2015年7月17日

7月17日 映画『波伝谷に生きる人びと』 我妻和樹監督(3)

今朝も、8月1日から東京・ポレポレ東中野から公開スタート、この番組でも試写会を行う映画『波伝谷に生きる人びと』の監督インタビューです。

宮城県南三陸町の小さな集落・波伝谷。そこには、人口減少が進む中、集落の伝統を守り暮らしを営む人々がいました。しかし、およそ80軒あった集落は震災で壊滅、16名の方が犠牲に。そしていま、波伝谷という共同体は、大きな変化の中にいると言います。

震災前から波伝谷を見つめてきた、我妻和樹監督に伺いました。

◆震災から4年を経て
いまは高台の造成も進み、ずっと仮設住宅に住んでいた人々が高台に新居を構え始めている。元の軒数の半分の40戸が波伝谷に家を建てて残っている。それ以外は町の公営住宅に入る人もいれば、外に行って戻れなくなっている人もいる。地域をまとめていた「契約講」の存在意義が問われて、波伝谷の新しい高台造成地に家が建ったとして、波伝谷に残る人たちがどういう風にまとまっていけばいいのかを、今の契約講の役員さん、若い年代の人たちが本格的に考えなければいけない状況に来ている。獅子舞は、なんとなく震災前の雰囲気に戻ってきた感じがする。震災の翌々日が獅子舞の日だった。それが震災でできなくなってしまったが、2012年に復活させる時にやっぱり震災1年という時期は複雑で、人間関係も地域も揺れ動いていた。その中で獅子舞を復活させた。波伝谷から避難して戻ってこられないおじいさん・おばあさんも復活に願いを込め、波伝谷との距離を再確認した。よりどころだった。いろんな思いがあって復活した獅子舞が、だんだんと明るい雰囲気が戻ってきている。その日に向けて外に出た若いお兄ちゃんもみんな戻ってきて笛を吹いたりする。そういうのを見ると波伝谷ってすごいなと思いますね。


高映画『波伝谷に生きる人びと』は、震災前の波伝谷を中心に構成していますが、我妻さんは、これから先の波伝谷も、見つめていきたいと考えています。

◆特別な人たち
感謝というか、他人とは全然思えない。不思議な存在。すごく身近だけどどこか遠い。例えば、自分の周りから大事な人たちがみんないなくなっちゃったとしても、自分には波伝谷があるという部分は僕の中である。特別な人たち。


★ ★ ★ ★ ★

LOVE&HOPEではこの『波伝谷に生きる人びと』の試写会を実施します。
震災前の宮城県沿岸部の小さな集落にはどんな営みがあり、人々はどんな想いで集落を守っているのか、貴重な映像とともに描かれた作品です。

●日時:7月26日(日) 12時30分開場・13時スタート
●場所:東京 東中野「ポレポレ坐」 http://za.polepoletimes.jp/
●ご招待:15組30名様
●上映前に我妻監督・高橋万里恵によるトークセッションもあります

●映画サイト http://hadenyaniikiru.wix.com/peacetree
希望される方はこのブログのメッセージフォームに、「試写会希望」と書いてご応募ください。
当選者にはメールでお知らせします。
※締め切り:7月19日(日)。

2015年7月16日

7月16日 映画『波伝谷に生きる人びと』 我妻和樹監督(2)

きのうに引き続き、8月1日から東京・ポレポレ東中野で公開、この番組でも試写会を行う 映画『波伝谷に生きる人びと』の監督インタビューです。


(※試写会の応募方法は、ページいちばん下にあります)

宮城県南三陸町の小さな集落・波伝谷。我妻和樹監督は学生時代、民俗学の研究でこの土地を調査しており、そこで出会った古くからの「獅子舞」をはじめ、人々の日常を見つめる中で、映画制作に思い至ったと話します。

