「山口一郎先生が最近考えていること」
サカナクション 2023.8.11 金曜日
聴取期限 2023年8月18日(金)PM 10:00まで
"音学"の授業、サカナLOCKS!
今回は、夏休み明けの山口一郎先生が登場!
最近のこと、今考えていることなどをお話ししていきます。
山口「2週間に渡って私サカナLOCKS!のお休みしてまして。副担任'sが久々に僕の代わりをやってくれたということで。」
職員(カヲル先生)「はい。」
山口「今絶賛絶不調なんですよ。ふふふ(笑)。」
職員「あら。ちょっと体調不良というか。」
山口「この夏の波に全然乗れてなくてですね。買ったばかりのTシャツも、まだ値札付いたままみたいな。」
職員「ふふふ(笑)。それなんか、いつか作詞でこもってたときもそんなことあったね。」
山口「「新宝島」で気がついたら桜散ってたよって。」
職員「全然季節物の服着ないまま終わっちゃったな……みたいなのあったよね。」
山口「そうそう、いや本当そんな感じで。夏休みみたいな感じでしたけど、まず体調不良でもう3日間高熱出て、その免疫力低下によって湿疹が出て。起き上がれない状態から今に至る感じですよ。」
職員「その間に夏休みが挟まってる?」
山口「それが夏休み(笑)。」
職員「結果それが夏休み?夏休み取ろうかな期間ぐらいのタイミングでそうなっちゃったってこと?」
山口「そうなんですよ。」
職員「強制夏休み、みたいな感じだ。」
山口「もうドンピシャ。」
職員「ドンピシャだ。」
山口「結構休んでる間に、いろいろ時間をたくさんあったから、いろいろ音楽のことを考えたりしてるわけですよ。なんか、やっぱり音楽って自分が感動しないと人を感動させられないじゃない。だからまず、自分が感動するものを音楽で発明しなきゃいけないなと思うんですよ。山口一郎理論としてはね。」
職員「うん。」
山口「我々の世代って、インターネットがなかった時代に思春期を迎えてたわけですね。その時代・世代が良かったか悪かったかは関係なく、そういう世代だったんですよね。今はもう簡単にインターネットでポンポンと音楽いっぱい聴けるけど、僕の時代はCDを買って、それをラジカセにセットして、再生ボタンを押して歌詞カードを見ながら正座して聴く……みたいな感じだったんですよ。でも今って、ちょっと出かけようと思って誰かが作ったプレイリストであったりとか、音楽を勝手に自動再生でどんどん聴けますよね。だから1曲1曲に対する重みみたいなものも違うし、あと、その音楽を聴くツールみたいなものも、音だけじゃなくて映像が付加されてるものが多いじゃないですか。」
職員「ミュージックビデオがない新曲は、もはや新曲ではないぐらいの。広まらないもんね。」
山口「そうそう。だからミュージックビデオって一体何なのかってことになってくるんだけど。音楽コンテンツってのはもう映像に付加してるものなんだなって思ってるんですよね。映像と音楽が新しい結びつきを見つけて、新しいコンテンツを作っていく時代にならないと、他のエンターテイメントに音楽が負けるし、クリエイティブの部分でも、目に頼るアニメとか映画とか、そういったものに対する付加的要素でしかなくなってっちゃうなと思うんですよね。」
職員「もう五感1個じゃ無理ってこと?聴覚だと。」
山口「その聴覚だけで音楽を聞くっていうことはもう大前提で、さらにもうひとつ、そこに導く、もう1回感動を浴びるものとしての音楽コンテンツ……その上が1個なきゃ駄目だなと思うんすよね。」
職員「それはもう、もう世の中が聴覚1個だけだったら感動しなくなってきてるってことなの?」
山口「そういうわけじゃなくて、それだけだと物足りなくなってきてるんだと思うんですよね。映像と音楽の新しいミクスチャーじゃないけど……新しい発展性を見出していかないと、そのクリエイティブっていう部分でもエンターテイメントって部分でも、面白みに欠けるツール……つまり何かに付与するツールとしてしか存在しなくなってくる気がしたんですよね。プロモーションツールとしてのミュージックビデオっていう側面だけだと単曲じゃないすか。そうじゃなくて、もっと作品性とストーリー性みたいなもの兼ね備えた、見て楽しむものがまず最初にないと。ミュージックビデオとはまた別に。」
職員「なるほどね。」
山口「そう思っちゃって、それについてずっと考え続けていくと、結果的にインターネット上での音楽の扱い方みたいなところまで行くし……我々がやりたいことっていっぱいあるけど、それをどうビジネスにするかっていうことが一番問題じゃないすか。ビジネスにするっていうことも踏まえてクリエイティブしてかなきゃいけないっていうことが……しかもそのビジネスをどうするのっていうところまで委ねられているところがすごい難しいなって思うんすよね。」
