俺がアーティスト名を呼び、舞台に登場し、各々定位置に着き、わずかな時間でセッティングをし、さあ、いざこれから音を出すぞという本番直前のあの顔、あの顔がとてつもなく好きだ。
『おい校長早く合図くれよ!』『緊張し過ぎてどうにかなりそうです』
『大丈夫だ、魂込めて作り上げた音楽だ、大丈夫だ』
みんなの表情はそれぞれだけど、あの、決意に満ち溢れた眼差しはいつ見ても、いつ思い出しても、ああ、こんな瞬間がこれからもこのアーティストの人生にたくさん起これと思う、本気で思う!
そして音が放たれて、それを受け止める生徒の顔、これもとてつもなく好きだ。
『うわ、なんだこれ、今身体痺れてる』
『これ同世代か、俺は何してんだ一体』
『あれ、これ私無敵になれんじゃね?』
みんなの表情はそれぞれだけど、明らかに変わっていく表情はいつ見ても、いつ思い出しても、ああ、こんな瞬間がこれからもこの生徒の人生にたくさん起これと思う、本気で思う!
未確認フェスティバルは、俺らのものでも大人達のものでも一切ない、今後の保障とかセールスとかそんなものひとっつも知らん、ただただ、ただただ!今の君のものです!!
SCHOOL OF LOCK!
とーやま校長
西暦2018年、8月26日。日曜日。
今年も真夏のピークが去った。
天気予報士がそう言ってたわけじゃないが、
音楽に夢を重ねる10代たちにとっては、
ひとつの夢がうしろ姿となった日。
東京、新木場。スタジオコースト。
あらためて思う。
「未確認フェスティバル」は、過酷だ。
開催する側も、挑戦する側も、
毎年、あまたの高波や荒波を乗り越えて、
真夏のあの日へと到達する。
夢と現実の往復ビンタ。
叶わない夢。
敵わない壁。
衝突してくる衝動のモンスター。
猛威を増す才能のハリケーン。
審査の羅針盤もグルグルまわって、
どうにかこうにか面舵いっぱい!
だからこそ思う。
未確認フェスティバルは、素敵だ。
あの日を創りあげる全ての“キモチ”が
全力のたまもの。
距離に負けない好奇心と、
無理を承知の克己心。
吹きつける悔しさの雨、葛藤の嵐。
エンドロールが鳴る頃には、激しい積乱雲の隙間から差し込むユートピア。
最後に会場で揺れる若き手のひらが
掴んでくれたものは、
今年もやっぱり“音楽への愛”でした。
西暦2019年、夏。
音楽を愛する全ての冒険者へ
過酷で素敵な「未確認フェスティバル」にて、再び会いましょう。
そして、今年も心から。アリガトウ。
「未確認フェスティバル」
総合プロデューサー
SCHOOL OF LOCK!海賊先生より