クリープハイプ全国ツアー
「熱闘世界観」ライブレポート
私にとってライブとは「特別な世界」だ。
そのアーティストを好きな人が沢山集まって
その人たちだけのことを考えて
歌って 踊って 叫んで
そんな幸せな時間を過ごせる世界だ
今回のクリープハイプのライブもそうだ
同世代っぽい男子女子、
どうみても私より小さい子、
そんな子を連れて来ているおばさん、
友達同士、カップル、または1人だったり
普通に生活してたら集まることないだろうな、と思うような
様々な人たちが「クリープハイプ」という共通点を持って
クリープハイプの作る世界を楽しみに開演時間を待っていた。
突然パッと電気が消え、
思わずワァッと声が上がる。
「ステージとスタンドには壁があると思っていて、その壁を壊したいのでよろしくお願いします」
そんな尾崎先生の挨拶からライブは始まった
イントロが流れた瞬間
いきなりクリープハイプの世界に
ぐっと引き込まれた感覚がした
曲に合わせて一斉にみんなが手を挙げる
ギターもベースもドラムも声も
身体全体に響き渡ってくるのが本当に幸せで
目の前でクリープハイプが演奏している世界に
感動して思わず泣いてしまった
ライブのいいところは
音源に入りきらない感情や思いが
いろんな形で見えてくるところだ。
例えば、顔。
歌の途中に何度も顔を上げて
マイクの外で叫んでいる尾崎先生がすごくカッコよくて、
嬉しそうでもあるし、怒っているようでも寂しそうでもあって
感情を爆発させているように見えた。
拓先生は激しい曲ではドラムを見て
髪を振り乱し腕を大きく振って叩き、
優しい曲ではたまに尾崎先生の方を向いてちょっと笑っていた
それと、照明。
AメロBメロの、あまり眩しくない控えめな照明から
サビに入る手前でいきなりパッと背景が綺麗な青に変わったり、
白髪のような、白い照明が天井を走ったり。
ある曲では、赤の照明だけでメンバーの顔がよく見えず、本当にけだもののように見えた。
他にも世界観のジャケットを意識させるような
オレンジと緑の照明を使っていたり
曲に込めた意味をさらに引き立てるような演出がされていた。
この照明のおかげで私は改めて曲を新鮮な気持ちで聴き、
さらにこの世界にのめり込んだ。
それから、ライブでしか見ることのできないアレンジ。
「津田沼の六畳間」は「大阪の六畳間」にアレンジされ、
曲中にも関わらず会場から大きな歓声が上がった。
尾崎先生が「なんだよ大阪こんなもんかよ」と、お客さんを煽る一幕もあった。
こうして客席にも一体感がどんどん出てきて
世界が1つになっていく感じがすごく楽しかった。
さらに、バンドの考えをMCという形で、
その人の声で、ちゃんと聞けるのもライブならでは。
尾崎先生はライブの終盤で
「楽しませることはバンドの責任」
「楽しんでもらいたくてやっているけどこれだけ頑張っても不満を言われることもある」
「まだ足りない人もあと数曲でしっかり楽しませるのでよろしくお願いします」
などと語っていた。
1曲目からこのクリープハイプの世界の楽しさに浸っていた私にとっては
この言葉は、楽しんでない人がいるかのような発言で
ワンマンライブでそれを言うか、と、かなり衝撃的だったが、
それでも楽しんでもらおうと懸命に演奏をするメンバーを見て
きっとクリープハイプは歌詞では棘があることを叫んでいるけど
本当はすごく優しくて、
聴き手のことを大切にして考えてくれるところが好きなんだろうなと思った。
幸慈先生がなんの前触れもなくイントロを弾き始めた。
その幸慈先生がとてもいい笑顔で
幸せそうにギターを見つめながら弾いている姿を見ると
初めて曲を聴いた時の感動を思い出し、
そしてアカペラの尾崎先生の声だけが会場中に響き渡ったときに鳥肌が立ち、
曲中涙が止まらなくなってしまった。
何の合図もなくメンバー4人が
お互いの方向を同時に振り向いて演奏する姿を見て
尾崎先生がこの曲に込めたメンバーへの思いが痛いほど伝わってきた。
アンコールでは尾崎先生とカオナシ先生のトーク(イチャつき?)で
歌う前からすごく盛り上ってしまい
それを見て曲変更しようとする尾崎先生に
「両方やって!」「どっちも聞きたい!」「終わりたくない!」「もう1回最初からやろう!」
といろんな声が客席から飛んでいた。
「朝までして!」という声には「それは何かエロいなあ!」と何ともクリープハイプらしい返しをして、会場は笑いに包まれた。
そうして演奏された、曲。
実は、今回1番私の印象に残ったのはこの曲だ。
私は今大学受験を控えていて
度重なる模擬試験のおまけに思うように伸びない成績が付いてきて
この曲の主人公の気持ちにすごく共感できた。
久しぶりに聴いたこの歌詞が胸に突き刺さった。
受験まで日も短くなってきたけど、1日でも多く、明日は良い日にしたい。
大切なこと忘れていた気がします。
教えてくれてありがとう、クリープハイプ先生。
そして「絶対また、すぐ来ます」と約束し
メンバー全員深々とお辞儀をしてステージの陰に消えていった。
ライブが終わったあとは私も周りのお客さんも笑顔で溢れていて
盛り上がり切って、感情を出し切った満足感に包まれていた。
こんなに幸せな気持ちにしてくれて、幸せな世界に連れて行ってくれる
私の心をしっかり掴んで離してくれそうにないクリープハイプ。
思い通りにうまくいかない毎日だけど
これからも自分の半径3メートルの中にクリープハイプの曲を置いて
泣いたり笑ったり怒ったり色んな感情を曲に重ねて、
またあの「特別な世界」に行ける日を楽しみに待ちたい。
Text by 智薪