「山口一郎先生が2022年を振り返ります。」

サカナクション 2022.12.30 金曜日

SCHOOL OF LOCK!


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聴取期限 2023年1月6日(金)PM 10:00まで




音を学ぶ"音学"の授業、サカナLOCKS!。
12月30日、2022年最後の授業です。
今回は山口一郎先生が、今年1年を振り返っていきます。

<お知らせ>
前回のサカナLOCKS!で募集した「生徒の皆さんが2022年によく聴いた曲」は、年内いっぱい募集しています。[サカナLOCKS!掲示板]や[メール]で教えてください。一郎先生の自宅倉庫で見つけた激レア・アイテム─── 一郎先生がスタッフ用に作った非売品のサカナクションTシャツ(メタリカ風)を3名にプレゼントします。


山口「先週は本当にご迷惑おかけしました。」

職員(カヲル先生)「大丈夫ですか。」

山口「それがね……よくないんですよ、あんまり。行ったり来たりですね。水前寺清子ですよ。"三歩進んで 二歩さがる"(「三百六十五歩のマーチ」の歌詞)。」

職員「ははは(笑) じゃあ、まあ進んでいるっていう風に思いますよ。」

山口「いやー、だといいんですけどね。でもなんかね……今までにない感じなので、慣れるのにもちょっと時間がかかるなって。スケジュールの入れ方。」

職員「そうだね。」

山口「……だめですわ……ふふふ(笑)。年内最後の授業にこの話って相当嫌ですよね(笑)。だから、先週も僕休んで迷惑かけたじゃないですか。代打で女子メンバーにやってもらいましたけど。ああいうのも続くと、こいつ迷惑かけるやつだってレッテル貼られるじゃないですか。」

職員「ふふふ(笑)。」

山口「ふふふ(笑)。今年1年を振り返ると、前半は頑張ったんですよ。去年から上半期にかけては、コロナ禍っていうところの中で新しい発明をしようっていうことを必死にやっていたわけじゃないですか。『アダプト』のリリースがあって。」

職員「3月かな、『アダプト』リリースは。」

山口「そうです。その前にオンラインライブをやって、ツアー(SAKANAQUARIUM アダプト TOUR)をやって、アルバムリリースっていうやり方にして。積極的に実験的なことをわーっとやって、5月に15周年ライブ(『15.0 STUDIO SESSION』)があったわけですよ。オンラインで3日間だったかな。」

職員「3月の『アダプト』を出したタイミングっていうのは、一郎先生の体調的にはどうだったんですか。」

山口「今考えると、ツアーの前から調子悪かったんですよね。今思えば。12月のツアーの前のリハーサルの時からちょっと調子悪かったんですよ。なんかその……サカナLOCKS!しか聴いていないファンの人からすると想像できないと思うんですけど……僕本当、気使い魔なんですよ。リハーサルとかでも、スタッフも含め、メンバーも含め……すんごい気使うんですよ。自分はラジオやったりとか、戦略的なこととか……主にプロモーションですよね。マーチャンダイジングのこととか、グッズのこととか、全部抱えてやってるんですよ。日常的に。そうなると、リハーサルとレコーディングを主にしているメンバーからすると、距離ができてくるんですよ。だんだん。そうなると、ちょっとそれ違うんじゃないかなとか、もっとこっちの方がいいじゃんって時に、言い方に気をつけなきゃいけなくなるというか。」

職員「あー。ずっと1から作り上げている時に一郎先生もその場にいたら、全員で同じところに行けるからよかったけど。」

山口「一緒にもめるんでね。ただそれは、こういう風に戦略というか……自分たちがやってきたプロモーションもそうだし、SNSでの活動だったり、グッズだったり、バンド全体の方向性みたいなものを僕が決めてきたから、こういういい状況を迎えられた……武道館4DAYSをソールドアウトできたりとか、アリーナツアーをやってもちゃんとチケットが売れたりとか、オンラインライブをやっても8万人や9万人の人が観てくれるとか……そういった状況を作るのと同時にクリエイティブをやるっていうのって、やっぱりめちゃくちゃ大変なんですよね。」

職員「いやー、大変だね。」

山口「だから……今思えばですよ。やっぱり、ずっと15年間それをやっていたんですよ、僕。ひたすら。で、15年やるきたことが増えてきたんですよ。増えた理由っていうのは、SNSの登場だったり、サブスクリプションの登場だったり、コロナのパンデミックもあったけど……いろんな状況が変化する中で、自分たちのバンドの立ち位置みたいなのを僕がバランスとっていて。やることも多くなってきて、かつクリエイティブもちゃんと心底やらなきゃいけないっていう。」

