2019年6月28日

福島県大熊町 佐藤信康さん3(大熊のこれから)

引き続き福島県 大熊町の「いま」をお伝えします。

およそ8年ぶりに一部地域で避難指示が解除された大熊町。6月に、災害公営住宅への入居がはじまり、町は、再生へ一歩を踏み出したところです。

ただ、今回取材した大熊町大川原地区は、役場の近くに仮設のコンビニが1軒。それ以外にお店は見当りません。生活に不便はないのでしょうか。大熊町・大川原地区の佐藤信康さんに聞いてみました。

◆不便さは感じない
大熊全体で言うと不便かもしれないんですけれども、大川原ってもともとこんな感じなんですよ。買い物にしても近くにスーパーが全然ないですし、富岡のほうに買い物に行っていたのは前から変わらないんですよね。買い物って毎日するわけではないので。こちらの人って家の冷蔵庫はデカめで、1週間分をまとめて買ってきたという感じでそんなに頻繁に買い物に行くわけでもないので。割と特に変わらないです。


大熊町役場によりますと、7月には生活雑貨店と家電店が新たにオープン、また町の復興計画では2021年に商業施設や交流施設、宿泊・温浴施設も造られる予定!徐々に賑やかになっていくといいます。また、大川原地区は医療機関がまだないため、隣町の富岡の病院へ行ける巡回バスの運行も始まっています。

一方、放射線量についてはどうなのでしょうか。

◆山のほうの線量は高いが・・・
(話:佐藤信康さん)ここは1回除染していただいているので線量的には全然ないですね。ただ山のほうに行くとそれなりに数値が高いので。(山に入るなと言われますか)いや、別に。用があるなら入るかなという感じで。私はもともと狩猟をやるので山に入りたいんです。(狩猟こそダメなんじゃないですか) 食べられはしないので、今そこで罠をかけていますけれども有害獣の駆除という形ですね。ここのキウイも去年は実がなったので測ったら全然(線量が)出なかったので全然食いましたよ。


いま39歳の佐藤さんは、「大熊町以外の選択肢が考えられなかった」と、当然のこととして、街に戻ってきた方です。

ただ、町に戻ってきた方 と これから戻る見込みの方のうち、6割は高齢者世帯。そして、大熊町が行った最新の調査では町民のうち今後、町に「戻りたいと考えている」14.3%、「まだ判断がつかない」28.4%、「戻らないと決めている」 55.0%。

温浴施設ができるなど前向きな話題も多いのですが、お年寄りが住みやすく、若い世代が戻ってくるための「働く場所」「子育ての場」など、今後も解決すべき課題は多いようです。


※佐藤信康さん(左) 父親の佐藤定信さん(右)

2019年6月27日

福島県大熊町 佐藤信康さん2(いちご植物工場)

引き続き福島県 大熊町の「いま」をお伝えします。

原発事故以降 およそ8年ぶりに一部地域で避難指示が解除され、災害公営住宅への入居もスタート。大熊町は、町の再生へ一歩を踏み出したところです。

中でも大きなトピックが、町の新たな事業 イチゴ栽培の植物工場です。最新の技術で作られた安心安全なイチゴを新たな産業として成長させようとしています。

お話を伺った佐藤信康さんは、大熊町役場の職員からこの植物工場を運営するネクサスファームおおくまに転職した方。町の新しい産業に期待を寄せています。

◆「雇用」が町にもたらすこと
一番最初の農作業の足がかりになるのかなと。あとは雇用ですね。復興公営住宅に入居される方がたくさんいると思うんですけれども、入っただけでずっと家の中にこもっていても意味がなくなってしまう。そういった方々が働く先が必要になってくるということもあると思うんですよね。高齢の方も多くフルタイムは難しいと思うので、イチゴの摘み取りや手入れ作業に来ていただく形で、1日数時間でもパートで入っていただければ当然こちらとしてもありがたいですし、働く先があれば家にこもってテレビを見ているだけじゃなくて、「今日も仕事行かねっかなんね」と家から出る場所にもなるかなと思っています。


佐藤さんは、生まれも育ちも大熊町。避難指示解除後はいちはやく大熊へ戻り、4月からの新しい職場にも、やはり大熊を選んでいます。佐藤さんが地元にこだわる理由とは。

◆戻るのが普通だと思っていた
最初からイメージがわかなかったんですね、自分が「他の場所」に暮らしているイメージは。なので、震災で避難した直後から、いつ帰れるかなと。解除になれば当然戻ってくるのが普通だなということで戻ってきただけなんですけど。(奥さんは?)一緒に暮らしているので。(帰ることについて意見は?)2人とも変わらないですね。妻は震災後に知り合っているので。もともとは千葉から復興支援員として町に来た方なんですけれども、お母さんがもともと隣町の双葉出身で、昔からこの双葉郡の方には夏休みでも冬休みでも長期休みの時には、ばあちゃんちに遊びに来ていたというので、縁もないというわけではなくて。



※佐藤信康さん(左) 父親の佐藤定信さん(右)

ちなみに佐藤さんが働く植物工場は春の時点でおよそ10人ほどの方が社員として働いていて、その多くが20−30代の若い世代とのこと。佐藤さんもまだ39歳。若い世代がこうして活動しているというのは町にとって良いことですが、一方、災害公営住宅に入居した方の多くは年配の方。今後は、大熊に戻って生活する高齢者の方の生活のケアも課題です。

明日もこの続きをお伝えします。
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パーソナリティ 鈴村健一

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