ツア−『RUN RABBIT RUN』の7カ所目、計12本目となるライブを福岡マリンメッセにておこなったBUMP OF CHICKEN。このマリンメッセ 2daysも、バンドとしては初めておこなう場所でしたが、2日間で約20000人を動員したこのライブも、今まで福岡で行ってきたライブハウス (ZEPP福岡、DRUM LOGOS etc…) でのソレと変わらない、お客さん一人一人と演奏が対話し繋がることのできた最高のライブだったように思います。
マリンッメッセ 2daysの初日。"マリンメッセ"ってだけあって港のすぐ側、つまり海の真隣に隣接するこのホールに吹きつける海風は極寒！しかもあいにくの雨模様!! 僕自身、かぶっていた帽子が何度も飛ばされそうになる勢いでしたが、それでも、開場の何時間も前からたくさんのお客さんが、物販や場所取りの為に雨具を装着して会場前に詰めかけていました。
寒風と雨に身を縮ませながら、それでも嬉々として朗らかに開場を待つお客さんの列を眺めていてつくづく思う事。「若い人が多いなぁ〜」。中・高生を中心に、小学生とも見受けられる子もチラホラ。若くて多感な時期のお客さんが増えてるなって実感するのです。
BUMP OF CHICKENがデビューしてからもう今年で6年目。結成からは10年 (これに関しては後でもっと言及しますが・・・) の月日が経ちます。ってことは、例えば15歳の時、『天体観測』で初めて "バンプ" を知ったっていう人がもう20歳！逆に、今15歳でこのライブに来ているお客さんは、"バンプ" がデビューした当時はまだ小学生ってこと。何か、まわりくどくなりましたが、つまり、これだけの時間の経過の中で、古いお客さんはずっと "バンプ" の音楽と時間を共にし、更にホントに多くの新しいファンが "バンプ" の楽曲との出会いを果たし、そして古い楽曲に辿り着いてくれているってことなのです。これは、"生き物" であるミュージシャンにとってとても大切で掛け替えのない事実。常に新しいファンとの出会いがり、その出会いは絆に変わり、その絆がより強くなって続いていく・・・。この尊い時系列こそは、どの時代にも、どの世代にも響くメロディーと言葉とサウンドを持つBUMP OF CHICKENの楽曲だからこそ成し得る偉業である！とすら思うのです。
ZEPP福岡でのライブの時は、短い時間を利用して、隣の福岡ドームのショッピングモールに出向いたり、目の前の砂浜でまどろんだりして開放的な時間を過ごしていたメンバー。このマリンメッセは初のライブ会場ってこともあり、入念なサウンドチェック＆リハーサル、そしてウォーミングアップに時間を費やしていました。
そして午後5時、会場の扉が開かれると、"その時" を待ち焦がれたお客さんが一斉に会場になだれ込みます。約1万人を収容するこのマリンメッセも、みるみる人・人・人で埋められていきます。その一人一人の "バンプ" への熱い想いが会場中に充満して、その熱で気温がグングン上昇している気がして。体感できる "熱気" に、心で感じる "情熱気" が加わって、これに "バンプ" の演奏が点火してこの空間は爆発するんだなぁという実感がわいてきます。
午後6時過ぎ、いよいよメンバーがステージに登場します。予想通り場内は大爆発！1万人の情熱がほとばしります。ステージ真っ正面の最後方のスタンド席でこの日のライブを見ていた僕にも、その距離の遠さからメンバーはホントに人形みたいな小ささにしか見えず、この距離を、"歌と演奏" はどうやって泳ぎきって届いて来るんだろう!?っていう不安が一気に襲ってきます。でも、『カルマ』のイントロギターがかき鳴らされた時、その不安は、突き刺さる音の放射にに射抜かれ砕かれ、木っ端みじんになっていたのです。リズムがズンズン身体に響く『STAGE OF THE GROUND』も、疾走感溢れる8ビートに心躍らされる『sailing day』も、切なく美しく奏でられる『ギルド』でも・・・、一曲一曲が様々な表情と感情を以て、会場中隅々までその生命の躍動を響かせていました。