職員「うん。」

山口「で、やったらやったで、ものすごく潜るじゃないですか。今度は潜ったことに対する周りからの圧みたいなのもあるし。歌詞を書いていて全く連絡取れなくなるわけじゃないですか。そうなると、プロモーション側からの圧もあるし、メンバーからの圧もあるじゃないですか。その圧の中でずっとやっていたんだなっていうのがあって。」


山口「それで、15周年の配信の時かな……あの時に、結構ぷつんと(張り詰めていた糸が)切れちゃったんですよね、僕が。それが今年の6月くらい。何もしたくなくなっちゃったんですよ。何かするにしても、これやらなきゃって思っても、でもな……これとこれがあってな……でも、これもやらなきゃだめだな……って、どんどん地層のように重なってきちゃって。あぶらとり紙みたく、何枚も何枚も重なって、一枚とってもキリがないっつーか……。次の問題が必ず生まれてくるっていうような思考回路になっちゃったんですよね。これどうしよっかな……って思っていた時に体調が悪くなって。帯状疱疹が出たりとか、頸椎ヘルニアになったりとか、めちゃくちゃ起きちゃって。気づいたら、更年期障害かと思うような、汗をかいたり動悸がしたり、朝全く動けないとか……そういうことが続いて病院に行ってみたら、燃え尽き症候群って診断をされて、すぐに休んでくださいって。」

職員「それが6月くらいか。」

山口「6月くらいですね。で、いやいやいや……って思っていたんですよ最初。そんなそんなみたいな。ただ疲れているだけでしょっていうか。ちょっと頭が重たくなって混乱しているだけだけど、時間経ったら忘れるじゃんみたいな。楽観的だったんですけど。事務所にカウンセラーみたいな人がいるんですけど、うちのテラスで6時間くらい話したんですよ。今の自分が考えていることとかを。そしたら、『もう休みましょう、取り返しつかないですよ』って言われて。で、ツアー延期にするか中止にするかっていうギリギリのラインで(事務所の)社長がうちにきて。カウンセラーの人と一緒に。で、『一郎休んでくれ、頼む』って言ってくれて……で、ツアーを中止することになったんですよね。」


山口「僕的には、1ヶ月休めば元に戻るだろうって思っていたんですよ。マネージャーとも、早い夏休みをもらっちゃったねみたいなことを言っていたら、そこからガクンと……カウンセラーの人が予期していたかのように。マネージャーもびっくりするくらい激痩せしたし。6〜7キロくらい痩せちゃって。本格的にだめだなってなって、1ヶ月復帰のつもりでいたスケジュールも全部一回中止にして。1ヶ月しっかり休んだら、8月からちょっとずつ回復してきて。仲間が来てご飯作ってくれて一緒に食べるとか、動けるようになってきて。で、9月10月とぼちぼちと調子も良くなってきて、ミーティングとかもできるようになってきて。11月16日で復帰っていうことにしようって、いろいろとやっていたんですけど。今療養中から復帰ってことになっていますけど、治りかけが一番危ないよって。よくなってくると、調子に乗ってスケジュール入れちゃったりして、それがこなせなくなることに対してまたネガティブになっていくよって言われていて。そんなヘマしませんみたいに思っていたんですけど……案の定そういう状況になっちゃっていて、今(笑)。」

職員「先週だ(笑)。」

山口「先週(笑)。スタッフとかも、スケジュールを入れたりする時にコントロールしてくれてはいるんですけど……やっぱり怖いから。ラジオとかだって、3ヶ月休みますって休めないじゃないですか。終わっちゃうじゃないですか、番組が。そうなるとまた新たに始めるのにすんごい大変だし。SNSも療養中は休んでくださいってみんな優しく言ってくれるけど、現実的にはフォロワー減っていくし、忘れられていくじゃないですか。だから動かさなきゃいけないっていうのもあるし。15年やってきたことを0にするわけにはいかないから、ちょっとずつやっていこうと思っても、なかなか難しいなって。」


山口「僕がこういう役割を担いながら、クリエイティブの方に戻るっていうのをなんとかしてそういう状況にしなきゃいけないなって思っているんですけど……そのためには、新しいことをやらなきゃいけないなって思っているんですよ、僕。」

職員「おー、来年?」

山口「そう。コロナ禍で言ってたじゃないですか、僕。コロナ前にはもう戻らないから、コロナ以降の新しい発明を音楽でしなきゃいけないって。ずっといってきてオンラインライブとかやってきたんですよ。結局自分たちだけ息巻いていて、なかなか周りで同じことをやってくれる人が生まれてくれなかったですけど。でもオンラインの可能性みたいなものって、何もしなかったことよりかは前進したかなと思っているんです。音楽業界の中で。可能性を見出せたかなと思っているんですけど。じゃあ、これを経てどう新しくなるかっていうのを来年のテーマにしなきゃいけないかなと思っているんですけど。それで気張りすぎると先週みたく休むことになっちゃうから(苦笑)。うまく付き合いながらやんなきゃいけないなとは思っているんですけどね。」

