2015年7月15日

7月15日 映画『波伝谷に生きる人びと』 我妻和樹監督(1)

今朝はまもなく公開がはじまる、一本の映画についてお伝えします。


映画のタイトルは、『波伝谷に生きる人びと』
波伝谷は、三陸沿岸に突き出す、戸倉半島の北側。宮城県南三陸町の小さな集落の名前。リアスの豊かな海に恵まれ、カキやホヤの養殖が盛んな集落。徐々に人口が先細るなか、古くからの慣わし・文化を守りながら波伝谷の人々は生活を営んできました。

そんな集落に震災前から寄り添い、カメラを通して見つめてきたのが、我妻和樹監督(29)。出身は宮城県の内陸部・白石市。波伝谷とはもともと関わりも無かった我妻監督は、映画作りのきっかけをこう話します。




◆波伝谷の人々の営みを伝えたい
なぜ波伝谷で映画を作ることになったか。仙台の東北学院大学の文学部歴史学科で民俗学を学んでおり、人の暮らし・生き方を探っていた。大学入学時に民俗学ゼミと歴博の共同による県内の一地域を徹底的に調査して本を作るプロジェクトが立ち上がり、たまたま学生としていったのが、波伝谷だった。三月の第二日曜日に全戸を獅子舞が回る行事があり、そこではじめてその地へ行って見たもの衝撃的だった。全戸・全世代が行事に主体的にかかわり獅子舞を踊る。海で鍛えられた男たちが鮮やかな装束で踊る姿のカッコよさ、無礼講で一軒一軒ずかずか入りお酒を飲む姿、女の人はそれぞれが個性的な料理で振る舞う。そこに人と人とのつながりの強さが見えてきた。お祭が行われる背景にある日常の暮らし、人間関係とは一体どういうものなのかということで三年間かけて調査した。調査の成果を本としてまとめたが、完成したと同時に大学を卒業。波伝谷の魅力、生きる人たちの生き様を映画にしたいと2008年3月に大学卒業後映画製作を始めた。


こうして我妻監督は、2008年以降も波伝谷に通い続け、そこで暮らす人々の営みを、記録し続けました。震災後も、波伝谷での撮影を続け、あしかけ6年かけて『波伝谷に生きる人びと』を制作。完成した映画はすでに宮城県沿岸部11か所で上映会が行われ、8月1日からは東京・ポレポレ東中野で公開、さらに、順次全国での上映が予定されています。

★ ★ ★ ★ ★

LOVE&HOPEではこの『波伝谷に生きる人びと』の試写会を実施します。
震災前の宮城県沿岸部の小さな集落にはどんな営みがあり、人々はどんな想いで集落を守っているのか、貴重な映像とともに描かれた作品です。

●日時:7月26日(日) 12時30分開場・13時スタート
●場所:東京 東中野「ポレポレ坐」 http://za.polepoletimes.jp/
●ご招待:15組30名様
●上映前に我妻監督・高橋万里恵によるトークセッションもあります

●映画サイト http://hadenyaniikiru.wix.com/peacetree
希望される方はこのブログのメッセージフォームに、「試写会希望」と書いてご応募ください。
当選者にはメールでお知らせします。締め切りは7月19日(日)。


明日も、『波伝谷に生きる人びと』 我妻監督のインタビューをお届けします。

2015年7月14日

7月14日 いわき市「たまごの郷」(2)

福島県いわき市の「たまごの郷」。
震災前は、福島県大熊町で養鶏場を経営、卵の直売所とスイーツの販売を行っていた大柿純一さん。故郷を離れて避難生活を送りながら、事業の再開にこぎつけたのは、昨年5月です。

いわき市内の養鶏場でニワトリ1万2000羽を飼育し、新鮮な卵をふんだんに使ったスイーツを販売するお店もオープンしました。養鶏場の規模は大熊町時代の10分の1になりましたが、大柿さんにとっては、まさに「大きな一歩」。

原発がある双葉郡出身の養鶏農家で震災後事業を続けているのは、大柿さんただ一人です。

◆毎日夜になると夢を見る
大熊町はほんとうにのどかというか、梨とキウィフルーツの産地で、果物のおいしい町だった。温暖な気候で、海水浴場もあって、夏になると海開きがあったりお祭りがあったりした。
つい2週間ほど前に、1年ぶりに自宅に戻ったが、家ももうすぐつぶれるんじゃないかというような感じだった。家中カビだらけで、農場も半分は倒れかかって、ニワトリも死んだままの状態。言葉にできないというか、無残だなと。震災の3か月前に親父が亡くなっているので、その墓参りをかねての帰郷だった。わたしもいずれはその墓に入るつもり。
毎日夜になると震災前の夢を見る。そういう点では気持ちの整理がついていないのかもしれない。いまは仕事が忙しくて、振り返っても…という感じ。一か月ほど前に息子が戻ってきたので、できるだけ前向きに行こうかなと。三代目がやるということだから、前に進めないとだめだなと思っている。過去は過去として、これから先のことを考えていかないと。
やっぱり息子がいなければ(農場とお店を)再開する気にはならなかったと思う。いまから設備投資をして、借金を背負って、果たして返せるかなというのがあったと思う。

  
大柿さん。いまでは、三代目となる息子さんと机を並べて仕事をしています。

原発事故の影響でいまも全町民避難が続く大熊町。震災で大きく変わった大柿さんの仕事と人生ですが、いまは、いわき市での再出発に全力を傾けています。

お店はJR常磐線の泉駅から歩いて10分ほどのところ。
水族館「アクアマリンふくしま」もすぐ近くです。

◆ニワトリの飼育にはこだわっている!
まず卵の直売所なので卵を販売している。「いわき地養卵」という卵。ニワトリの環境にこだわり、ニワトリが入る鳥小屋は冬は暖かく夏は涼しい環境になっていう。ゆったりとした環境で飼っている。エサにもこだわり、よもぎや海藻などをやることで、卵としては甘くて味の濃い、生臭さのない卵になっている。
お菓子では、一番の売れ筋はプリンで、あとはカステラクーヘン。バームクーヘンもあるのだが、うちはカステラ上のバームクーヘンになっている。いわきにお越しの際はぜひお立ち寄りいただければうれしいですね。



いわき市内にニューオープンした「たまごの郷」、外観がかなりインパクトあります。デザイナーさんに頼んだら、驚きのデザイン、驚きの建築費にびっくり。「でも一目で“卵のお店”とわかるから、もとはとれているんじゃないかな」と大柿さん。飄々とした語り口の中に、仕事への誇りと故郷への思いが詰まっていました。

たまごの郷 詳しくはコチラへ

***

LOVE&HOPE、明日は、宮城県南三陸町、震災前の街や人々の姿を記録した、ドキュメンタリー映画「波伝谷(はでんや)に生きる人びと」、監督のインタビューをお伝えします。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 579 | 580 | 581 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN