尾崎「うーんそうやって大丈夫かな?これでいいのかな?あってるのかなって気持ちがないと、どこにも繋がって行かないと思うし続いていかないと思うし、不安な気持ちがあるっていうことはドンドン続いて行く先があるっていう事だと思う。先があるから不安になるし。」
又吉「夢を…僕はずっと疑ったことはなかったかもしれないですね。だから叶うというよりかはそうなること前提で生きて行けば、もしかして寿命がきて死ぬかもしれませんけど…途中で終わったけど…『叶わんかった』にはならんというか…せこいんかな(笑)」
自分に才能があると思いますか?
尾崎「こんばんは。クリープハイプの尾崎世界観です。」
又吉「こんばんは。ピースの又吉です。」
尾崎「緊張しています。」
又吉「えっ?本当ですか?」
尾崎「はい…初めて会えました!思ったより優しい感じなのに…堂々としている感じがして、勇気がある感じがして、柔らかいけど芯が固い感じがして…。」
又吉「僕クリープハイプさんずっと聴いているんですよ。めっちゃ好きで1回お話ししてみたいなと思ってて、ちょうど呼んでいただけて、ありがとうございます。」
尾崎「駄目だろうなーと思いながらオファーさせて頂いたら、僕らの曲を聴いてくれてると聞いてビックリしました。歌詞にこだわって書いているので、緊張しますね。又吉さんに聴いてもらってると思うと。」
又吉「歌詞もめっちゃ好きで、めっちゃいろんな事に対する思いが強いじゃないですか。そこが僕としてはすごい好きなんですよね。めちゃくちゃいう時もあるじゃないですか。でもそれちゃんと信じて言ってるじゃないですか。」
尾崎「そうですね。」
又吉「そういうこと言ってもらえると、すごいなんかありがたいんですよね。」
尾崎「又吉さんの中にも怒りとか、悔しさとかそういう感情多いんですか?」
又吉「そうですね。なさそうに見えるじゃないですか(笑)割とありますね。」
尾崎「それはなんか、どこかで吐き出す場所とかあるんですか?」
又吉「そうですね…あんまり愚痴とか言うタイプじゃないんですけど、割と自分のライブとかそいう時ですかね。」
尾崎「でもそれって笑いにできますよね。芸人さんの凄い所っていうのは、そいういう自分が情けなかったりとか腹立ったエピソードを話して、その感情を“笑い”っていうものに消化できるところがいいなって思いますね。」
又吉「そうですね。僕もそう思ってるんですけど、やりすぎてお客さん引いてる所ありますけどね(笑)」
尾崎「あと…小説も読ませてもらって、本当に素晴らしかったです。何回もページをめくってるんですけど、この言葉をもっとちゃんと理解してからじゃないと先に進めないぞ!って何度も思って、戻って…『負けたくないな』っていう。この本にちゃんと向き合っていきたいなっていうのと、後は又吉さんはいろんな人は見てるけど、“興味ある人”と“ない人”というか、視点がすごくはっきりしてるのかな?と本を読んで思いましたね。」
又吉「あっ、多分そうですね。好き嫌いは割とあると思います。」
尾崎「人をすごい俯瞰で冷静に見てて、自分の事もそうだし、例えばこうやって向かいあって喋ってる時もここから(斜めよこの別の席)こっちを見てるって印象でしたね。」
又吉「そうですね。僕は10代の頃からわりとそうやったから、それがややこしかったのかもしれないですけど、尾崎さんはどうですか?」
尾崎「僕もそうですね。こうやって質問してても『もっとあるだろ』『もっとちゃんとしろよ』と思ってるし、中学生の時とかも誰も見てないのに、信号待ちしてるこの立ってる姿ダサくないかな?とかそんなことばっか思ってましたね。」
又吉「そうですね。これがいつか無くなるかな?と思ったけど全然なくならなかったですね。」
尾崎「それが『火花』にも生かされてるってことですかね?」
又吉「そうやと思いますね。」
尾崎「又吉さんはどんな10代でしたか?」
又吉「そうですねーやっぱり何でしょう…暗いのは暗かったんですけど、多分複雑な、ホンマに余計な事ばっかり考えてたんちゃうかな?と思いますけどね。」
尾崎「妄想とか?」
又吉「妄想もずっとしてましたし、小学生くらいで色んな人に『変や!変や!』って言われすぎて、それが恥ずかしくなってきて、中学で押さえよう、喋らんとこって思って、何言っても“変”って言われるから黙ってみたら、今度はめちゃ暗いって言われて…高校の時にようやく普通の高校生の振りができるようになりました。」
尾崎「なるほど。じゃあ1個ずつ段階を踏んでいったってことですね。僕も小学校の頃とか頭の中でいろんなこと考えすぎて、この人は本当はこういう事を思ってるんじゃないか…とかどんどん先まで妄想してって、自分っておかしいんじゃないかな?って思ってて。でもそれは口には出さなかったですね。でも又吉さんはそういう気持ちを小学生の頃から発言してたってことですか?」
又吉「発言してたり、行動に示してて。格好つけたいんですけど、格好のつけ方がずれてて、みんなドッチボールとか休み時間にやって、うまい奴がモテたりするじゃないですか、でも僕それをあんまりカッコいいと思わへんくて、グラウンドの端っこで1人何回もダッシュして、その1人でダッシュしてる事が一番カッコいいと思ってました。でも周りからはだんだん気持ち悪いって言われて…あとは、非常階段の下にスペースがあって、そこに土管があったんですけど、その上にスプレーで“ブラックピューマ”ってカタカナで書いてずっと座ってました。」