職員「うん。」

山口「ちょっとローテンションな時が続くようになったんですよ、僕。そのローテンションな時期が続くって、逆に10代の時っぽいんですよね。思春期の頃の世の中に対する諦めじゃないけど……子どもでいるっていうことから、早く大人になりたいって思う感覚。あの感覚の精神状態に近いなってちょっと思っていて。」

職員「ちょっと自由がない感じとかね。」

山口「そうそう。僕ね、サカナLOCKS!のせいでハイテンション一郎っていうのを身につけちゃったんですよ。ここ十何年で。だから、10代の頃の自分を再体験している感じではあるのかなと。ポジティブに捉えればね。だから多分、これクリエイティブのムードとしてはすごいいいムードなんだろうなと思って。」


職員「今年一年いろいろあった中で、よかったなってことあります?」

山口「よかったなって思うのは、田中裕介監督と……オンラインライブもそうだし、アリーナツアーの演出をやってくださった田中監督と今まで以上に……ミュージックビデオを作るっていう関係しかなかったのが、新しい映像表現として一緒に作品を作れたってことはめちゃめちゃでかかったなって。今までよりもぐっと距離が縮まったし。田中監督もすごいシャイな人だから、思ったことを遠慮してあんまり言ってくれないっていうタイプの人だったけど、衝突もしたし。いい意味で。そういった関係を築けたのはよかったなと。」


山口「あと、自分が選択して、決断してやってきたことの結果が出たっていうこと。チームとして結果が出たっていうのはすごい自信になったなと思っています。あと、自分変わったなって思うんですよ、これを経て。今までこだわっていたものに対しての気持ちの切り替えができたし、断捨離とかサカナLOCKS!でもやっていましたけど、心の断捨離も物の断捨離もうまくできたなって思うのと、人間関係みたいなものも整理できたなって気がしていて。やっぱり僕、あんまり人との繋がりが増えることって得意な人じゃないんだなと思って。冷静に自分っていうものを見れる時間があったっていうのはよかったかなと思っていますけどね。」


山口「まあでも、年内最後の放送で、雑談で終わるとは思わなかったですね(笑)。」

職員「はははは(笑)。でも今10代の山口一郎だから。来年20代ですよ、2回目の。」

山口「いやー、そうだといいんですけどね。第1回の放送の暗さがね……」

職員「あれはもう、今よりも暗いから(笑)。」

山口「1回目の放送流してくださいよ、今(笑)。あの時の俺からここに辿り着いてるのって……

(1回目の冒頭が流れて……) (2012年4月2日の授業)→[コチラ!])


『はい、それでは授業を始めます。席に着いてください。それでは黒板を読み上げます。皆さんが普段知っている "音楽" と同じ発音なのですが、僕は今、黒板に "音を学ぶ" と書きました。音を学ぶで、 "音学"。』


山口「ははははは!(爆笑) 『それでは黒板を読み上げます……』って(笑)。」

職員「(笑)」

山口「……あれ?こっちの方が演じてる?こっちの方が演じてますよね?」

職員「演じてるっていうか……そうだね(笑)。」

山口「ないなー。あの時の俺、ないなー。やっぱ今だなー。」

職員「やっぱ、そうね。」

山口「だから、自分は育ったんだなと思います。」

職員「この10年でね。」

山口「作り上げたんだと思う。それを今年療養したことで気づけたっていうのがでかいなと思います。」

職員「でも、10年作り上げていたら、もはやそれは本人だよね(笑)。」

山口「ふふふ(笑)。」

職員「本当の僕は……って言ったとしても、10年それやってそうなってたら、もうその人でもあるかなとも思うから。」

山口「そうっすね。」

職員「僕は、今の一郎先生の方がラジオ楽しいですから。全然。」

山口「そうですね、ラジオ向きになってきてますよね。」

職員「もう、ゴリゴリにラジオ向きになってますよ(笑)。」

山口「はははは!(爆笑)いやー……これで終わっちゃっていいんすかね?大丈夫すかね。」

職員「最後は雑談で。」

山口「そうっすね。来年のサカナLOCKS!もよろしくお願いします。山口・ニュー・一郎が誕生すると思いますので、来年は。よろしくお願いします。ということで、今回はここまで。音で学ぶ、音に学ぶ、音を学ぶ"音学"の授業、サカナクションの山口一郎でした。

SCHOOL OF LOCK!



サカナクション先生、今年も1年ありがとうございました!
来年もよろしくお願いします。

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