職員「あー。」
山口「こういうことやりたいから何とかお金にしてよって言ってできることじゃなくて。何のために音楽やってんのって話になってくるんですよ、そもそも。そこを無視すると。ビジネスのためにやるの?みたいなところもあるし。そうじゃなくて、音楽史に名前を残す、音楽の楽しみ方を増やすっていう、そういう時代の中で生まれてるミュージシャンだから、そこに対してアプローチすることをやめると、なんかもうミュージシャンでいる意味がなくなってくるなって思ったりしてると絶望してくるんすよね。果てしねーな、みたいな(苦笑)。」
職員「なるほどね。」
山口「30代中盤とかだったら、よーし!ってなるけど、40代のこの年齢で、なんかもう横にも贅肉ついてきたみたいな年で(笑)。横っ腹にも贅肉ついてきたみたいなタイミングで、さあって思ったときに、結構きついな……みたいな。片や、今休みしてる間にすごいタイアップのお話をいただいていて、まタイアップの楽曲制作についての勉強も今してるんですけど、それもやらなきゃいけない、みたいな。すごい夏休みだなと思って。考えることをずっとぐるぐるしてると……だから休めてないんだと思うんだよね、結局ね。」
山口「ただ、感じるってことにかけては、年齢なんて関係ないと僕は思ってるんすよ。若い頃に感じる敏感な感じ方ってやっぱりすごく大事だけど、我々のように老いてきて、いろんなことに感動してきてから、さらに感度を模索する感じ方っていうのも大事だと思うんですよ。どっちも素晴らしいものだと思うんですよね。」
職員「うん。」
山口「ただ、音楽を聴く年齢層、ターゲットを狙って作るってことはもうやっちゃだめだなって思う。例えば、10代20代に向けて作ろうと思っても、それは絶対無理だから。だから、今自分が感じてることを全年齢にどう伝えるかっていうことを考えたときに、1曲ミュージックビデオ作って、プロモーションして、はい、終わり……じゃないなって思ってるっていうか。だからこのシステムから逸脱しないと、早くドロップアウトしないと、本当に曇っていっちゃう。どんどんね。そんな感じがする。……なんか、十何年やってきたから多分そう思ってんだと思うんすよ。ここでまだ5〜6年とか、10年いってなかったら、多分勢いのまま……みたいになるけど、ここまで来たっていうところでいろいろ感じてることがあるんですよね。それをね、この夏……夏っていうか、ずっと休んでいる間から考えて、考えてですね、いろいろちょっと次の展開みたいなことを模索してるんですけど。でもやっぱり難しいね。」
職員「うん。」
山口「すごい時代に生まれたなって思うよね、我々は。地球ができて何十億年たってさ、人類が生まれて。その中で我々が生きるのって70〜80年なわけじゃん。実質活動してる時間なんて50〜60年もないわけでしょ?それしかないんだよ、だって。いろんなものが変化していく時代にぱっと生まれたっていう。インターネットがなかった時代をかすってるっていうのって、なんか大化の改新知ってる、知らないみたいなさ(笑)。そういうことなるかもしれないじゃん、将来的には。現に今の子はインターネットがない時代を知らないわけだからさ。だからこの感覚を残さなきゃいけないなっていう使命感があるよね。この時代を知っている最後の世代として、その時代に思春期過ごしてきた最後の世代だからさ。なんかそう思うんだよな。」
山口「気持ちはすごい前に行ってんだけど、体がまずついていかないでしょ。体がついていかないことで、気持ちがどんどん萎えてくじゃん。その繰り返しなのよ。で、体鍛えようと思うじゃん。運動とかするじゃん。そしたらどんどん悪くなってきちゃう。そしたら塞ぎがちになってくみたいなさ。人とも話したくないとかさ。なんかまた負のモードに入っていくわけよ。どうしたらいいんだろうなと思ってさ。いやマジで。ふふふ(笑)。しんどいっくんくんなんですよ、今。正直ね。これで結婚して誰かと一緒に暮らしてたりすると、いいのか悪いのか分かんないけど違うじゃん、多分。俺、音楽に全振りしてきたからさ。他もう何もないんだよな。だから、音楽がしんどくなってきたらもう本当しんどくなんだよな。それすごい感じてる、今。だから何かね、パズルを組んでいって、頭ん中でこれをこうしてああして、時間軸的にこうしてああして……ってやっても、結局自分の体調とかでその通りいかなくなってくるじゃないすか。それですごいイライラしたりもするし。」
職員「うん、うん。」
山口「アイスコーヒーも、無糖じゃなくて加糖にして、砂糖入れるのも省きたいぐらいだね。」
職員「どういうことですか?(笑)」
山口「ははは(笑)。アイスコーヒーも無糖じゃなくて加糖を買って、砂糖入れるのさえもなんかもう面倒くさい、みたいな。」
職員「あー、なるほどね。1個省くのね。」
山口「そうそう。最初っから加糖の買おうかな。」
職員「それで解決するならそれでいいんじゃないかなと思うけどね(笑)。」
山口「ははは!(笑)」
山口「YouTubeの配信とかも全然できなくて。」
職員「そうだね、してないね。」
山口「SNSも全部今止めてんすよ。どうすっぺかなって感じ。これをなんか上手く伝えなきゃ駄目だね。経験してるからこそ、もう音楽にするのは難しいけど、それをちゃんと乗り越えたっていう、証を作らなきゃいけないなとは思ってる。なんかそれをモチベーションにしてるけどね、今。それを経たんだよねっていう。だからこそ、こういうことを自分は言えるんだよねっていう。だから夏休みもへったくれもなかったっすよ。」
職員「そうですね。」
山口「そうなんすよ。考えてんだけどね、いろいろ。」
職員「もっと休めってことなの?」
山口「1回やりすぎちゃったんだよね。それで悪化したのよ。それは反省点なんだけど。」
職員「あー、ちょっと調子上がってきたなって。」
山口「そうそう。調子上がってきたなって毎日配信したりとか、撮影とかいろんなミーティングとかも一気に入れちゃったわけ。」
職員「ラジオのレギュラーも増えたりとか。」
山口「そうそう(笑)。してね、やりすぎちゃったんだよね。だから多分、みんな俺が今療養中だって知らないんだよね。俺も忘れてたもん。」
職員「その代償を今ちょっとこの夏済期間中にちょっと払ってしまってたみたいな感じだね。」
山口「今きてるね、相当きてるね。だから、今後どうなるかお楽しみだね。俺がどうここを乗りこなすのかっていうね。自分でも分かんないもんな。……そういう嫌なときに限って仮歯が割れたりすんだよ(笑)。」
職員「(笑)」
山口「今仮歯割れる?みたいな。今じゃないじゃん、仮歯割れんのさ!みたいな。もうなんで?なんで、なんで、なんで?」
職員「それはもう、たまたまです。そこに意味はない。仮歯に意味はないと思うよ。」
山口「仮歯に意味はないけどさ(笑)。なんで今なの?もうちょっとさあ、あるじゃん。」
職員「"なんで今"は、仮歯に意味を持たそうとしてるから、仮歯に意味はないで仮に置いとかないと(笑)。」
山口「ふふふ(笑)。いやもう……本当やんなっちゃうわ。仮歯は割れるわ、高熱出るし、湿疹でるわ……まいっちんぐですよ。」
<♪ チャイムの音 >
山口「……あれ?またチャイム鳴っちゃったじゃん。こんな愚痴っていうかさ……いいの?全国放送でこんなおっさんの体調不良と仮歯が割れた話でいっぱい話しちゃっていいのかな。でも人生ね、生きてるといろいろあるよ。本当にね、今は今だから。しんどいときもあるからね。一緒に乗り越えていきましょう。」
今回の授業はここまで。
そして、先週まで授業を担当してくれていた副担任の江島啓一先生、約束通り『マイナビ閃光ライオット2023 Produced by SCHOOL OF LOCK!』のファイナルステージ、8月7日のZepp DiverCityに来てくれました。
江島「どうも、サカナクションの江島です。閃光ライオット2023、すごい楽しませていただきました。やっぱ大人目線で見ちゃうと、この若いアマチュアバンドを見るときに、将来性とか、人気出そうだなとか、そういう目線で見ちゃいがちなんだけど、そんなんじゃなかった。閃光ライオットって、デビューに向けての登竜門じゃなかったっていうか。もう今日この日、この瞬間一番かっこよかったやつが優勝っていう……それ以上でもそれ以下でもないっていう。本当に閃光だったなっていうのが正直な感想です。3年間、コロナ禍になって、みんないろいろ思うところがあったと思うんだけど、この15分間っていう長いようで短い、この15分にギュッと詰まったステージをみんなぶつけてくれたっていうか。なんていうのかな……ノーガードの感情のぶつけ合いを見たっていう感じで。僕としては、本当ボコボコにされたなっていう感じです(笑)。優勝したでかくてまるい。は、本当おめでとうだし、他の8組は、ありがとう。そんな気持ちを抱かせてくれる素晴らしいライブでした。ありがとうございました。校長、教頭、お疲れさまでした。」
■『マイナビ閃光ライオット2023 Produced by SCHOOL OF LOCK!』の特設サイトは[→コチラ!]
来週8月14日(月)と15日(火)の生放送教室は、マイナビ閃光ライオットスペシャル!
ファイナリストたちのライブ音源や、ゲストライブアクトを行ってくれた緑黄色社会先生のライブ音源、インタビューなど、2日間に渡ってお届けします。
聴取期限 2023年8月18日(金)PM 10:00 まで