPhoneの『ボイスメモ』で収録しています。iPhoneに元々入っている、気軽に使えるボイスメモ機能です。これで先生デモを録ったりしていますよ。鼻歌とか、ギターで思いついた音をパッと録音したりすることが多いです。あと、レコーディングでも使ったことがあります。サカナクションの「ストラクチャー」っていう曲の頭のギターの音は僕がボイスメモで録ったやつですね。当時のスマートフォン(※ストラクチャーを収録したアルバム『sakanaction』のリリースは、2013年)なので音が悪かったと思う。でも、そんな風に使ったりしますね。iPhoneはそもそも電話なので、声の録音には向いているのかもしれませんね。」
「先生ね……一応ミュージシャンだから言うても。ボイスメモやスマホについているマイクだけじゃ物足りないって考えに至るのよ。みんな、スマホ用のマイクがあるのは知ってるか? Lightning(iPhoneのコネクタ部分)で使えるマイク。SHUREから出ているんだけど、それを使ってどのくらい音が変わるのかっていうのをみんなに感じてもらおう。」
<その5:iPhone『ボイスメモ』+ iPhone用コンデンサーマイク>
「どうだ?今これは、iPhone専用のLightningマイクを使っているぞ。さっきとちょっと音質が変わっていると思うんだけど、どうだろうな?……どうかな?先生もこれはちゃんと比較したことがないから、楽しみだな。放送に乗ると分かるのかな?どうなのかな……音の変化はあったかな? では、次のリモート方法に変更してみましょう。」
<その6:iPhone『ボイスメモ』+大型コンデンサーマイク>
「はい、授業を始めますから席についてください。……続いてのリモート方法ですが、これもなかなか生徒の家にはないかもしれません。今までのリモート授業の中で初めて、独立したマイクを使っています。僕らがレコーディングしている時や、ラジオの時にも使うようなマイクですね。今は先生の部屋にいるので、外に走っている車の音とかエアコンの音とか加湿器を付けているんだけど、加湿器の薄いノイズとかも入っていると思うのよ。スタジオっていうのはデッドな空間で、反響がない部屋なので。例えば、クラップを鳴らしてみると……(パン、と手を叩いて) ほら、響くでしょ?残響があるっていうか……これをリバーブっていうんだけど。これがスタジオだとないのよ。だから声が鮮明に聞こえるんだけどね。今は家だから、このマイクで録ってもちょっとシャーっていう音がするんだよね。ただ、これはレコーディングとかでも使うマイクなので、いつもの環境に近いものだと思います。楽曲制作をしたり、ボーカルを録ったりするときのマイクですね。独立したマイクということで、普段の音に近いと思うんだけど、環境が違うので大分違うかなっていうのが先生方の意見かな。」
「これでギターを鳴らしたらどうなるのか、やってみようか? ちょっと待てよ……ちょっとチューニングするぞー……(チューニング音)……(ギターをかき鳴らす)……どうだ?これ。もっと離れたほうが良いか?……これくらいか? こうすると、ギターのほうが(マイクに近いから)大きく聞こえていると思うんだよなー。こういう感じにするといいかな?……どうだ?(少しギターをかき鳴らしながら……)」
♪ 新宝島 / 山口一郎 (弾き語り)
「(ワンコーラス歌ったところで急に)……あ、足しびれた!(笑) 足しびれてる……(笑)。先生は今、床に座ってやってるのよ。足がしびれちゃってよー。とまあ、こんな感じだ。どのくらいの音声で伝わっていますかね?こういう感じですよ、コンデンサーマイクを使うと。音の変化があったと思います。」
そろそろ今回の授業は、終了の時間になりました。
今回は一郎先生での収録ということだったので、一郎先生自身も、それぞれの音の違いは、オンエア上でチェックするそうです。
「今回は、自宅よりリモート授業をお届けしました。いろいろなリモート収録の方法を実験していったのですが、やっぱり普通の電話回線の音はみんなが聞き慣れた電話の音でしたよね。LINE通話は普通の電話より音が良いよね。で、オンライン会議ができるアプリでの音声も普通に話すくらいだったら全然いけるんじゃないかなって感じがしました。で、ボイスメモ。スマートフォンのマイクを使って録音したものと、スマートフォン専用のマイクを使ったもの。これは比較的ラジオにも対応出来る音質になっているんじゃないかと思います。……先生まだ聞いてないけどね。そして、独立したマイク。普段ラジオで使ったり、僕らがレコーディングで使っている、このコンデンサーマイクでしゃべっているのは、まあ聞き取れるんじゃないかなと。外の音も拾っているからいつもとちょっと違う感じはするかもしれないけど……これはいいんじゃないかなって思います。しゃべった感じね……放送にのらないと分からないわけだから。」
「聞いている生徒は、どの音が一番良かったでしょうか?こんな状況なので、しばらくはリモート授業になるかなと思いますけど……リモート授業だからこそできることってあると思うのね。だから、「こういうのをやってください」とか、「こういうのが聞きたいです」っていうのがあれば、 [サカナ掲示板]に書き込みをお願いします。オンラインアプリで生徒諸君1000人と通話するとかもいいかなと思うね(笑)。みんなから質問を受けるっていう。こういう時だからこそできるかもしれないよね。そういうのも考えていきたいと思います。ということで、今回の授業はここまで!」
聴取期限 2020年4月24日(金)PM 11:27 まで