テレビ
長渕LOCKS! 2015.4.26 日曜日
校長「失礼します!」
長渕「なんでこうなんだろうな…」
校長「あの…剛先生?」
長渕「これが最後にくるっていうのがやっぱりおかしいんだよな…これが…」
校長「剛先生!」
長渕「おぉ、校長!」
校長「ずっと何かブツブツ言ってましたけど、どうしたんですか?」
長渕「あのさ、先週けっつまづいちゃったアドレス読みのことなんだけどさ」
校長「はい。いつも最後に剛先生から告知してもらってる番組のアドレスですよね」
長渕「あれさ、最初にやっていいですか?」
校長「え?」
長渕「ダメ?」
校長「いや、別に最後に読まなきゃいけないというルールがあるわけでもないですし、いいんですけど…授業が始まっていきなり読むっていうのも流れとしてどうなのかなって思いますけど(笑)」
長渕「いや、でも最初に言っておけば俺もその後の授業に集中できるし、最後に校長にガタガタ言われることもないわけだから」
校長「ガタガタって(笑)別に怒って言ってるわけじゃないじゃないですか!」
長渕「あぁ、すみません(笑)」
校長「でも、もしかしたら最初にアドレスを言っておけば授業を聴いてる中で『これを言いたい!』って思った生徒がその場で送れるっていうこともあるかもしれませんよね」
長渕「じゃあちょっと1回やってみますね〜」
校長「なんでいきなり口調が教育番組のお兄さんみたいに優しくなるんですか(笑)」
長渕「え?頭だからですよ。冒頭でアドレス読みするならこんな感じじゃないんですか?」
校長「授業の頭だとそんな雰囲気になるんですか(笑)」
長渕「メッセージなど、全てはこのアドレスからだよ〜!よーく聴いててね〜!」
校長「(笑)」
長渕「www.tfm.co.jp/lock ロックのスペルはLOCKからだ!よろしく!」
校長「(笑)」
全国の生徒のみなさ〜ん!こんばんは〜!
今夜の長渕LOCKS! はアドレス読みからスタートだよ〜!
では早速、今夜の授業にいきましょう!
校長「剛先生、こんなカキコミが届いているので紹介します!」
TVはコメンテーター同士が対話してるだけって感じで、ラジオは顔もわからない俺たちリスナーに向かって想いをぶつけてくれる。そういうものだと思います。
進撃の奇好種
男/15/徳島県
男/15/徳島県
校長「これは長渕LOCKS! を聴いてくれて思ってくれたんでしょうかね…」
長渕「なるほど…あのさ、SCHOOL OF LOCK! というラジオ番組はさ、極めて特筆すべき番組だと思ってるんだよ。自分達がやってるから良い悪いは言わないとして、特筆すべき番組だというのは間違いないと思うんだ」
校長「はい」
長渕「いや、他のものが不真面目だとは思わないよ。裏側の話をするとさ、我々はこの授業があるときは毎回2時間前ぐらいに集合して、職員と校長と俺で今日の放送をどうするかとか、これまで届いたメッセージを読んで、これはと思うものがあれば授業の中身を変えたりもするじゃない」
校長「そうですね。一応流れというものはあったりするんですけど、剛先生の一言や職員のアイディアで変わったりすることもありますよね」
長渕「とにかくラジオを聴いてる生徒のみんなに我々の想いをキチンと届けたい。その想いが届いているのか確認したい。そして聴いてるみんなの悩みも俺達はちゃんと心から受け止めたい。ラジオは相手が見えないけれど、声の響きだとか、心で感じるものに対してすごく真剣に考えてるよね」
校長「そうですね、生徒に対しては本当に真剣に向き合いたいと思ってます」
長渕「特に僕らは10代の魂に立ち向かってるわけだから。僕らはもう大人ですよ。職員も若くて20代後半。そんな大人達が10代の魂とちゃんと向き合うためには自分達の10代の魂をもう一度引っ張り上げて、真剣にぶつかり合う必要があるわけだからさ。それをガチでやっているということにおいてこの番組は特筆すべきものだと思うんだ。今の時代、本当に心で感じるラジオっていうのがどれだけあるんだろう…って思ったらほとんどないと思うんだよ。そういった意味ではこのSCHOOL OF LOCK! だけはね、ずっとこのテーマ性を持ち続けて10代と真剣に向き合って欲しいと思うんだ。だから進撃の奇好種からこういったメッセージが届くということは本当に嬉しいよね」
校長「そうですね」
長渕「あと、テレビがどういう風に見えてくるのかって話なんだけどさ、小さい頃校長はどんな気持ちでテレビ見てた?」