尾崎「!! その“ブラックピューマ”っていうのは意味も決めずってことですか?」
又吉「意味も決まっていないんですけど、黒いモノがカッコいいとか、早いモノがカッコいいとか思ってたんですよね。」
尾崎「僕は違いますね。そういうゴールもなく、ずっと迷ってる感じでした。いろんな考えもするけど、結局その考えが明確にカッコいいとか、カッコ良くないとか、おもしろいとか、おもしろくないとか、そういう所に行き着かずに、ずっとグルグル回ってどうしたらいいんだろう?って気持ちをずっと抱えてましたね。」
又吉「同じように考えはあったのかもしれないけど、でも僕は明確に小学4年生ぐらいまでは、“これがやりたい!”とかあったんですけど、5年生くらいから、これが思春期なんですかね?だんだん自分がなにやってても嘘っぽく感じるみたいな時期がありましたね。僕は早い段階で芸人になろうって思ってましたし。」
尾崎「それはいつからですか?」
又吉「小学校の6年くらいで芸人なりたいと思って、NSCの願書取り寄せて、中学卒業のタイミングで1回友達誘って。でも断られて、結局高校卒業してから入ったんですけど。」
尾崎「そうなんですね。」
RN ミルクリスピー(16) 東京都
又吉「めっちゃリアルでしたね。」
尾崎「そうですね。」
又吉「確かにそんな時あったな。こんなに何もうまいこといかん時あるかって思う夜も何回もあったし。そういう時にこそノート広げて、僕は小説は書けなかったですけど、一番濃いマジックで感情全部乗っけたみたいな短い言葉で色々書いてましたね。」
尾崎「それは何でもいいから、負けてるからきちんと書きたいって感じなんですかね?」
又吉「そうですね。文章にはなっていなくて、パッチワークみたいになっちゃうんですけど、言葉を置いていくとなんとなく感情が整理されていって、世界との向き合い方が自分の中で定まっていくというか。多分その周りの奴に負けてるって言ってたけど、そうやって小説書く事によって、自分はこんなん持ってたんやって分かるから、次もし、そういう場面がきて能力低くてって言われたときに、言い返す言葉が産まれてんやろうなって思いますけどね。」
尾崎「もう1回そこをやり直せるってことでもあるんですね。物語の中で。」
又吉「今度それをぶつけたら、また自分が想像してへんかった新しい違う角度からの攻撃が来て、またそれを物語の中とか頭の中で整理して、そしたらどんどん強くなって行くと思うんですけどね。」
尾崎「なるほど、子供の頃からお笑いしたいと思ってて、ずっと延長で続いて行って…大人になったタイミングってあるんですか?物理的な年齢じゃなくて、何歳ぐらいから今の考え方の又吉さんになったんですか?」
又吉「いやー、でも割と中2くらいから変わってないような気がするんですけどね。まだ自分でなんのことか分かってないんですよね。自分でも。もう少しで大人になるのかもしれないですけど(笑)」
尾崎「僕は遅かったんですよね。20歳前くらいまでは、さだまってなかったような感じがしますね。なんかうまくいかないことばっかりで…。子供の頃からプラモデルも作れないし、絵も描けないし、何もない中でも音楽だけはなんとかやってて、それでも結果がでないなかで、どうしようもないなと思ってるときに、それをそのまま歌うことができて。それが出来たのがそれくらいからなんですよね。」
又吉「書いてました?ノートにいろいろ。」
尾崎「書いてましたねー。でも小学生の頃から絵が書けないのがコンプレックスで、何も表現できないなって思ってました。文章書き始めたのは中学からなんですけど、それも自分の思うように書けなくて、18歳くらいまでは、結構納得いってなかったですね。」
又吉「へー。書いてるもんにですか?」
尾崎「そうですね、正解がないじゃないですか。“これであってるのかな?”っていう。自信があればあるほど、同じくらい不安になってくるので…。」
又吉「ネタとかはそうでしたけど、心の中のいろんな葛藤とか、何かに腹立ってる事とか、ノートとかネタ帳とかに書いてたんですけど、それは書き出す間はめちゃくちゃあるんですけど、書くと全然それが文章に再現されてないっていう感覚はありましたね。『こんなんちゃうねん!俺が言いたいのは!!』みたいな。」
尾崎「そうですね…書く直前まではあるけど、書いた瞬間に消えますよね。」
自分に才能があると思いますか?
又吉「あのー、だれかと比較したときに“才能ないかもな”って思うんですけど、1人で自分の考える事を考えてる時には、“自分は天才じゃないかな?”と思うときはありますね。比較するとあかんなーって思いますけど。」
ピース又吉先生が、踊り場に落書きを残して行ってくれました。
中学2年生14歳のころ、当時やっていたサッカーの背番号も14番。
「14」という数字が自分に意味があると思い、“14”という数字を、位を上げて大きくするのではなく、幹を増やし成長させていったんだそうです。
(ちなみに、机に書いていてみんなに気持ち悪がられたんだそうです(笑))
…ピース又吉先生ありがとうございました!
ぜひまたこの踊り場に遊びにきて下さい。