2015年3月31日

3月31日 女川トレーラーハウス EL FARO(2)

宮城県・女川町のトレーラーハウス型宿泊施設『エルファロ』は震災後に開業し、4軒の旅館経営者によって共同運営されています。




理事長の佐々木里子さんは元々、女川の『奈々美や旅館』の娘として、旅館を手伝っていた方。生まれ育った旅館は、津波で流されてしまいましたが、佐々木さんは、それでも変わらない、女川の魅力をこう語ります。

◆女川の自然「あるある」
(元々の旅館は)女川地域医療センターの下だったんですけど、サンマ船や漁船が入ると甲子園球場のようにサイレンが鳴るんです。水揚げがはじまるよという合図なんですけど、それが聞こえるとトラックが待機して水揚げのシーンが始まる。それが女川の音だなと。海岸が現気になっている音だなと感じていました。ウミネコが山の方へ飛ぶともうすぐ雨。海岸の方に飛んで行くと晴れわたる。それを天気予報にしていた。子どもが「海水浴に行きたい」というと、ウミネコを見ておいでと。空を見上げてウミネコが山へ飛んで行ったら本当に雨が降るんです。女川あるあるですかね(笑) 夜は本当にこういう夜景なんですね、空が星が降るような風景で、背中に山を背負っているので裏で鹿が鳴いたり、タヌキがちょろちょろしたりリスが動いたり、そういう自然の中にいまこのエルファロがあって。鹿はピーンって鳴くんです。自分たちはここにいるからこないでね、という警戒の音らしいです。だんだん私も自然から学ぶことが多くなって。ウミネコもそうですけど。


一方、女川はJR石巻線の全線開通、女川駅の再開で、大きな変化の中にいます。佐々木さんは、震災後に芽生えたもう一つの魅力が 女川にはあると話します。


◆女川の「人」に会いにきて!
通過する町ではなく、やっぱり足を止めて頂きたいなと思う。ちょっと泊まって頂いて。女川町の魅力よりも町民の魅力がすごい町なので、震災前の女川も元々大好きなんですね。隣近所のおじちゃんに怒られたり、うちに帰ったら親にバレているんじゃないかとドキドキしながら家に帰ったり、下町みたいな魅力だったんですけど、震災後の女川町は町もそうですけど町民が好きなんです。すごく人付き合いのできる町になったかなって。一人がなにかをしようとすると職種関係なく、「自分たちはこれが協力できるよ」とか「これも面白いんじゃない」とか、どんどんアイデアを出してくれて形になるまで手伝ってくれて。そういう人の交流が強くなっている町だと思うので、それは震災前よりも今の方が好きですね。色んな方とお話をして、町を見ながら、あの人元気にやってるかなと立ち寄ってもらって、親戚みたいに第二の故郷みたいになればいいなと思っていますね。


明日も、女川町「エルファロ」 佐々木里子さんの声をお届けします。

★EL FAROサイト

2015年3月30日

3月30日 女川トレーラーハウス EL FARO(1)

再生へむけ歩み始めた宮城県・女川町からのレポート。この町で生きる人の声をお届けします。


お話を伺ったのは、佐々木里子さん。
佐々木さんは結婚を機に女川を離れ暮らしていたのですが、生まれ育った実家…旅館への想いが強く、2003年頃からはふるさとへ戻り、女川でご両親の旅館を手伝っていました。

そして現在。佐々木さんは女川で、新たな宿泊施設を運営しています。
ご両親にずっと言い出せなかったことを、実現するためです。

◆両親と交わせなかった一言
わたし個人の気持ちでいうと、両親と旅館をしている時に、手元に子どもがいて両親と旅館をやっている時がすごく幸せな時期だったんですね。主人が単身赴任している時に8年間女川でやらせてもらったんですけど、その8年間を津波ひとつで失いたくなかったというのかしら。両親と交わせなかった一言があって、「継いで欲しい」と両親も言わなかったし、私も継ぎたいと言えなかった。嫁に出た立場だったので。言いたいけど言えない。禁句じゃないんですけど、言っちゃいけないよなと。それを言えなかったけど実現したいなと切り替わったのが私の中での原動力になったのかなと思います。


いま佐々木さんは、旦那さん・お子さんとともに隣町・石巻で生活をしながら、女川の「エルファロ」という宿泊施設を切り盛りしています。旅館の仕事を再開できたのは、ご家族の支えがあったからだと話します。

◆再起のきっかけ
父親が震災で無くなって三月中に見つかり、でも母親はずっと行方不明で見つからなかった頃、なにをしていても涙が出てくるんです。子どもたちとご飯を食べて「おいしいね」と言ったとたんに涙が出たり、テレビを見ていて楽しいと思った瞬間に涙が出たり、どこにスイッチがあるのか自分でも分からなかった。ある日の夜、カーテンを閉めようとしたらお月様が見えた。ちょうど9月で。まんまるのお月様が見えて、そのお月様を見たとたんにお母さんはいまこの月をどこから見ているんだろう、その耳には何が聞こえるのかな。ガレキの擦れる音か、水のじゃぶじゃぶ聞こえる音かなという考えが、グッと一瞬にして自分の中に入ってきて、振り向いたら子どもたちが「おかあさん泣いていいよ」と。いつも泣いているのを見ていたからね。「お母さん、がまんしないで泣くといいよ」って。その時に、あれ、かわいそうなのは私じゃない。親の姿を見ている子どもたちだ、一番辛いのは子どもたちかなって。だから子どもたちに、お母さんが笑える場所を見つけていい?旅館がやりたいんだけどと話したんです。すると「お母さんがやりたいことをやるのが一番だから」と子どもたちが応援団になってくれた。両親に継ぎたいとは言えなかったけど、勝手に継いでやろうと思って。震災の都市の年末には決意していましたね。本当に子どもの存在は今の私の原動力で、継ぎたいという気持ちを思い出させてくれた存在ですね。


こうして、震災の翌年2012年12月。トレーラーハウス型の宿泊施設「エルファロ」が開業。佐々木さん含む、女川の4つの旅館経営者が共同運営しています。
場所は、女川駅を横目に、内陸へ1キロほど入ったあたり。40棟のカラフルなトレーラーハウスが、並んでいるとても素敵な宿です♪
  
明日も、女川町「エルファロ」 佐々木里子さんの声をお届けします。


★EL FAROサイト
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パーソナリティ 鈴村健一

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