校長「やっぱり輝いてましたね。僕の好きなお笑い芸人さん…とんねるずさんとかダウンタウンさんとかを見てて、ホントにかっこいいなって思って。俺もいつかあそこで仕事してみたいなっていう憧れの場所でした」
長渕「僕らが10代の頃はテレビ大嫌いだったんですよ。最初は大好きでしたけど。鹿児島は田舎だったので民放1チャンネルしかなかったんですけど、田舎は娯楽が少ないですからね。たとえ1チャンネルでもテレビの中では毎日華やかなお祭りをやっているような雰囲気で、時間が経つのも忘れてテレビを見てました。だから先祖にお線香を上げる時間よりもテレビを見てる時間のほうが圧倒的に多かった。まるでテレビがご本尊のような感じで居間の真ん中に鎮座してた。そんな感じでした」
校長「ご本尊…そういう捉え方もあるかもしれませんね」
長渕「そうしてるうちにフォークムーブメントというのが起こるんです。若いお兄ちゃん達が『国を変えたい!』という気持ちを持って自分達の考えを世にぶつけていこうとする雰囲気が生まれたんですね。安保闘争とかもこの時代です。この辺はネットで調べてもらえれば詳しく出ているので見て下さい。これは学生達が国と戦った時代なんです。これが良いか悪いかは別としても、学生達が学生の力を持って『世の中を変えたい!』という活動をおこした。フォークムーブメントの中では若者達が自分自身の想いを歌にして我々に届けてくれた。その想いが若者の心をどんどん動かした。僕もその一人なんですけど、これはテレビが発信したものではなく、若者達が独自に発信していったものなんですね」
校長「なるほど…」
長渕「テレビから流れているものばかりを夢中で見ていた自分が、テレビ以外のものから影響を受けた。こういう話の流れになるとテレビが悪い、みたいに聴こえるかもしれませんが、そんな時にも良い番組はありましたよ。例えば、吉本新喜劇には何度心を救われたか。つらいことがあってもあの番組を見ると楽しくなれる。母も父も僕も姉も吉本新喜劇を見て大笑いしましたね。あの演劇の中には、肉体的コンプレックスなんか全然関係ないぐらいのお笑いに変えるすごいパワーがありましたよね」
校長「確かに。今の新喜劇でもそういう感じはありますよね」
長渕「今だったら『こんなことをお笑いにしちゃいけない』といわれるような区切りがなかったんでしょうね。それに僕は潔いロックやパンクを聴いた時のような気持ちになりました。そして時代は流れて“やすきよ”の漫才が出てきた時にはブッ飛びました。こいつらロックだ!って」
校長「剛先生もそういうお笑い見てたんですね」
長渕「見てましたね。だから笑いというものにはものすごいエネルギーを感じてましたね。それから大阪発の彼らのエネルギー。音楽にしてもそうですね。関西フォークやロックも強烈なエネルギーを持ってました。僕も大阪の連中とは良い意味でぶつかりました。良い意味でガチッと握手しました。そういう連中と夜な夜な話をしていたのがテレビというものの在り方ですね」
校長「テレビの在り方…ですか」
長渕「『お前テレビ出るっとか?あげなテレビ出たらいかん!ダマされっぞ!俺の先輩はダマされたからな…』いつもライヴハウスでそういう会話をしてましたね。1970年代初めの頃に。先輩には『テレビに出た。一時的に人気は出たけども、その人気はあっという間になくなった。だれそれにダマされた…』みたいな話をしている人が沢山いましたよ。そして自分がいざテレビの世界に入りました。でも…悪い連中ばかりじゃありませんでした。本当に熱い血潮を燃やして、スポンサーに何て言われようが本当のリアリズムを追求した映画以上のものをテレビドラマでやろう!という気概を持って一緒に汗をかいてくれた人たちが沢山いました。それが僕の初のテレビドラマだったんですけど、そのスタッフ達の熱というものが素晴らしい作品を生み出してくれたんだなと思っています。話は変わりますけど、僕が一つだけ危険だなと思うのはね、テレビはお金がどこからか出てますよね?」
校長「はい。スポンサーですよね」