途中、"藤原"がMCします。「こんばんはBUMP OF CHICKENです。福岡のみんな！どーもよろしくな！ところでみんな、今日は何の日が知ってますか？わかんないよな・・・。俺等、BUMP OF CHICKEN、いつバンドを結成したかってのがホントに曖昧なバンドなんだけど。でも、BUMP OF CHICKENとして、このメンバーで初めてステージに立ったのがちょうど10年前の今日、2月11日。つまり、俺等の解釈では、今日がバンド結成10周年ってことなんです！」。
突然のバンド結成10周年告白に、会場全体がざわめき立ち祝福の拍手がわき起ります。この「BUMP LINES」を読んでいる人達はもうBUMP OF CHICKENの歴史は重々知っていることと思うので省略しますが (知らない人はホームページや雑誌などでチェックしてみて！)、幼馴染みで出会った4人が、BUMP OF CHICKENを結成するずっと以前から長い長い時間を共にして、そして、全員26歳になった2006年2月11日に同じステージに立って10000人のお客さんを熱狂させている。これってホントに奇跡ですよね。この4人の歴史とストーリーに誰もが感動し、そのストーリーが奏でる演奏に誰もが心踊らされるんだなぁと実感したのです。そう、まさにBUMP OF CHICKENは "生き物" なんだって痛感したのです。そして、そのBUMP OF CHICKENという "生き物" が生み出す "生きた" 楽曲を聴いて受け入れ、共感してくれるリスナーがいて・・・、その瞬間からその楽曲達は聴いた人それぞれの中で息づき、聴き手とともにそれぞれのストーリーを育んでいくんだと思ったのです。"バンプ" の曲って、そんな息づかいと躍動感に満ち溢れた "生きた" 楽曲ばかりだと思うのです。
そして、アンコールの最後に"藤原"が再び結成10周年に言及します。「今日は、ホントに有難う！最後にもう一曲聴いて下さい。ホントに久しぶりに演奏する曲です。っていうかCDにすらなってないな。そう、俺等がインディーズで初めて出した4曲入りのカセットテープに収録されてた曲です。これはレアだな・・・。バンド結成10周年ってことでね。聴いて下さい！」。そうして演奏されたのは、もうかれこれ5年以上は演奏していなかった曲、その約5年前の演奏だってホントに久しぶりで、それも "バンプ" のホームグランド千葉にあってインディーズの頃の彼等の活動拠点「千葉LOOK」でのライブってことで特別演奏されたっていう、そんな超レアな楽曲、長くなりましたが、『BUMP OF CHICKENのテーマ』が演奏されたのです!!
これには僕等スタッフもビックリ！インディーズの頃は毎回ライブの度に演奏されていた楽曲ではあったものの、デビューしてからはその「千葉LOOK」でのライブで1回きりしか聴いたことのなかった楽曲が、この10000人が見つめるマリンメッセで演奏されるとは！
当時、下北沢や千葉のライブハウスの "低いステージの上" で、そのあまりにも誠実で美しい楽曲を "叫び唄った" BUMP OF CHICENという『へなちょこバンド』は、それから長い年月を経た2006年の2月11日、バンド結成10周年の日に、10000人の前で "とてつもなく高いステージ" の上で、でも、あの頃と全然変わらない『へなちょこバンド』の誠実さと実直さと不器用さと、美しさと優しさと健気さをそのままに、渾身の演奏で『BUMP OF CHICKENのテーマ』"叫び唄って" いたのです。嫌が応にも流れいく時間の中で、大切育み変えていくもの、そして、大切に育み変えてはいけないもの・・・。このマリンメッセでの初日のライブは、BUMP OF CHICKENがずっと貫いてきて、そしてこれからもずっと貫き続けるであろう信念の一コマが垣間見れた、本当に貴重なライブだったように思うのです。
Report: 吹野史斉 (TOY'S FACTORY)
