2015年10月7日

10月6日 いわき海洋調べ隊・うみラボ(2)

今日も、福島県いわき市在住、小松理虔さんのインタビューです。
原発事故の影響で、いまも操業自粛を余儀なくされている、福島沿岸の漁業。小松さんはそんな福島近海の魚を、自分達の手で釣って、調査する民間の取り組み、「いわき海洋調べ隊・うみラボ」の中心人物です。
プロジェクトには放射線測定の専門家も加わっていて、釣り上げた魚は後日、放射線量を測定。結果をブログで公表しています。

普段はウェブマガジンの編集などを通して、地元いわき市小名浜の情報発信を行っている小松さん。地域のPRを考えるとき、「風化」と「風評被害」という言葉が常に付きまといます。


風化という言葉は僕たちには存在しない言葉だと思っている。いつ魚屋にいっても福島の魚があるが、並んでいる魚があれば、並んでいない魚もある。そこに思いをはせる。たまに県外の方に話を聞くと、福島の震災のニュースは最近全然やらないし、たまに福島のニュースを見ると原発のニュースばかりで、なにが起きているのかがわからないんだよねと聞かされることが多い。一番の風化に対する抵抗というのは、震災のニュースをおどろおどろしく伝えることではなく、僕たちの日常だったり、僕たちが普段食べている美味しいものだったり、一見震災とは関係ないんだけども、そういう情報を発信していくことが重要なんじゃないかと思う。
僕は風評被害という言葉は嫌いで、売れているところは売れている。風評被害っていう言葉を使ってしまうと、すべての問題点を原発事故のせいにしてしまいがち。僕がいわき市のかまぼこメーカーに勤めていたころは、風評被害を問う以前に、パッケージデザインは消費者の手に取ってもらえるものだったのか、流通の状況とかお店に並べられている陳列の仕方とか、もっともっと改善すべきところがあるんじゃないかと(苦心した)。そういうものを解決しようと動いているときは、風評被害という言葉はできるだけ頭の中に入れないように動いていた。目立たないものを、それでも忘れられないように売っていかなくちゃいかないので、頑張って情報発信をして、いい商品をつくっていく、これしかないと思う。


小松さんが関わるプロジェクトは「うみラボ」だけではありません。
●地元、いわき市小名浜の魅力を詰め込んだウェブマガジン「tetoteonahama(てとて、おなはま)」
●地元の発酵食品にスポットを当てたブックレット「IWAKI HAKKOU TRIP」
●地元の商店街を舞台にしたちいさなアートフェス「小名浜本町通り芸術祭」など
その活動は多岐にわたります。

◆2万人の犠牲者が望んでいること
結局誰のために未来をつくるかといえば、自分のため。震災があって、社会のためとか地域のため復興のためとか、ちょっと大上段に構える言葉がでてきたが、僕は実はそれがすごく窮屈。
今回の震災で2万人近くの方が命を落とされていて、その2万人の方がそれぞれ、夢や希望やこんなふうに人生を歩みたいという気持ちをかなえられずに逝ってしまって。きっと天国から、いま生き残った東北の人間は、ちゃんと人生を全うするかどうか見ているんじゃないかといつも思っている。なので、とにかく自分のやりたいこと、自分がこういう地域になったらいいな、こういうふうに暮らしをしたいなということを全力で取り組んで、後悔のないように生きていくことが、勝ってな言い方かもしれないけど、(亡くなった方たちへの)なによりの供養になるというか。たぶんみなさんすごく悔しかったと思う。なので僕たちは自分の夢や希望をちゃんと叶える人生を歩んでいかなくちゃいけない。そうしないといけないと僕は思っている。


※福島沿岸の海で実際に魚をつる「うみラボ」。次回は10/17(土)に開催。
※また「うみラボ」とアクアマリンふくしまとの、共同企画「調べラボ(たべらぼ)」も始まりました。福島近海の魚の放射性物質をオープンな形で計測して、魚について学べるイベント。さらに試験操業の魚をおいしく頂くこともできます。「アクアマリンふくしま」にて開催。次回は10/25(日)。

2015年10月5日

10月5日 いわき海洋調べ隊・うみラボ(1)

今日は、福島の海を見守る取り組みをご紹介します。

東日本大震災後の原発事故の影響で、福島沿岸の漁業はいまも操業自粛を余儀なくされています。現在は、モニタリング調査で安全が確認された魚について試験操業を行っていますが、対称になっている魚は、わずか64種類。そんな中、福島近海の魚を自分たちの手で釣りあげて、自分たちで調べる民間の取り組みが、「いわき海洋調べ隊・うみラボ」です。

活動の中心になっているのは、福島県いわき市在住の小松理虔さん。2013年にこの活動をスタートしました。東北有数の水揚げ港として知られた、いわき市小名浜の出身です。

◆福島の海を自分たちで調べる
当時いろんな数字が出てきた。ベクレルとかシーベルトとか。でも、その数字がどういう意味を持っているかがわからなかった。だったら自分たちで調べられるところまでは自分たちで調べてみようよ、という単純な動機で始まった。船主の方が協力してくださって、近づくことできるギリギリのところ原発の1.5キロ沖まで行って、そこで海水と海底の土を採取。さらにその海域で魚を採取して、放射性物質を測っている。僕がそこで感じたのは、ずっとイメージをアップデートできなくて、福島はきっとこうだとか、原発はこうに違いないと、情報が震災直後のまま止まっている人が少なくないんだろうなと思うが、現場に行くと、空間線量も低いし、(原発内の)工事も粛々と行われていて、海から見ると、なにごともなかったかのように見える。現場の状況をどんどんアップデートしていくことが、しっかりと数値を見極めていく上での判断材料になる。さらにすごく大事なのは、やっぱり釣りって身体を動かして魚の重みとか、身体感覚によって体験していくと、いままで平面的だった数値が、どんどん立体的に見えてくる。例えば沖合の海底にいる魚と近海の海底にいる魚では線量が違うし、魚の寿命や成長速度によっても違う。今日現在64種類しか流通していないが、海の資源もだいぶ回復してきていて、(放射線量が)計測下限値以下になる魚はたくさんいる。
福島の漁業の問題って、例えば汚染水が出ました、漁業者が東電と交渉しましたというニュースを見ると、別に漁業の問題だから僕たちには関係ないやと思ってしまいがちだけど、いまヒラメとかスズキとかアイナメって震災前は高級でおいしい魚だった。その地元の魚が食べられないというのは、僕が本来持っていた豊かな食文化が傷つけられたということ。漁業者の問題ではなく、僕自身の問題なんだと。あの事故によって、本来持っていたものが傷つけられたんだと考えるようになったら、他人事でないし、自分事のように考えないといけないなと。僕は(福島のおいしい魚が)また食べられるようになってほしいので、一人の消費者として関わっていかなきゃいけないんだろうなと考えて、ずっと活動している。


小松さん。普段はウェブマガジンの編集などを通して、地元いわき市小名浜の情報発信を行う一方、
街おこしイベントの企画などにも携わっています。
また「うみラボ」には、放射性測定の専門家も参加していて、釣り上げた魚を後日測定し、その結果をブログで発表しています。

次回の「うみラボ」は2015年10月17日(土)開催予定。
参加希望の方は小松さんに直接お問い合わせください。
小松さん携帯 090-4887-1119


いわき海洋調べ隊「うみラボ」

ウェブマガジン「tetoteonahama」


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パーソナリティ 鈴村健一

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