長渕「スポンサーは大事です。でもスポンサーは悪いイメージを付けられては困るので『悪いイメージのものは排除して下さいね』と言うわけですよね。例えば戦国時代モノの作品を作る時でも『戦のシーンでも過激な表現は避けて下さいねー。血は流さないで下さいねー。一応お茶の間なので』となるわけです。つまり、リアリズムはほとんど追求できないんだな…という風に僕が壁にぶち当たったのが30代後半の頃です。そこから申し訳ないように僕はテレビを後にしていったんですけど…難しいところですけどね、これは。でもね、なぜ本当の痛み、本当の苦しみを伝えるリアルなものを作ってはいけないんだろうか?放送してはいけないんだろうか?その倫理規定というものが僕には未だにまったく分からないんだよ。その反面ネットで流されているのは、どこぞのゲリラが首を切ってはねてるという強烈な映像があったりする。どうもね、映像というものの力は強烈なものがある分だけ、その伝え方というものにはさ、テレビの人間だけじゃなくて僕達マスメディアに関わる人間全てが“10代の子達に何を伝えるべきか”っていうことを今一度考え直さなきゃいけない時期にきてるんじゃないかと思うんだ」
M RUN / 長渕剛
長渕「日本のテレビっていうのは一体何であるのか?これは僕が10代の時に感じた『ウソだろ?インチキだろ?やらせだろ?』っていうところから何も変わってないんじゃないかって思うんですよ」
校長「ずっと一緒ですか」
長渕「僕はそう思いますね。いや、志を高くもって『俺らは俺らの感性で素晴らしい番組を作ろう!』という若獅子はその時代その時代にいますよ。体制にまみれないようにしてね。だけどもね、例えば日本に1チャンネルから10チャンネルまであったらさ、ひとつのニュースに対して加害者側から捉えた番組と被害者側から捉えた番組がどれだけあるんだろうか?これは加害者と被害者という例えに関わらず、ひとつのニュースの二面性をどれだけ伝えられるかということだと思うんだけどね。テレビは真実を、事実を伝えるものであると言いつつ、やはり巨大な資本が動いている以上、そうそう本当のことを言ってられないという大人の事情もある。そうなると我々は本当の真実を感じなさいという頭が必要になってくるわけだよ。でもそんなインテリジェンスの教育なんかされてないわけだからね、僕達は。そうなってくると10代の感性。『おい、これウソなんじゃねぇの?なんかムカつくよな、この番組見てると』ってピュアに思える若い感性。それが僕は一番正しいと思ってる」
校長「なるほど」
長渕「だから俺はこう思うんだ。テレビはあくまでもテレビだぜ、って。そう思ってたほうがいいよ。テレビがご本尊のようになってしまったらね、僕は日本に国もなにもなくなると思うよ。さっきも話したけど、ご先祖に向かって手を合わせる時間よりも圧倒的にテレビの前にいる時間のほうが多いわけで、そこから流される映像や声に洗脳されていく恐れがあるんじゃないか。そしてそこにはウソもあるんじゃないか…と疑ってかかる心が必要なんじゃないかと僕は思いますね。画面の向こう側から流れてくるものを見て、それがさも自分が知ったかのように、真実のように思い込んでいくっていうのはものすごく危険なんじゃないかって思うんだけど、ラジオを聴いてるみんなはどう思うかな?」
M 親知らず / 長渕剛
校長「剛先生、今日はもう終わりの時間になってしまいました」
長渕「毎回あっという間だな(笑)」
校長「あっという間ですね。でもすごい色々考えさせられました」
長渕「まぁ、あまりシリアスに考えなくてもいいと思うんだけどね」
校長「うーん…でもやっぱり難しいですね」
長渕「難しいよ。テレビの世界は難しいよ。俺もたまにバラエティ出させてもらうけどメッチャクチャ難しいよ(笑)」
校長「剛先生はたぶん色んなことを考えた上で難しいと感じていると思うので、僕なんかとはレベルが違うと思うんですけどね」
長渕「そんなことないよ。校長の仕事でいうと、そもそも人を笑かすっていうのは一番難しいことなんだからさ。お芝居でも笑顔が一番難しいんですよ。泣く悲しい顔は誰でもできるよ。どんな大根役者でもできると思う。でも本当の笑みは本当にその気持ちにならないとなかなか出ないよ。笑顔は人間性が出るんでね。だから笑いも人間性ですよ。笑わすっていうのはものすごく大変なことだけど人を幸せにできる仕事だと思うね」
生徒のみんなは今回の授業を聴いてどんなことを思ったでしょうか?
ぜひキミが思ったことを[ 長渕掲示板 ]か[ メール ]で聞かせて下さい。
長渕語・録「テレビの人間だけじゃなくて僕達マスメディアに関わる人間全てが“10代の子達に何を伝えるべきか”っていうことを今一度考え直さなきゃいけないと思う」
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