◆変わりゆく集落を見つめることで
始まりは民俗調査だったが、映画を作るうえで心がけたのは、そこに生きている人たちの生の魅力を伝えたいということ。時代の流れの中でだんだん変わっていく部分がある。例えば獅子舞の行事は元々、波伝谷で80戸あるうちの半数以上の旧家層にあたる土地に昔から住んでいた人々による「契約講」というのがある。これは宮城の農山漁村では集落ごとにある自治組織。集落の物事を取り決めて祭を執り行い運営する。山や土地の資源を管理分配する。ただ、契約講で手に手を取って協力することも少なくなってきた。若い世代が減る中で獅子舞の行事も契約講を中心には維持できなくなった。そんな中で新しくできた家(契約講に属さない世帯)にも協力をお願いしてみんなでやるようになった。変えていかなくちゃいけない部分がたくさん出てきて、その中で葛藤する地域の方々の姿が見えてくる。それって日本のどこにでもある姿だと思う。波伝谷を深く見つめることで、人々の生き方やコミュニティの在り方、普遍的なテーマ、自分たちが生きている世界を足元からちゃんと見つめなおすことができるんじゃないかという。


「契約講」は、雑な言い方をすれば町内会のような組織。コミュニティを維持するうえで、大きな役割を果たしてきたのだそうです。我妻監督はこの、「契約講」の変化を大きなキーワードに据えて、震災前“そこにあった波伝谷の人々の営み”を記録。震災後も、波伝谷の人びとに寄り添い続けました。

◆生きている限り営みは続く
震災が起きても僕自身がやりたかったことは変わっていない。元々の地域というものと共にに生きる地方の生活者の姿を描きたい。ただ現地が被災して映画がそっちに向かっていくという構成にはなった。震災を経て自分自身が取り続けてきた震災前の映像に、どういう意味があるのかを考えた。たまたま波伝谷という字が「波を伝える谷」という字を書くので、その波伝谷を通してかつての東日本沿岸部の人の営みをちゃんと丁寧に描きたいということはすごく考えた。大きな災害を受けても人が生きている限り営みはこれからも続いていくということ、もっと根底にある部分を観に来てくれる人に感じてもらえるかというのを意識して映画を作った。


我妻監督が被災したのは、まさに映画の完成試写会の打ち合わせで波伝谷へ向かう途中だったと言います。その後も波伝谷へ通い、あしかけ6年かけて映画は完成。一昨年・昨年と各地のドキュメンタリー映画祭にも出品し、去年は「ぴあフィルムフェスティバル」の日本映画ペンクラブ賞も受賞しています。

★ ★ ★ ★ ★

LOVE&HOPEではこの『波伝谷に生きる人びと』の試写会を実施します。
震災前の宮城県沿岸部の小さな集落にはどんな営みがあり、人々はどんな想いで集落を守っているのか、貴重な映像とともに描かれた作品です。

●日時:7月26日(日) 12時30分開場・13時スタート
●場所:東京 東中野「ポレポレ坐」 http://za.polepoletimes.jp/
●ご招待:15組30名様
●上映前に我妻監督・高橋万里恵によるトークセッションもあります

●映画サイト http://hadenyaniikiru.wix.com/peacetree
希望される方はこのブログのメッセージフォームに、「試写会希望」と書いてご応募ください。
当選者にはメールでお知らせします。締め切りは7月19日(日)。

明日も、『波伝谷に生きる人びと』 我妻監督のインタビューをお届けします。
«前の記事へ || 1 | 2 | 3 |...| 578 | 579 | 580 |...| 1066 | 1067 | 1068 || 次の記事へ»

パーソナリティ 鈴村健一

メッセージ、ご意見、プレゼントご応募はこちら

特別番組 LOVE & HOPE ~10年目の春だより

TOKYO FM 特別番組 HANABI

「LOVE&HOPE~防災ハンドブック2015」PDF版ダウンロード配信中

アーカイブ

  • いのちの森
  • Support Our Kid's
  • TOKYO FM
  • JFN