2015年4月8日

4月8日 牧浜の「完熟牡蠣」阿部貴俊さん3


宮城県 牡鹿半島 牧浜の牡蠣漁師・阿部貴俊さんは、産卵直前で一番栄養価が高いとされる、春から初夏の牡蠣を「完熟牡蠣」と名付け、新しい牡蠣養殖に挑戦を続けています。先日、取材で伺った時も、まさにその作業の真っ最中でした。美味しい牡蠣を育てるために阿部さんはどんなことをしているのでしょうか。

◆生き物としての本能を引き出す
今のメインの作業が、選別した殻つきの牡蠣のカゴの中の数を減らす作業。あとは春にかけて水深を工夫していい状態を保つような育て方をする作業。色々なことをやって、牡蠣に刺激を与える。厳しい状況にすると牡蠣もそれに耐えようとする生き物としての本能がある。その本能を引き出すようなことを人間が手を加えてやる。それが良い牡蠣になると思う。


さらに牧浜では、美味しい牡蠣を育てるための、いい自然条件が整っているといいます。

◆メイドイン牧浜の牡蠣を世界へ
(これは)牡蠣のあかちゃん、種牡蠣をぶら下げている。いまは干潮なので牡蠣がむき出しだが満潮になると水の中に入る。牡蠣の赤ちゃんは夏、8月くらいに成長して自然となにかにくっつく性質がある。そのタイミングで海に沈めるとホタテの殻にくっつく。くっついたやつを秋から翌年の春まで厳しい環境に置く。抑制棚という言い方をしていて、干潮時にはむき出し、満潮時は海の中に入る。牡蠣としては過酷な条件にさらされている。なぜ抑制棚と呼ぶかというと、こういう条件にしておくと牡蠣は育たない。弱いものは死んでしまい、牡蠣が大きくなりたいが条件があまりに厳しくて大きくなれない。春になった時に棚から牡蠣の赤ちゃんを引き上げて海に沈める。そうすると牡蠣は半年間干満の差を利用して厳しい条件に置かれていたのが、24時間いきなり海の中に入りっぱなしに也、一気に成長する。ぐんと牡蠣が大きくなる。そうやって強いものだけを残し、成長を促進させるために厳しい環境に置いて抑制させる。今の養殖牡蠣の大きな作り方の流れだが、こういう条件は他の浜にはない。リアスの海はすぐ深くなっちゃうので遠浅の海が無い。他の産地では種牡蠣を買い上げて育てるところも多いので、この牧浜の私が作る牡蠣は「メイドイン牧浜」と呼んでいる。牡蠣の赤ちゃんから出荷までを目の前の海で育てる。私が作る牡蠣はメイドイン牧浜.将来的にはラベルにもそうネーミングを入れようと思ってる。色んな環境下でも常に目が届くところに牡蠣があり、どういう環境に置かれているのかを観ながら育てているので色んなチャレンジが出来ると思っているので、より良い牡蠣を作って行きたいなと思っている。



美味しい牡蠣作りに試行錯誤を繰り返す阿部さんは、「自分の先生は自然」だと話します。浜ごとに海流も地形も違うから、他の浜のやり方は牧浜では通用しない。失敗したり成功したりしながら、日々自然と向き合い、考えるのが楽しい、と話しています。

2015年4月7日

4月7日 牧浜の「完熟牡蠣」阿部貴俊さん2

宮城県 牡鹿半島 牧浜の牡蠣漁師・阿部貴俊さん。
春から初夏にかけての牡蠣を、「完熟牡蠣」と名付け、これまでの牡蠣養殖の常識を変えようと、チャレンジを続けています。東京の会社に辞表を出し、父親のあとを継ぐため故郷へ戻った理由は、4年前の震災でした。


◆自称「営業漁師」
半導体の会社でトータル20年サラリーマンをやっていた。震災と津波で全てのものが流されたんですけど、この海をなんとかしたい、牡蠣を育てたいという思いがあって会社を辞めて戻ってきました。ただ、当時は牡蠣を作るだけでは売れなかったので、自称「営業漁師」と自分で名乗っていている。今までの漁師は海へ行って水揚げして終わっていたが、私はせっかく自分で獲ったものをどなたが食べるのか分かりたい、自分が獲ったものを評価してほしい、評価が聞きたいという思いがある。自分自身が販売に加わることでエンドユーザーの顔が見えるようにすることで、作るところから食べるところまでを一気通貫してやるのが目標。牡蠣を年間通じて購入する会員を集めて、SNS上で情報交換をしながら、浜の話や私の取り組みを発信する。今年はこんな牡蠣になりました、こんな牡蠣を育てていますという話をしながら実際に送って食べて頂き、感想を伺う。その中でより良い牡蠣をどう育てるのかのアイデアも頂く機会も多い。


阿部さんは現在、60人の年間購入会員がいるそう。
牡蠣を育て、自らお客さんと向き合う営業漁師として、完熟牡蠣の生産や販路の開拓は、すべて自分の力で続けています。

◆誰もやったことないことをやる
完熟牡蠣はわたし一人の取り組み。大変というか、今までやったことがないので、その作業をした結果、売れるかどうかの保証は今は無い。なぜなら市場性が見えて来ないので。かつ買い取ってくれる人がいないから自分で売るしかない。それをやること自体が自分のビジネスに結びつくかは誰にも分からない。だから現時点ではやる人がいない。だからいまこのタイミングでそんなことをしてどうなるんだ、という風に思われていると思うのだが、私は誰もやったことがないことをやらないと、新しい水産業の形は作れないと思っている。既存のことは今まで何十年もやりつづけてきたこと。今まで誰もが挑戦したことが無いことに目を向けて、私なりの独自の養殖方法を見つけ出して、ここにしかない牡蠣の味を創りだしたいなと思っている。不安ではない。新しい水産業をやるためには必要なことだと思っているので。そのためにわざわざ戻ってきましたから。



LOVE&HOPE、あしたも、阿部貴俊さんのインタビューお伝えします。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 612 | 613 | 614 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN