2020年3月18日

「復興五輪の背後に横たわる“福島の課題”」?

引き続き、「復興五輪の背後に横たわる“福島の課題”」。福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんのお話しです。

「オリンピックの陰で“置き去り”にされてしまっている方々も少なくない」という天野さん。

じっさい、今月末に4つの町村で仮設住宅の無償提供が終わるなど、避難者支援打ち切りの動きが加速する一方、一時期より激減したとはいえ、今なお4万人あまりの方が、故郷を離れて避難生活を余儀なくされています。

9年が経っての今の状況について、天野さんのお話です。


◆「課題は格差」

「いつまでそういうことを引きずってるの?っていうふうに、実態をよくわからない、目にすることが少なくなってますから。風化が進んでですね。そんな風に思われている方々も少なくないんだと思うんですけれども、でも実態としては、引きずっているというのではなくて、本当に“置き去り”にされてしまってるので、課題がそのまま放置されている・・・丸9年経ってもじつはいまだに仮設にお住まいの方がいらっしゃる。結局たとえば復興公営住宅に入居するにもお金がかかっていく。つまり生活困窮の方々がワインの澱のように下の方に沈んでいくっていう状況がまだあるわけです。でも一方でいつまでもいつまでもこうしてはいられないよねっていうふうに思われて立ち上がっている方々も少なくないんです。私が今これは何を問題にしているかというと、その「格差」なんです。立ち上がろうとしてる方々もいるもう一方で、3月11のあの日のまま一歩も動けずにうずくまってる方々がいる。この国はいわゆるこの少数の方々、マイノリティを切り捨てる国ではなかったはずですよね。そういう時だからこそ、みんなで隙間を埋めあっていく繋がりあっていくっていうのは、ますます求められているという風に思いますね。これは何も災害だけではなくて、日本の社会が抱えている課題が顕在化するということですね。先取りして。これもどんどんそういう日本のあまねく地域が抱えていく課題が、被災地全体ではもうすでに常態化してきている。逆にいうとその課題に対して先進的な取り組みを行っていけば、福島県が一つのモデルになっていくのではないかという風に私は考えています。」




たとえば若い世代は、この9年の間に、避難先や、新しい場所に住処や仕事を得て人生をリスタートしたり、あるいは避難指示が解除になった故郷に戻って、故郷再生に力を注ぐことも出来ます。そうしている方も多いです。高齢者をはじめ、そうじゃない人との「格差」を、どうめていくのかが課題なのです。

そしてこの課題の解決は、少子高齢化が進む日本の根深い問題の解決にも通じます。

『LOVE & HOPE』、明日も、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんのお話です。

2020年3月17日

「復興五輪の背後に横たわる“福島の課題”」?

今日からお届けするのは「復興五輪の背後に横たわる“福島の課題”」について。

今月、全町避難が続いていた双葉町の一部が避難指示解除になったほか、富岡町や大熊町でも避難指示解除のエリアが広がり、そして不通となっていた常磐線の一部も運行を再開、全線が開通しました。

避難者の数も現在4万人あまり。最も多かった時に比べて、4分の1の数にまで減少しました。復興が進んでいる印象を受ける反面、今月末には4つの町村で、仮設住宅の無償提供が終わるなど、避難者支援打ち切りの動きも加速しています。

こうした福島県、とくに双葉郡の住民の現状について、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんにお話しを伺いました。


◆「置き去りにされてしまっている人も少なくない」

「福島大学で双葉郡の方々に調査をしたことがあって、これがいちばん直近の調査になるんだと思うんですけど、「あなたは将来の自分の仕事とか生活の希望についてどう考えてますか?」「大いに希望がある」とか「希望がある」と答えた方は16.1%だったんですね。それに対して「あまり希望がない」とか「まったく希望がない」とお答えになった方は半分を超えてるんです。50.4%ということで。これどう考えるかってことですね。丸9年ですよ。もういま10年目に入ってるわけで。一方で4万人弱というふうな言われ方をしてますよね、避難者の方々が。あれも実は数字のトリックというのがあって、たとえば仮設住宅にお入りになっていた、あるいはみなし仮設・・借り上げ住宅ですよね、そこにお入りになっていたその方々が、たとえば生活を今までもずっと送ってるわけですから、お子さんなんかを抱えてると、ちょっと手狭なので引っ越しをしたいっていって避難先の東京都で引っ越しをしました。あるいは福島県内に来て復興公営住宅に入居しました。これ住民の方々、避難者の意識っていうのは、避難をしてるという意識とはズレがないだと思うんですけど、でもそれはじつは避難者からカウントを外されてるんです。それこそ2年半ほど前は10万人近くいたのに、なんでこんなに急激に減るんだろう?故郷に戻ってきたのかな?というと、じつはそんなことはなくて、カウントから外されていた。つまり、オリンピックはオリンピックで大事な行事でそれを楽しみにしてらっしゃる方々がいるのはもちろんよくよくわかっていますし、その意義も承知しているところですけれども、一方でそうやって、情緒的な言葉ですけど、“置き去り”にされてしまってる方々も、少なくないんだっていう風なこと、ですよね。」





「復興五輪」と位置付けられる2020東京オリンピック。その聖火は、今月26日、福島県のJヴィレッジをスタートします。その陰で“置き去り”にされる人がいてはなりません。

明日も、福島大学「うつくしまふくしま未来支援センター」特任教授、天野和彦さんのお話です。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 5 | 6 | 7 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN