2019年12月19日

大川小訴訟二審判決確定 遺族の思い

東日本大震災の津波で、児童74人、教職員10人が犠牲になった、宮城県石巻市、大川小学校。児童23人の遺族が、市と県に損害賠償を求めた訴訟で、去る10月、最高裁は上告を退け、市と県に約14億3600万円の支払いを命じた二審判決が確定しました。

学校の防災体制の不備がようやく認められたことになりますが、当時6年生だった娘のみずほさんを亡くした遺族の一人で、現在「大川伝承の会」の共同代表として、この場所での出来事を伝え続けている佐藤敏郎さんに、お話を伺いました。

◆「これがスタートライン」

「私は原告団ではないですけども、方向性は同じだと思っていて、いろいろ相談しながら、伝承についても検証についても進めてきました。私は教員でもあるので、あの判決を読めば読むほど、教員の誇りに向き合ってくれた判決だと思っています。よくあの判決で「学校の責任が重くなる」だとか「負担が増える」っていう人がいますけど、じつは逆ですよね。シンプルに“学校の先生がやるべきことをやりましょう”っていうことだと思うんです。分厚いマニュアルとか長時間の会議とか研修とか教育委員会の長々とした通達とか、それやめましょうってことじゃないかと思うんですよね。むしろ全国の先生たちは、あれで自覚を新たにしたと思います。スタートラインですよね。感謝しています。」




二審判決では、“校長らには児童の安全確保のため地域住民よりもはるかに高いレベルの防災知識や経験が求められる”とも指摘。まさに佐藤さんの言うように、“学校の先生がやるべきことをやりましょう”ということが示されました。

いまも被害に遭ったままの姿を遺す大川小学校へは、全国から多くの方が訪れ、佐藤さんはじめ「大川伝承の会」の皆さんは、語り部として、
ここで起きたことを伝え続けています。傷みがひどくなる一方の校舎。二審判決確定によって、保全が進むことにも、佐藤さんは期待を寄せています。

◆「大事なのは津波だけじゃない」

「1月に整備計画っていうのが公表されたんですけど、すごく表面的な計画だったような気がするんです。なんといっても「学校防災」「防災教育」っていう言葉が入っていないんです。津波の恐ろしさを伝える施設だっていうのがすごく強調されていて、でもここで案内をしたり考えたりするたびに思うんですけど、本当に恐ろしいのは津波だけじゃないような気がして、簡単に登れる山があったのに時間もあったのに情報もあったのに、動けなかった油断であるとか、あるいは組織とか立場とか、その場の空気とか、恐ろしいのは多分そっちの方ですよね。で、それに向き合って、命を守る、本当に大事なのは何なのかっていうのを考える伝える場所だと思っているんですけど、そういうことが入っていない。それはもしかしたら、裁判中っていうことももしかしたらあったのかもしれない。裁判が終わるまで何もできませんっていうことがすごく多くて、話し合いも出来なかったです。」


保全計画の全貌はこれから明らかになっていきますが、今回の二審判決確定によってそれが加速していくのかもしれません。それが悲劇を繰り返さないための学びの場としての保全であることを願ってやみません。

パーソナリティ 鈴村健一

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